「ふふっ、お腹の中……精液いっぱい、入ってるよぉ?昨日してないから溜まってた?まぁいいや、早くこれなんとかしてよ」 すぐに入れて欲しいとせがまれたが、まだ出した直後なのでいくらなんでも無理だった。しかたなく抱えてた体を床に降ろし、ゆっくりと引き抜くとおびただしい量が奔流してそこから溢れ出した。 濃厚な粘液が吹き出すようにドロドロと流れていきかなりそそられる光景だった。それを眺めながらとりあえず汚れたバーテン服を脱ぎ、ズボンと下着も取るとシャツ一枚になった。 「んもぉ、なんで抜いちゃうの?中身こぼれちゃってもったいないよ」 「うるせぇ。こっちは薬なんか使ってねぇんだからすぐ戻るわけないだろ。そんなにすぐしたいなら手前が大きくしろよ」 縛られた手を頭の上でぶらぶらさせながら口を尖らせて文句を言ってきたので、白濁液で汚れている半勃ちのものを奉仕しろといわんばかりに眼前に突き出した。 「はいはい、んむうぅ……くぅ、うぅ、んんっ……」 するとついさっき出したばかりでまだ残滓が残っているペニスが、吸いこまれるように臨也の口の中に入っていった。躊躇も無く残液を舌で舐め取り味わうように飲みこんでいった。 そういえばこっちが責めっぱなしでこうしてしてもらうのは久しぶりのように思う。がっつきたい気持ちもわかるが、こうやって焦らすのもちょうどいいかもしれない。 「ふうぅ、ん、う…ふむっ、うぅ……んぅ…」 顔の上に跨るような格好で中腰になっていたが、こっちは一切動かなかった。向こうは拘束されて寝そべっているので、動ける範囲も限られているのだが器用に体を捩じらせて食いついていた。 たまに失敗して喉の奥からくぐもったうめきが聞こえたが、あえて無視した。懸命に俺のものを大きくしようとするけな気な姿は悪くなかった。 「前から思ってたがほんっとにマゾだよな?激しくすればするほど抵抗して、もっと酷くしてっていってるようなもんだったもんなぁ」 「んーうぅッ!」 語尾からして違うと否定したのだろうとわかったが、言い直す様子もなく舐め続けていた。そんなに体が疼いてしょうがないのかと呆れかけたが、こっちも元気を取り戻してきていたので動くことにした。 「んぐ、うぅっ!ん、うぅ、ふぐうむぅぅぅッ!!」 そこを荒らすかのように縦横にかき回すとおもしろいように頭を振り乱しながら、口の端からよだれを垂らした。そして熱に浮かされたような瞳でうっとりと見ていた。これは完全に陶酔している。 ほんとうにどうしようもない奴だ。快楽にとことん弱いのだ。しかも今思い返してみればわりと最初の頃からだ。心底嫌そうにしていたのは数回でしかない。 はじめての時はあまりの変貌に人が変わったかのような錯覚に陥ったが、こいつは素でこうなのだと今ならわかる。 どこか妖艶で情熱的な視線に騙されて、衝動的にどす黒い感情がわき勢いのままに犯したのが昨日のことのように思い出せる。 臨也はなにも覚えていないが、俺はこの一ヶ月のことをすべて鮮明に記憶している。忘れられるわけがないのだ、あんな昂ぶるような情動を。 「って、やべぇ出しちまうところだったじゃねぇか!ったく」 「ぷ、あっ…っ、あぁごめん夢中になってた。もうさっきからぞくぞくしてたまんなくてさぁ」 悪さをして叱られた子供のように全く悪気なくぺろりと舌を出しながら笑った。しかし瞳は俺のことをしっかりと睨みつけていて、どうして欲しいか語っているようだった。 この煩い口を閉じていればそれなりなのにな、と内心思いながら言葉で煽られることも少なくは無いかと思いなおした。 「あつくて、疼いてるここ……もっと疼かせてよ。ぶっといので栓してくれなきゃ、垂れ流しっぱなしで床汚れちゃうし」 「そんなのもう遅いだろうが。