「重てえ…」
「ナァ、」
ナァじゃねえよナァじゃ。
時刻は夜9時頃。いつものようにルドガーの帰宅時間を狙って家に侵入したときだ。思いっきり黒い影が飛びついてきて後ろに転んでは頭を強打した。
その黒い影は言わずもがなデブ猫で、ぐるぐると喉を鳴らし我が物顔で俺の上に乗っかっている。生意気だな。名前はルル…だったと思う。
「んー猫のくせにいい匂いすんな」
ぐいっとデブ猫を持ち上げて、腹を顔に押し付けてみる。
流石、やわらかい。オマケに腹が空く匂いだ。
もしやコイツもクルスニクじゃねえのーなんて私案すればタイミングよくコツコツと聞き慣れた足音と甘い匂いが漂ってくる。帰ってきたのだ。
「ただい―…ルル?!」
「ナァ〜」
「だ、駄目だろ…!大丈夫かなまえ」
ぼふっと帰ってきたルドガーがデブ猫を退かしたことで視界がクリアになる。今日もいい匂いだ。
「俺はそんなヤワじゃ…―って、え!」
「ナア」
ぴょこ、どす。
二回目の衝撃が俺の腹部を襲った。もちろんデブ猫だ。
「こら…!ルル!」
「ナ!!」
「駄目だ!」
「ナァ!」
珍しく飼い主に反抗を見せるデブ猫。たまには逆らいたくもなるのか?それよりも会話が成立しているのはなぜなのか。吸血鬼の俺でもこれほど意思疎通はできない。クルスニクって優れもんだな
「つうかさ、何ムキになってんの?どうせアンタ晩飯作るんだろ。デブ猫の相手くらいしてやるぞ」
その代わりご褒美はもらうけどな
「…なまえ」
「なんだよ」
「いや、なんでもない。ルル、今日のご飯はロイヤル猫缶だ。欲しいだろ」
「ナァ〜!」
ぴょーんっと今までの反抗が嘘みたいにルドガーの持つエサに飛びついていくデブ猫。欲に忠実はいいことだ。そしてちらりと見えたのはしてやったりな顔のルドガー
なんだ、ルルを取り返したかったのか。