「ほ…んとシズちゃんて容赦ないね」 「送ってやったのにその態度はねえだろ臨也?」 池袋から新宿の俺の家まで結構な距離があったのだが、その間中ずっと揺らされ続けて体が疼いてるっていう以前に、正直気分が悪いほうが上だった。 シズちゃんの化け物具合が俺の中で更に跳ねあがった。まさか一度も休まずにここまで走り続けられるとは思わなかったからだ。 とりあえず部屋の前に着いたところでやっと地面に足をつくことができて、ほっとした。普通だったら礼ぐらいしてやりたいところだが、今の状態でそうはいかなかった。 「この仮はいつか返すよ」 「じゃあ風邪が治ったら死んでくれ」 「あははっ、それ矛盾してない?人の事助けておいて死ねってそれはないよねえ。まぁ覚えてたら返すよ、じゃあね」 わざとらしい笑いを浮かべてそれだけ言うと、カードキーを取り出して扉を開けかけて、ふと立ち去ろうとしない相手に怪訝な表情で睨んだ。 「なに?帰らないの?」 「いや…」 煮え切らない返事だったが、ほんとうは家の中に入りたがっていることには気がついていた。けれど決して誘いはしない。 これを逃せば一生シズちゃんを家に入れる機会はないだろうと思ったが、わかっていて知らないふりをした。実際のところ今の状態が異常なのだ。 それにさっきの変な態度のことを尋ねられたら、困るのは俺なのだ。自分から危険を呼ぶようなことをするわけがない。 しかしまだ動こうとしないのに苛立ったのだが、ふといい考えが思い浮かんでニヤリと口の端を歪めた。 強制的に追い払う為のちょっとした悪戯だ。 「ねえ、そんなに俺の前で隙見せてたら奪っちゃうよ?」 「あぁ?…って!?」 それまで完全に動きが鈍っていた体にムチを打って、瞬間的に素早く足を踏み出して両手をシズちゃんの首に回しながら、背伸びをして強引に唇に噛みついてやった。 強く噛んだわけではないので切れてはいないが、舌を口内に割り入らせて唇全体で食べるように吸いついた。時間にしては一秒にも満たなかったが、名残惜しむ間もなく体を引いた。 「な…な、なにしやがった今、手前ッ!!」 怒りに震えながらも俺のことを殴れないシズちゃんの顔が、腹を抱えて笑えるぐらいに真っ赤でおもしろい表情だった。 「じゃあ、まったねー」 「待てッ、いざやああああああああぁぁぁッ!」 飛び掛られる寸前でするりとすり抜けるようにして避けて、扉の中に逃げ込んで迷うことなくバタンと閉めた。防音設備は整っているので、罵倒の声さえ一切聞こえない。 だからこそ言うことができた。 「ありがとう、シズちゃん」 指を唇に這わして、さっきふれあった部分を何度もなぞりながらそのままずるずると玄関の扉にもたれた。緊張の糸が途切れてもう一歩も動けそうになかった。 よくあんなことを思いついたなと自分のことながら自画自賛したいぐらいだった。その反面キスをすることができたのは、シズちゃんにことごとく振られたからだと気がついた。 振られた今となってはただのネタとして軽い気持ちでからかうことができるのだ。まぁキスはやりすぎだったかもしれないが。 告白した俺を振っておきながら本気でそれについて問い詰めてこない、ということはこの件に関してまだ迷ってるというのとどっちでもいいと思っているのだろう。 本気で拒絶したければ、もっと怒ったり引いたりするはずなのだがそれが無いのだからこれぐらいは許せるだろう。 そのうち本気で拒まれるかもしれないが、それまでは嫌がらせのように続けてやろうと思った。告白したせいで酷いことになってるのだから、唇を奪うぐらいなんてことない。 「まぁ本気で拒否されたら、俺はそこで壊れてしまうかもしれないけどね」 熱いため息をつきながらそう感じていた。 「とりあえずこれ…おさめないと」 やっとのことで事務所のソファまでやってくると、ゆっくりと腰を下ろしてズボンのベルトを外しはじめた。面倒だったので足の途中で引っ掛けたまま下着も下ろした。 それでさっきから半勃ち状態のままで我慢していたモノを取り出した。 「足りない…もっと、強いのが…欲しい…っ」 ここまで走って帰ってきたものの、それなりに時間は掛かっていたのでもう限界だった。僅かに唇をわなわなと震わせながら、微弱な振動を与え続けていた玩具に手を伸ばした。 しかし中に入れられているローターを引き抜くのではなく、太股にガムテープで貼り付けてあるリモコンへと手が添えられた。 ゆっくりとそれを引きあげていくと、それに伴って激しい刺激で後孔の中を蠢き強い疼きを与えていった。 「あ…あぁっ、きもちいぃ…あ、はぁ…」 周りに誰も居ないからこそ素直に快楽を口にする事ができた。昨晩のことはもう思い出したくもなかったので、虚空を眺めながらさっきまでのシズちゃんとのやり取りを思い浮かべた。 そして指は無意識に後ろへと伸び、入り口周辺を揉んだりした後精液で濡れる中へと突っこんだ。 もうすっかり前をいじるよりは後ろをいじることの方に慣れていた。オナニーも何度か強要されたのでもう抵抗すらなくなっていた。 それを悲しいと思う間もないぐらい、激しく出し入れを繰り返した。 「あっ、あんっ、はぁっ、あふぅ、んんう、うあっ、あはぁ…」 ぐちゃぐちゃとした粘液が擦れ合う音が聞こえないぐらい大声で、あえぎを吐いた。すぐに中心は硬くなってきて、全身がどこもかしこも熱くなっていく。 絶頂に向けて動きを早めながら、さっき本人の前でも聞こえてきた幻聴がはっきりとまた耳に届いてきた。 『ここが気持ちいいんだろ?ヒクヒク締めつけてくるもんな』 「あ…あぁ」 『たっぷり中に欲しいんだよな、体は正直だし』 「ん、あぁ…はぁ、はっ…シズ、ちゃ…」 自ら腰を振って指を動かしながら、頭の中でおかしいと感じていた。オカズのネタにしたいと望んでいないのに、どうしてか声が響いてくるのだ。 昨日も途中で何本か打たれた薬の副作用なんだと思えば納得できたが、それは精神的にも肉体的にも危険な状態なのを現していた。 text top |