まわりくどいこと言ってねぇで、素直に俺が好きだから欲しいって言ってみろよ」 体を下に移動させながらにやにやと嫌味な笑いを浮かべて告げた。所詮はただの言葉遊びだったのだが、どうしても奴の口から俺が好きだとはっきり聞きたかった。 あの言葉に随分と振り回された腹いせだ。言うまではしてやらないと言い掛けて、口をつぐんだ。 「……俺はシズちゃんが大好きだからして欲しい。シズちゃんは俺の体が大好きだから犯したいんだよね?」 「あぁそうだ、体だけだ俺は」 「性質が悪いはまりかただよ?それって」 見透かすように言われて俺はあっさり肯定した。気持ちは一致していないが、利害は一致している。ならそれでいいと思った。 「好きだとか感傷的なこと言ってるがなぁ、最初からビッチだったのが全部悪いんだ。あの日の手前に文句を言いたい気持ちなのはこっちなんだよ」 「ムカつくから犯す?ほーんと端的だよね、でもそこが好き。マゾでもビッチでも勝手に呼んだらいいよ。シズちゃんが俺にはまってるっていうだけでこっちは最高の気分なんだから」 そう言って誘惑するように両足をがばっと限界まで開き中心から残液をわざと吐き出して先を促してきた。頬を染めるのまでこいつはコントロールできるのか?と思ったが、心底期待しているのだろう。 ここまできて照れて顔が赤くなるという柄ではなかった。 ギンギンに張りつめて硬くなりきっているものを誘われるままに擦りつけると、残った白濁液のぬめりを借りて簡単にもぐりこんだ。 しかし一気に奥まで進めるのはやめて、暫く入り口の浅瀬を楽しむ事にした。 「ん、あぁ、うんぅ……っ、シズ、ちゃんの癖に焦らす、なんてっ…芸当で、きるんだ?」 「そのほうが後でおもしろいことになるからなぁ。先にイッたりなんかしたら、許さねぇから覚悟しておけよ」 入れた瞬間から包むように締めつけられていたが、それぐらいで慌てるほど軟弱ではない。口で翻弄された分をお返ししてやらなければ気が済まなかった。 それこそ恥も外聞も捨てて泣き喚きながら懇願してくるまでしてやるつもりだった。媚薬が効いているならそうなるのも時間の問題なのだ。 「…っ、うぅ、んうぅ…中ぐちょぐちょな、のが…ちょっと変なかんじ、っあぁ…?」 何度か抽送を繰り返しているとはっきりと臨也のあえぎ声が変わりはじめた。特別になにかをしたわけではないが、目尻に浮かんだ雫が後から後からこぼれていく。 急におかしいなと首を捻っていると、そういえば前立腺を刺激すると気持ちいいとかなんとか聞いたことがあったのを思い出していた。勿論相手は臨也だ。 その時は試してみるかと聞かれたが、そんなまどろっこしいことはしていられないといつものように突っこんだだけだった。 入り口から五センチくらいのところにあるんだよとご丁寧に説明されたが、今がまさにその状態だった。 「あ、ああぁ……ぅあ…?んぅ…?ふぅ、はふっ…ん、ぅ…」 想定外だったが戸惑いながら熱い瞳で見つめてくる眼差しは悪くなかった。ここ数日の顔色変えず淡白にしてきたセックスとはまるで違う。 俺が犯人だと告げただけでこんなにも変わるのなら、もっと早くそうしていればよかったと思った。 「あ、やだっ…ま、待って!イッちゃいそ、だからぁ…!ひ、とりでイくなんてやだぁ、シズちゃんとがいい!シズちゃんに中出しされたいから、おれッ!!」 無抵抗にされるがままになっていたのが、突然縛られたままの腕を振り回したり両足をバタつかせたりしながらわがままを言う子供のように言ってきた。 そこに打算的なものはなにも含まれていないように見えた。ただ純粋に一人で出すのが嫌なのだと感じ取ることができた。 俺が予想したような喚き散らす姿ではなかったが、これもなかなかいいなと思った。ちょっといつもより幼いような表情で、充分にそそられた。 