「やらぁ…っ、なに、これ……?」 「もしかして人間にはかなり強かったかな。臨也くん大丈夫?」 「息がっ…は、はぁ、あ、苦しいっ、ぅ…サ、イケ…」 あまりの急激に訪れる衝撃に、まともに息をすることもできなくて目の前に居るサイケに必死に腕を伸ばしてしがみついた。 額に汗が浮いていておかしいことは一目瞭然だったのに、相手はまるで母親が見守るような優しい瞳を向けたまま微動だにしなかった。なんで、どうしてという言葉は唇からは出ない。 ただ混乱しながら自分の体に起こったことを確かめようとして、けれどもそれより先に手が伸びてきた。 「でもちゃんと、ここ勃起してるよね?ほら硬くなってる。さわっただけでも、イっちゃいそうだね」 「待って…っ!さわる、な…さわら、ないで……うぅ」 ズボン越しにそこを指差されて、羞恥心で頬が紅くサッと染まった。サイケが言うように、そのままさわられたら出してしまいそうなぐらい昂ぶっていたので、慌てて静止の声をあげた。 するとその手がするりと俺のズボンのベルトに掛けられたので、驚いて腰がビクンと跳ねた。けれどもすぐに、大丈夫だと優しく諭されてしまってそれ以上抵抗ができなくなった。 体から力を抜きながら、されるがままに膝下まで下ろされてそれから下着までも強引にずり下げてきた。途端に中身が飛び出してきて、短い悲鳴があがった。 「……んっ!」 「声抑えちゃだめだよ。恥ずかしいかもしれないけど、サイケにかわいい声を聞かせてよ。そうしたら褒めてあげるから」 言いながら露わにされたペニスを鷲掴みにしようとしてきたので、急いで体を引いて逃れようとした。ほとんど反射的な行動だったが、すぐに逃げないでと声が掛けられて一歩も動けなくなってしまう。 どうしてかわからないが、サイケが命令すれば俺は逆らえなくなるんだと気がついた時にはもう伸びてきた指に俺自身が絡め取られるところだった。 「やめっ…!?あ、ふ、あ、ああああっ…あ、そんな、っ、はぁ、あ、うぅ……なん、で……?」 「ダメだよ。サイケが言う前にイっちゃって。もう臨也くんったら淫乱なんだから」 「はぁ、はっ……え…俺が……淫乱?え?」 気がついた時には、昂ぶっていた欲望をサイケの手の中に吐き出していて甲高い声もあげていた。あまりにも早すぎる射精に驚きを隠せないまま、呆然としているとまた命令される。 俺が淫乱だ、という到底受け入れがたい言葉だったのに、頭の中に響き渡って一瞬後には戸惑っていたことさえ忘れた。 まるで脳内のコンピュータにあらかじめインプットされていた言葉のように、何の疑問も躊躇いも考えることなく瞬時に悟っていた。アンドロイドではない筈なのに、まるでそれと同じようなものだった。 「思い出した?臨也くんっがすごく淫乱でエッチが大好きな子だってこと」 「うん……思い出した、よ。そういえば俺、すごくエッチが好きだった、よね?だからこんなにも、体が疼いてる、んだ……」 「わかってくれてよかったよ。で…どうして欲しい?」 「俺のこと、気持ちよく、してよ…サイケいつもみたいに」 何の感情も浮かんでいなかったのに、まるでお決まりの一言みたいにスラスラと唇から飛び出してきて自分自身も驚いた。でもサイケとは恋人同士なのだから、おかしい話ではなかった。 いつも、いつだってこうやって甘い声で名前を呼んで、しようよとねだっていたことだけは覚えている。そうして伸ばされてきた手をしっかり取って、でも相手の顔まではなぜか思い出せなかった。 けれどもまさに同じような姿勢で俺と同じ手が目の前に出されたので、躊躇わずに手を乗せた。するとそのままソファーの上に押し倒された。 「ズボンと下着なんて、臨也くんにはいらないよね?無い方がかわいいよ」 「そうかな?サイケが言うなら、脱ぐよ」 言いながら勝手に手が足に引っ掛かっているだけのズボンに伸びて、乱雑に脱ぎ取ると床の上に下着と共に投げ捨てた。するとシャツ一枚になった俺に、サイケが背中からふわりと何かをかけてきた。 それは、俺がいつも来ている黒色のファーコートでどうしたのだろうかと首を傾げながら見あげた。すると寒いから、と気遣われる言葉をかけられたのでゆっくりと袖を通した。 確かに少し肌寒かったのだが、コートを着た途端にあたたかさに包まれて気にならなくなった。しかしすぐさまビリッという布が破れる音が響いてきて、何事かと目を見張った。 