「なまえ……?」


ゴクン、と生暖かい血液が喉を流れていく。甘ったるいそれにうっとりしながらも時間だと背中を叩かれて男の首筋から口を離した。つうか誰か呼ばなかったか

ちらっと呼ばれた気のする方向へ唇についた血液を舐めとりつつ視線を向ければ困惑の色を浮かべたルドガーが立ちすくんでいた。


あ、と俺が声を発する直前、慣れた手つきで襟首のシャツを整えていた男、ヴィクトルが彼に声をかける


「ルドガー、明日エルを迎えに行く。そのことだろう」


「…………」


「それとも、私に文句か?」


ピクッとルドガーの肩が揺れた。文句??色男がここに呼んだのか?なんなんだと二人を交互に見つめる。


「悪趣味だな」


「だが、これで解ったはずだよ」


「それは、」


「なまえに執着心はない」


「あ?さっきから何の話してんだ?」


「気にするな。なまえ、私はいつでも家にいる。いいね」


「?、ああ」


訳のわからぬまま促されて頷いてしまったが、ガシッと片方の手首をルドガーに掴まれてさらに訳がわからなくなった。なんでこんなピリピリしてんだよ


「なまえ、行こう」


「はあ?ってオイ!」


ぐいぐい引っ張られるのもそのまま、気が付けばコイツの家に着いていた。


「………」


「………」


「なまえは、アイツのとこに行くのか?」


「アイツって、ヴィクトル?」


こくんと頷いた。
眉間にはシワが寄っていてますますさっきからの雰囲気に謎が深まるばかり。


「なんでだ?」


「アイツの方が、ちゃんと見境…なまえのこと、考えてると思ったから」


「別に、アンタが居ろってんなら居るけど…」


俺は血が吸えればどっちでもいい。まず話わかんねえし


「ほんとか?」


「?、つうかアンタのが相手しやすいぜ?」


色男はいろんな意味でこえー。吸いやすい方が都合がいい


「そうか」


「なんか気色悪いぞアンタ」


今度はホッとしたみたいに微笑みだしたし、なんなんだよ。ニンゲンってわけわかんねえ


「なまえ、ありがとう」


「はあ?だからなんなんだよ!気色悪い!」


もうあっちいけ!ハゲ!





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