「じゃあお風呂入ろっか?お湯もぬるめだしのぼせる前にしちゃおうよ。あぁ中滑るから気をつけてね」 「って、なんだよこりゃあ」 普通に入ろうとしたところで、中がかなりおかしなことになっているのに気がついて体をぴたりと止めた。一見見間違えそうだが、明らかにお湯ではないなにかが入っていたのだ。 しかし向こうは構わずさっさと入り、早くとせかすように俺の腕を掴んできやがった。 「怖がらなくてもローション風呂だって言ってるだろ?お湯とか全部ぬるぬるなの。入ったらわかるって」 「ちょっと、おい!」 わりと強い力で引っ張られて、右足がそのまま浴槽の中についたと思った瞬間、体が前にぐらりと倒れかけた。 ヤバイと口に出す前にそのまま前のめりになったので、足を打たないように慌てて片足も中に入れて勢いのままに先に入っていた臨也の体に覆いかぶさる格好になった。 途中で足をついてなんとか壁に頭を打つことだけはまぬがれたが、酷い体勢になっていた。 「もういきなりがっつくなんて、そんなに待ちきれなかったの?やだなぁシズちゃんったらぁ?」 わざとらしく甘えるような声を出してクスクスと笑った。こうやって俺が滑ってしまうことですら、奴の計画通りなのだと理解した。 即座に反論しようと口を開きかけたのだが、別のもので塞がれてしまった。 「おい…っ、う!?」 臨也が俺の首にねっとりと手を回して、素早く唇を押し付けてきたのだ。いきなりのことで反応もできずに、ただ滑らないように必死に体を支えることしかできなかった。 その間も向こうは奔放に舌を割り入れてきて、中をぬるぬると蠢きまわった。 「ん…ふぅっ」 たまに鼻から息が抜けるのかやけに濡れたような色っぽい声がすぐ傍から聞こえてきた、その度にドキドキと胸がしめつけられるようだった。 こっちもおずおずと舌だけを動かすと、先っぽがふれあってそのままねっとりと絡んできたので俺からもやり返した。 お湯のあたかさと蒸気で頬が赤くなり、水面がぬるぬるとして……。 「おい!なんでこれぬるぬるしてんだああぁッ!?」 「シズちゃん今更なに言ってるの?あーあ…雰囲気台無しだよ、まったく」 気色悪さに耐え切れなくて強引に腕を振りほどいて浴槽の中で中腰状態のまま、後ろの壁に手をついて一歩引いた。 それでもまだ俺の足が臨也の太股あたりに当たっていて、ふれているぶぶんがやけにぬめってすべすべとしていて驚いていた。 「こういう遊びなの!お湯を一瞬でローションに変える液体なんだ。ちなみにこれ固まったら白い変な塊が浮いちゃって、排水溝につまるんだよ。普通に自宅じゃこんなのできないんだよねえ」 「だからこんなにぬめってるのか、びっくりした……っつーか手前今どこさわってやがんだ?」 「シズちゃんの息子さんに決まってるでしょ?」 悪びれることなくはっきりと言い切った。こっちがうろたえているうちになぜかそこを掴んでいて、あまつさえ上下に扱う素振りさえ見せていた。 「これすごいぬるぬるしてるから手でしごいてもすごい気持ちいいんだよ?まぁ軽く勃起させて後は入れるだけだから、安心していいよ」 「さっきから童貞喪失だとか入れるとか言ってるが、それ本気なのか?」 そこで俺は真剣な表情をして俺の下半身を握っている腕の手首を掴んだ。いくらなんでもそれはやり過ぎのように思えたから、尋ねたのだ。 臨也にとっては当たり前の仕事なのかもしれないが、俺はどうしても腑に落ちなかった。しかも向こうはゴムさえ使う気はないらしくなにも持ちこんではいない。 風俗経験が無い俺でも常識としてソープでもゴムはつけるし、そこ以外では本番はしてはいけないことぐらい知っている。 「なんか勘違いしてない?AFっていうかアナルセックスって普通のお店でもやってるところはできるんだよ?まぁ女の子にとっては前以上に負担で危険な行為なんだけどさ」 「でも生だぞ、このままじゃ…」 「それは俺からシズちゃんへのサービスだよ。生のほうがきもちいいし、ね?」 危険な行為だと言っておきながら、俺には生でしたいと言ってくる心理がよくわからなかった。コイツの考えなんていつもわけがわからないが、なんとなく気になった。 「いや、だから別に俺は生がいいなんて一言も言ってねえし…」 「もう、わかんないの鈍感!俺が生でしたい気分なの!返事は!!」 「わ、かりました……」 ものすごい形相で睨みつけられたまま、下半身を少しばかりぎゅっと握られたのでそのまま頭を振って頷くことしかできなかった。完全に脅しだ。 返事を確認した後、すぐにころっと表情を変えて小悪魔のように微笑んで、空いたほうの手で勃っていたそこの先端をつんっと突かれた。 小悪魔というか元々こいつは極悪人なんだが、いつもよりは可愛げがあるように見えて遂に頭がおかしくなったのかと思った。うざさもなんだか半減している。 お互いが裸だからなのかなんなのか、もはやわからないことばかりだった。ただ変な雰囲気に流されかかっているのだけは、確信できた。 「じゃあそろそろ入れよっか?さすがにはじめてじゃ無理だろうから、俺が上に乗ってあげるよ。ついでにこうやってちょっと愛撫してあげる」 突くのをやめた手が下の玉袋まで伸びてきて、湯の中で揉むようにしながら転がしてきた。自分でもそんなところをさわったことがない。 微妙なくすぐったさに口元が緩みかかって、慌てて引き締めた。 「それくすぐってえんだよ。いいから手前はどうなんだ?」 「え……?うわあ…っ、う?」 向こうのペースで弄ばれるのがそろそろ嫌になってきたこともあって、強引に臨也の肩を浴槽の淵に押し付けて、そのまま首筋をゆっくりと指でなぞってやった。 すると一瞬だけあえぎのような声が漏れて、俺の手の動きがぴたりと止まった。 「な、なに?ちょっとくすぐったいからびっくりしただけ…」 「俺にはあんだけさわってたのにか?こっちばっかりしてもらうのも悪いから、俺もさわってやろうかなぁ臨也くんよお?」 ニヤリと口の端を歪めて睨みつけると、臨也の顔が強張ったのでそういうことかと納得した。 text top |