汚れているだろうからシャツもいらない、と言われながら簡単に剥ぎ取られていって結局身に着けているのはコートだけになったが何の不便もなかった。 むしろその汚れた布切れで腹の辺りもぬぐってくれて、不快感がなくなったことにお礼を言った。その際に再び下半身をチラリとみると、まだそこは硬くなっていた。 「さてと、先にイっちゃった臨也くんにはお仕置きしないとね?」 「えっ?お、しおき?そんなの…嫌だよ」 「やだなあ、嫌だ嫌だって言いながら本当はお仕置きされるのが大好きなんだよね?ふふっ、じゃあコードで縛ってあげるから」 それは驚きのあまり瞬きを繰り返した数秒のできごとだった。どこからともなく現れた細いコードが、空中をものすごい早さで駆け抜けて行って体の周りを走ったと思った次の瞬間にはそれで縛られていた。 幾本ものピンク色のコードがくるくると全身を包んで、すぐに全く動けなくなってしまう。一本一本は細くて頼りないはずなのに、束ねられるように縛らている為にキツく満足に身動きが取れない。 しかもそれらは足にも絡みついてきて、まるで生き物のように体の上を進みながらぎっちりと縛ってきた。そうしてさせられた格好に、慌てて抵抗した。 「ちょ、っと待ってよ…っ、こんな恰好恥ずかしいっ…!」 「だからお仕置きだって言ってるじゃない。臨也くんが悪いんだよ?だから次は、先にイっちゃだめだよ」 このままサイケにセックスをして貰えると思っていたのにいきなりお仕置きだと言われて、混乱しないわけがなかった。 必死に抗議をしたのだが、俺の前でくるくると指を回すとそれを辿るようにコードが舞い、そうしてそのまままだ勃っているそこへと指がふれた。だから否応なしに性器にコードが絡みついたのだ。 「あ…っ、まさか…うぅ、く、あ…」 「そうだよ、これからサイケにはお仕事があるんだ。だからそれが終わるまで我慢しててね。退屈しないようにこれで遊んでていいから」 苦痛に顔を歪めながら息を整えていると、さっきまでよりも太い色とりどりのコードが現れてその先端が足元から近づいてきていた。さっきの言い方からすれば、狙ってる場所はわかっていた。 両足を左右に開かされた中心にある後孔の周辺に辿り着いて、その周りを這うようにしながらコードの体を擦りつけてきた。しかしなぜかそれはぬめっていて、その冷たさに悲鳴をあげた。 「ひっ、あ!な、なんでこれ…っていうか、いいからサイケもうやめて……」 「焦ってる臨也くんは一段とかわいらしいね。でもダメだよ?サイケに逆らったら、ダメなんだから」 「え……っ!?」 またキィンと耳鳴りが鳴って、サイケのマスターは俺なのに、命令する筈なのは俺なのにどうして逆らったらダメなんだろうという疑問が掻き消えた。サイケに逆らってはいけないという言葉だけが残った。 「今度から臨也くんのマスターで恋人は俺だから。ちゃんと好きな人の言う事を聞いてね?わかった?」 「マ、スター……?好き、好き、サイケ好き……」 ぶつぶつと言葉を繰り返しているうちに、絡みついていたコードの粘液でそこは濡れそぼっていて、繊細な動きが触手のようなものを連想させた。でも不思議と気持ち悪いという思いは沸かなかった。 そうしてコードが入口周辺に集まって、息を飲んでいると遂に何本かが水音をぐちゅりと立てながらゆっくりと入りこんできたのだ。あまりにも自然で、すぐには声があげられなかった。 「あ……っ、あぁ、ん!あ、あつい…からだ、あつい…っ、はぁあん、ぅう!」 「いっぱい入るね!ほらもう五本も入ってるよ」 「あ、ああっ、ひっぱらない、でっ…こすれ、て、っあ、うぅ……!」 「そっか俺が引っ張らなくても勝手に動いてくれるもんね、忘れてたよ。じゃあもう少しだけ待っててね」 いつもの無邪気な口調でそう言うと、ソファから下りてスタスタと歩いて数メートル先にある俺の机の上にサイケが腰を下ろした。そうしてパソコン画面を見ながら、何か操作を始めた。 確かにそれは、いつも優秀な彼に頼む作業と動きは全く変わらなかった。だから余計にもどかしくて身を捩らせて叫んだが、室内に虚しく響くだけだった。 「はあっ、あ、サイケっ…仕事なんていいからっ、ねえ、これなんとかしてよ…っ、うぅ、くるしい、イきたいよぉ…サイケぇ……」 体の中で蠢くコードに即座に反応を示して中を締めつけてしまうことが嫌だったが、何一つ俺の言う事は聞きそうになくて、途中から諦めて喘ぎ声だけをこぼし続けた。 text top |