どうか 振り向かないでね 6 | ナノ

「俺なんかに遠慮するなんてらしくねぇだろ。それにもうお前だけの体じゃないんだぞ」
「ちょ、ちょっと待ってよ!その言葉使い方間違ってない?っていうか無理なの、それぐらい察してよ!」

見当違いなことを言いながらどんどんシズちゃんが近づいてくる。手をついてジリジリと後ろに後退しようとしたのだが、その手を掴まれて膝の上に強引に置かれた。

「ったくしょうがねぇ奴だな。とにかく大人しくしてろよ」
「え、ええぇッ!?や、やだよ…足開かないでよッ…うわぁッ…!」

必死に閉じていた両足をものすごい力でがばっと開脚させられて、さすがに折れてはいないが骨が軋むような音がした。
困惑している隙に股の間にもぐりこみ上半身を屈めて、いきなり汚れてる俺の後ろに手を伸ばしてきた。
慌てて腰を引こうとしたが、もう一方の手でがっちりと掴まれていてできなかった。相変わらずの怪力が本当にはがゆかった。

「やだッ、ほんとにやめて……っうぅ……」

ほんの少し入り口の下を手で押しただけだった。たったそれだけのことなのに、ものすごい勢いでドロッとしたものがあふれ出して肌を伝い床にこぼれた。
ここに来るまでに移動している途中でもかなりの量が、全身が揺れるたびに股を伝い雫を落としていたのだ。
お腹の中に残っている異物感は全部精液なのだ。これだけでもうどんなに悲惨な状態だったか、否応なしに思い知らされていた。
悔しさに唇を噛んで俯いた。きっとシズちゃんも想像以上の惨状に引いているだろうなと思った。だから嫌だったのに。

「……声出していいからな」
「なに…ッ、ぅ……ん、く……ッ…!!」

聞こえるか聞こえないかの小さい声で呟いた後、おもむろに指を一本中に侵入させてきた。あまりに急なことで驚いたが、慌てて両手で口元を押さえて堪えた。
液体が体の中から出ていく嫌な感触と、指が中をかき混ぜる感触にすぐに頭が真っ白になった。

「は……ひッ……ぅ、ん……」
(だめだ…ちょっと中いじられてるだけなのに、気持ちいい…すぐイッちゃいそう…)

行為の記憶は全く覚えてはいないが、指を入れられた瞬間にフラッシュバックするようになにかの記憶の断片が思い出された。
あえぐ声と、肌と肌がぶつかり合う音と、ぐちゃぐちゃとなにかが混ざり合う水音と、誰かの笑い声だ。
忘れたいほどに嫌な記憶のはずなのに、下半身はしっかりと反応してそこが勃ちあがっていた。
ただかき出すだけの指の蠢きにしっかりと快楽を感じていた。刻まれた傷はしっかりと体に染みついて残っていたのだ。

「ん、んぅ……は、あぁ……ッ……」

もし口を押さえていなければ、はしたない声をあげて頭を振り乱し悶えていただろう。そうしたい衝動を堪えていられる今の状況が奇跡的に思えた。
シズちゃんにはそんな自分を見せたくないという強い意志に突き動かされていただけなのだが。

「あぁッ……か、はッ……うぅ、んうぅ……」

すっかり焦点の合わなくなった瞳で宙を眺めながら快感に酔いしれていると、指が一本増やされたようだった。
それまでなんとか耐えていた腰がびくりと跳ねて、全身の震えがとまらなくなってしまう。一度火がついた熱はもうどうやっても殺すことはできなかった。

「もぉ、や…あぁッ…は、イぃ…ん、ぅ…」

口を塞いでいた両手が離れると同時に、やけに甘ったるい声が吐き出された。それが本当に自分のものだと疑いたくなるぐらい高くて掠れたような音色だった。
そして瞳から涙がぶわっと溢れて、あたたかい水が頬を伝って床に流れ落ちた。
二本の指が中をかき回し汚れた液体がどんどんふきだすのを放心した瞳でみつめながら、足をぶるぶると震わした。
もう目の前に誰がいるのかも忘れて、限界に向かってよがり狂った。

「あ、あぁ、ッ、もぉ…イくうぅぅは、やああぁぁッ…ぅあぁ…!!」

両手を後ろについて腰を前に突き出して叫び声をあげながら、頂点に達した。はりつめた先端から白い液体が吐き出されたが、ほんの数滴だった。
すぐに気だるい脱力感が全身を襲い視界がぐらりと揺れかけたところで肩を掴まれて引き戻された。

「は、はぁ…はっ……ぁ……シ、ズちゃん……?」

我に返ったときには既に遅く醜態をすべて晒した後だった。慌てて目線を逸らして俯いたが、一瞬覗いた瞳は怒っているように見えた。
きっと幻滅してしまったに違いないと思い、なにも言葉をかけられなかった。
床にはかきだされた白い精液が水溜りを作っていて、どれだけ出されていたのかを明確に語っているようだった。
そして途中から口をついて出た言葉自体は覚えていないが、きっと陵辱される最中に何度も強要されて理性が飛ぶのと同時に自然と思い出したのだと感じた。
自ら気持ちいいと告げるなんて、まるで女のようだと暗くなる気分で舌打ちした。
荒れた息を整えながらどうしたものかと迷っていると、驚きの言葉をかけられた。

「悪い…今ので欲情しちまった…」
「え……?」

そう告げられてシズちゃんの下半身を横目で見ると、さっき見たのよりも更に膨らんで血管が浮き出ているようだった。

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