「そんなに俺のでイきてぇのか?」 動かすのをぴたりと止めて、返事をわかっていながら確かめるように問いかけた。 「ふ、うぅっ……あ、たり前だよぉ。ね、もういじわるしないで…いっしょにイこうよ?せつなくて、辛くて、おれ…」 唇をわななかせながら必死に縋りついてくるのが、いつかの俺に貞操帯を破って欲しいと言ってきた時のものと重なって一つになった。 きっとこれがコイツの本質なんだと、なんとなく勘だけで思った。すましたような顔や憎たらしい顔、わざと淫らな顔をしてみせたりしたがほとんどが意図的にしていた表情なんだと気づいた。 別に表情一つにとやかく言うつもりはないが、臨也が他の誰にも見せないものをこの俺にだけ見せているという優越感が心地よかった。 「しょうがねぇ奴だな、そういうところが嫌いなんだよ」 「あははっ、きらいでもいぃからさ…っ、はやく俺をシズちゃんで満たして……っ、うぅぅ、ああぁあぁ…ッ!?」 話が終わらないうちに強引に腰を奥まで突き入れると、幸せの絶頂にいるかのような笑いを顔に浮かべて大声をあげた。 「俺もどうしようもねぇが、手前はもっとどうしようもねぇな」 「は、はぁっ…あ、りがと…ッ、うぅ、はあぁ、あ、うぅぅッ!」 褒めたつもりなどなかったのに礼をいわれて面食らってしまった。前後に揺さぶりながら、頬が熱くなっていくのを感じていた。 臨也はほんとうにバカな奴だ。臨也に対する俺の態度を考えるとこんな野郎のどこがいいんだと自分ですら思っているのに、好きだと言ってきやがってバカとしか思えない。 「絶対に俺は好きになんかならねぇからな!ノミ蟲が」 「あはぁっ、それで、いいよ?あ、あぁ…た、のしぃなぁ…っ……ふふっ、あ、ふうぅ…!」 無理に笑おうとして失敗したのか、肩をビクンッと震わせてそれから何度も麻痺するように揺れた後息を吸いこんでいた。 その隙を見逃すはずはなく集中的に弱いポイントである奥壁を擦りあげて、乱暴に腰を掴み動かしたり床に押しつけて深く深く繋がったりした。 「ひぁ、や、ああぁっ…そこ、そこらめっ、やらぁ…ん、ひもちいぃ…ああぁうぅ、ん……!」 あまりに連続した衝撃に頭がついてこれないのか、舌ったらずな口調でただ快感だけを伝えてきた。 うまくしゃべれないなら黙ってればいいのにとも思わないこともなかったが、こいつの言葉にいつも駆り立てられるのはこの俺なのだ。今だって充分に煽られている。 「あぁ、ほんとムカツクぜ!ムカツク、ムカツク!!」 「んあぁ、ひ、うぅぅんッ…は、ひ、やぁ、んうぅああはひぃいぃ……ッ」 何度罵倒をしても向こうは悦んでばかりだった。遂には口を金魚のようにパクパクさせて、淫猥なあえぎをこぼすだけになったがこっちも限界に近づいていた。 腰のあたりに手を置いて律動のスピードを早めると中が痛いぐらいに締めつけられて、唇をぎりっと噛み締めた。 「あ、っ出して、なか、いっぱいッ!シ、ズちゃ、んうぅぅッ!ひゃ、はあああぁぁ、ああぁう、っぁ、あ、あはぁ…!!」 息を吐き出しながら熱い迸りを欲望のままに放出すると、倦怠感が訪れたが悪くない気分だった。すっかり汗をかいてべたべたになった肌が気持ち悪かったが、興奮はまだおさまらなかった。 「ん、うぅ…やだ、これはまっちゃいそ…っ…ふふっ、んぅ…」 腰をくねらせながら光の無い瞳で俺のほうを眺めてきたが、まだ全然満足していないだなと本能的に悟った。確かに媚薬を盛った時はいつもこうだったのだ。 こうなったらとことんまで責任を取って付き合わないと、こっちが後で酷い目に合わされそうだなと身震いした。 「俺シズちゃんのおちんぽ、大好きだよ」 まるですべてを見透かしたような顔で無邪気な笑顔を向けながら、表情に似つかわしくない淫らな言葉を口にした。 text top |