「さてと、どうするかな…とりあえず一発ぶちこんでやるか?」 「ふざけるな!そんなことして後でどうなるか、わかって…っ、やめろ!汚い手で触るな!やめろ、やめろっ!」 どうやら紐か縄のようなものできつく縛られているらしく、満足に体を動かすことさえできなかった。しょうがないので唯一自由が効く足を振り回して蹴りつけてやったが、あっさりと躱された。 そのことに驚いていると、相手はおもむろに俺のポケットに手を入れてきてそこからナイフを取り出して刃を取り出し見せつけてきた。どうせ見掛けだけだと思っていたが、それを振り下ろした。 とりあえず暴れるのは止めて見守っていると、布を裂く音がビリビリと聞こえてきてあっという間にズボンと下着が破り取られたようだった。 ボロボロになった布をパラパラと俺の頭の上に降らせ、そのことに顔を顰めていると足の間にそいつの体が無理矢理滑りこんできた。 そうしてハッとした時には、残ったズボンとシーツを挟むようにナイフが突き立てられて、右足が固定されたことに気がついて慌ててしまった。 反対側の足で蹴りあげようとしたが既に遅く、同じように隠し持っていたナイフを探られてシーツに縫いとめられた。つまり足を左右に開かされた状態で、身動きが完全に取れなくなったのだ。 「人のナイフを使いやがって…くそっ、ジロジロ見るな…っ…!!」 「ははっ、手が震えてるぞ。もしかして平和島以外としたことねえのか?そりゃ怖いだろうな、安心しろよあいつを忘れるぐらい犯してやるからよ」 言いながら男の手が自分のズボンに伸びて、ベルトを簡単に外し下着とずり下げて下半身のモノを見せつけてきた。 冷静に見てもシズちゃんより小さいことに安堵したが、恐怖は止まらなかった。別にこいつに怯えているわけではない。好きな人以外とすることに怯えているのだ。 だってもし犯されたことがバレてしまったら、その瞬間に確実に終わる。ただでさえ喧嘩をしてこじらせているのに、そんなことがわかったら別れることになるのは当然だった。 つきあう前からわかっていたが、人一倍独占欲が強いのだ。二人で居る時に携帯を弄ることさえ許しては貰えなかった。その時は特に思わなかったが、今考えるとぞっとした。 きっともう他人に汚された俺には、興味なんてなくなるだろう。 「やめろって、言ってるだろ!!」 「ほんと平和島には勿体ないぐらい、顔だけはいいよな。でもうるせえんだよ、黙って股開いてろよ、なあわかんだろ?」 「……ッ、汚いものを押しつけるな!そんなものが、入るわけがない!」 突然後孔の入口付近に男の勃起したモノが押し当てられて、その熱さと気持ち悪さに一気に寒気が駆けあがっていった。本当に、するというのだ。 そいつの先端から溢れている先走りの液体がぐちゅっ、と音を立てていたがそれだけではすぐに挿入までできないだろうと考えていた。シズちゃんとしていた時だって、ローションを使っていたのだ。 だからまだ、チャンスはある諦めるなと心を奮い立たせた。しかしそれを崩すように、不機嫌そうな顔をした男がそこから離れて俺の顔の前にそれを突き出してきた。 「おい舐めろ。歯を立てやがったら、そのナイフを腹にぶっ刺してやるからな」 「そんなことするぐらい、なら刺された方がマシ…っ、う、やめろ!そんなもの舐めたりなんか、しない!」 むわっと雄の匂いが広がってきて、それに顔を顰めながら拒絶するように体を捩らせた。けれどもそれにも限界があって、鼻の先に男のペニスが押し当てられた。 唇を引き結びながら絶対に開けてやるものかと睨みつけていると、そいつの手がいきなり俺の頭をすごい力で鷲掴みにした。そうして驚いた一瞬の隙をついて、無理矢理に口内に捻じ込んできたのだ。 「ん、っぐ!?うぅううう……っ、む、ふうぅ…!!」 「やっぱりお前のような偉そうにしてる奴に突っこむのが一番楽しいな。驚きすぎじゃねえか?まさか俺にこんなことされるわけないって思ってたか?そろそろ立場をわきまえろ」 男が怒りを露わにしていたが、俺にはその半分も伝わらなかった。それどころではなく、どうやって口内から吐き出そうかと、ずっとそのことで頭が占められていたのだ。 舌を使って外に押し出そうとするのだが、がっちりと固定されるように頭を掴まれているのだからどうにもできなかった。焦ってる間に喉奥まで突き入れられたモノが、勝手に中で動き始めたのだ。 「ふ、っ、う…ぐ、むぅ、ん……ふぅ、ん、く……うぅ、ぅふ!」 シズちゃんのだって舐めたことはなかったのに、その独特のしょっぱいような味と容赦なく奥まで突いてくる行為に、吐き気を覚えながら耐えるしかなかった。 ガンガンと遠慮なしに中の壁を擦ってきて、口内に唾液がじっとり広がっていってそのうちぐちゃぐちゃと粘着質な水音がし始めた。 きっと濡らすことが目的の筈だったので向こうにとっては都合がよかっただろうが、こっちは最悪だった。