それぞれの部活が終わり、体育館を施錠した僕は着替えるため更衣室へと向かった。
そこまでは何ら変わりない。あとは帰るだけだ。だけだったのだが、扉を開けようとしたところで、止める。
誰か、居る
『―は…っ、なまえく…あっ…』
『ん、もっと?』
『!、あ…ッ―、ン…っ』
「………」
くちゅ、ぐちゅ、と僅かに聞こえる音。いろいろとまる聞こえだ。いや、その前にあいつらはこんな時間にこんな場所で何をしてるんだと言ってやりたい。今直ぐに。扉を開けて。
けれど信じられないことに僕の足は動かなかった。さあてどうしようか。明日の練習は3倍だな
『ン…は、…あっ…!も、いや、です…っ』
『うん、気持ちいいね?』
『ひ…あっ…ッ―!なまえく、ん…っ…――!』
『!ッ―は…―やっば』
途端にズク、と下半身に感じた重みにッチ、と舌打ちをした。
「…、…最悪だ」
まさか反応するとは。
然れどしてしまったものは仕方がない。きっと最近慰めていなかった結果だろう。さっさとトイレに行ってどうにかすればいい。そう、すればいいだけだ。二人を懲らしめるのはそれからだと改め踵を返したとき、ガチャリと後ろから音が聞こえた。本当に最悪だ。
「……あれ…」
「………」
「もしかして、聞いてた?」
後ろ手で静かに扉を閉める彼を見届けつつ、ゆっくりと視線を合わせる
「何のことだ」
「いいや、聞いてないならいいんだけど…さ、どこ行くの?」
扉を背にカチャカチャとベルトを締め直しながら、意地の悪い笑みを見せる彼。僕の前でそれはそれはいい度胸だが自分の状況が状況なだけに頭が高いの文字は出てこなかった
「見回りさ」
「ふーん…そう。ご苦労様。――まあトイレの見回りには気をつけて」
テツヤ、明日の練習は5倍にしよう