「シズちゃん…目が血走って、るよ?」 「まだしゃべる余裕があったのか。いいぜ、望み通りぶちこんでやるよ」 まるで悪役のセリフだった。これまで何度か抱かれてきたけれど、こんなに切羽つまったような表情をしているシズちゃんははじめて見た。 むしろこれが本性なのかもしれない。これまではずっと隠してきたのかもしれないけど、遂にそれを表に出したという感じだろうか。 仕事柄自分のことを隠すのに関しては俺のほうが数倍も上だと思っていたけれど、まんまと出し抜かれたようだ。 顔の上に跨っていた体が下に移動していき、ものすごい力で両足を固定されて中心の入り口付近に熱いものがあてがわれた。 俺がしゃぶっていた涎でぬるぬるにはなっていたが、指で慣らしもしないでいきなりなんて恐怖でしかなかった。 さっきの直後ならともかく、それなりに時間が経っているのでそう簡単にいくはずないのだ。だけどきっと抗議の声は届かない。 こんな状態の獣の機嫌を損ねることになれば、どうなるかはなんとなく予測できた。 そろそろ入れられる頃だったので、衝撃に耐えようとぎゅっと目を閉じて構えた。 「…っ、は……うあぁ……!!」 しかし先端がわずかに入ってきた直後、ほぼ引っかかりなどなく実にスムーズに硬さを伴った塊が侵入してきて驚きに呆然としていた。 どうしてなのかわからなかったから、ただ握りしめた拳の力を強めて手のひらに爪の先がわざと食いこむぐらいにして同様を悟られないように抑えた。 口から漏れた艶っぽい声だけはこらえきれなかったけれど。 「やっぱりお前も充分興奮してるじゃねえか。これまでにないぐらい締めつけてヒクヒクさせてんの、わかるよな?」 しまったと思った。気持ちなんていくらでも誤魔化せるけれど、体はそうもいかないようだった。 自分でも気づきたくない部分をわざわざ口にされて、情けなくてしょうがなかった。こんなのは俺らしくもない。 「ぅ……ッ、あ、は……」 追い討ちをかけるかのようにシズちゃんのものが奥に向かって侵入してきて、それが進む度に腰のあたりが震えてしまっていた。 手首が拘束されているから余計にその反応を抑える術はなく、自らどんどん深みにはまっているかのように思えた。 そしてやがて体の内側にこれまで感じたことの無い疼きがわきあがってきた。 「あ?くっ、ぅ……や…ッ…!?」 目の端に溜まっていた涙が、ぼろぼろとこぼれて頬を伝い流れていっったが、なにが起こっているのかわからなかった。 やがて完全に最奥まで滾った塊が到達した時には、頭にもやがかかったかのようになり憔悴しきっていた。 「本気の俺を全部受け入れるなんて、やっぱりてめぇはすげえな。感動したよ」 シズちゃんからこんなに直接的に褒められるなんて、ありえなかった。しかも素直に喜べることではない。 けれどここまでの事で壊れかけていた頭は、すんなりとその言葉を好意として受け取った。 「そ、う…かな…?」 普段罵られることしかない相手から賞賛の言葉を送られて、嬉しさで胸が熱くなってしまった。口の端に笑みさえ浮かんでいる。 「無理かもしれないと思ったが、これならもう大丈夫だな。お前は最高の相手だ」 「シズ…ちゃん?」 言い終わるとそれまで鋭く睨みつけていた視線がふっと緩み、あろうことかとても綺麗に微笑んでいたのだ。あの、シズちゃんが。 信じられない光景だった。まるで夢だ。夢としか思えない。 しかも誰でもない、一番の天敵である俺に向かって笑っているなんて―― 「ふ、あッ、あ、ぁ……ッ…!」 けれど次の瞬間には律動が開始され、表情が見えなくなってしまった。 悲しんでいる暇もなく次から次へと刺激が与えられ、完全に理性が飛びはじめていた。 もう声を堪えることも、気持ちを押し隠すこともできなくなった。ただ貫かれるままに喘ぐだけだ。 「…臨也……」 「ッ、うぅぅ!?」 てめぇ、とかお前、ではなく急に名前を呼ばれて息を飲んだ。低い声が腰に響いてきて、思わず足が跳ね上がった。 「愛してる」 「ひ、あぁ、ッ…うぅ、ん、んッ……!!」 気がついた時には生あたたかい汁液が、お腹の上に盛大に飛び散っていた。 text top |