目の端に生理的な涙を溜めながら、くぐもった声が時折こぼれた。 気持ちいいとかそれ以前の問題で、ただ早く終わってくれとひたすらに願った。慣れない行為に顎が疲れはじめてきた頃に、乱暴に中から引き抜かれた。 「ぷ、はぁっ、あ、はぁ…くそっ、最低だ…!」 歯を立てるとかそういうことすらも忘れていて、どれだけせっぱつまっていたかよくわかった。 つーっと唇の端から唾液が少しだけ垂れて糸を引いているのを苦々しく見つめながら、乱れた呼吸を整えることに必死だった。だから再び後ろに添えられて、今度こそ息を潜めた。 「おいおいまだこれからだぜ。今から突っ込んで善がらせてやるからよお、平和島とどっちが気持ちいいか教えてくれよそのカメラに」 「え……っ、カメラ…?まさか、これ撮って…?」 「あぁ当然だろ。お前が犯されるところをあいつに見せつけてやらねえと意味がねえからな。おい待ちきれねえのか、ぴくぴくここ震えてんぞ」 「ちが…違うっ!やめろ、もう本当に…っ、やめ、やっ、だめだ、だめ…やめろおおお!!」 急にカメラに撮られてると言われて、愕然とした。確かにそんなことを言ってはいたが、まさか今のこの状況を撮られているとは思わなかったのだ。 頭の中がパニックになって、動揺がすぐに体に現れて密かに震えていた。けれどそれを勘違いされて、男が唾液に濡れたペニスをぐりぐりと後孔に擦りこんできたのだ。 どうあがいても逃れられない現実に耐えられなくて、喚き散らした。恥も外聞も捨てて叫び続けたが、そいつが腰に力を入れた瞬間に何もかもが目の前で崩れた。 「ぐっ…あ、あ、そんな…っ、はいらな、あ、うああああああぁぁッ!!」 「あ、ははははっ!おい平和島見てるか?お前の恋人が俺に抱かれてるんだぜ!興奮するだろ!」 「嫌だ、やだ、いやだぁあ!うぅ、っは…キツ、い…苦しい、痛いっ、うぅ、あ…!」 指で慣らされることもなかったのに、強烈な異物感が体の中にずるりと入りこんできて唇がぶるぶると震えた。頭を滅茶苦茶に振り乱しながら、あらゆる否定の言葉を口にした。 それでも結局どうにもできなくて、遂には瞳からぼろぼろと涙がこぼれてきた。そんなに弱いつもりもなかったが、こうして強姦されて始めて不安と恐怖に心が押しつぶされそうになっていた。 頭の中では自然に大好きな相手を思い浮かべて、その姿が幻の中でゆらゆらと揺れていた。 「嘘つくんじゃねえよ、痛いんじゃねえだろ?気持ちいいんだろ折原さんよ」 「え、っ……?何を、勝手にっ…うあ、あ…言ってる」 「まだ半分も入れてねえのに、嬉しいって締めつけてんじゃねえか。あんた相当エロいのに自覚してなかったのか?一体平和島にどんなプレイを強要させられてたんだよ」 「ん、あ、ああっ!入れる、なあああッ!違う、違う、違うッ!こんなの、気持ちいいはずがない…あ、うぅ、っ…は!」 男の惑わすような言葉に、頭の中が真っ白になって青ざめた。 気持ちいいんだろ、と問われて否定できない自分がいたのだ。図星を突かれたことに、どっと冷や汗が吹き出てその隙にそいつが残りの肉棒を中に突き入れてきた。 がっちりとそれに食いつくのを自分でも感じながら、あえぎ声が虚しく部屋に響き渡った。 何度も何度も何度も、違う違うと壊れた人形のように繰り返して、はっとした時にはそいつが叫ぶ声だけが聞こえて絶望的な気持ちになった。 「淫乱な情報屋さんに、中出ししてやるよ!腹いっぱいでパンパンになるまで、出してやるからな!」 「えっ、あ…やめ、やだ、やああっ、ぁ…ひ、うぁあ、あっ、うぅ…ん、あ、ああああああぁぁ…!!」 もう自分を取り繕うことも、余裕を見せることも出来なくて、悲鳴をあげながら口から出そうになる名前を必死に隠すことしかできなかった。 (シズちゃん、シズちゃん、シズちゃん…好き、好き、大好きシズちゃんじゃないと、シズちゃんがいい、気持ちいいのシズちゃんだけ、こんなの違うシズちゃん、シズちゃん!) 心の中では必死に呼びかけているのに、視界はぼやけて霞んでいた。出し入れされる肉棒に合わせて跳ねる腰がひどく淫猥で、こんなにも快楽に弱いことを始めて知った。 愛している相手意外でも反応する自分が悔しくて、いつまでもいつまでも胸がズキズキと痛んで、頬が乾くことはない。 こんな行為は早く終わって欲しいのに、今の状態ではシズちゃんに絶対に会いたくなくて、ということはずっとこいつに犯されるのかと思うと全身の震えが止まらなかった。 これまで二人で過ごした日々が、走馬灯のように頭の中を駆け抜けて離散していった。もう元に戻ることなんて二度とないんだと、喉の奥から嗚咽を漏らして泣いた。 「いい声で泣いて、そんなに嬉しいか?」 「んあっ、あ…ちが、う…うぅ、ひくっ、あ、うぅ…あ、ん……うぅ」 嗚咽が途中から淫らな喘ぎ声に変わったことに、気がつきたくはなかった。 text top |