「この人、すごいです」


「どの人」


テレビを見ていた俺は、テツヤの一言で彼がここ一時間ほど睨めっこしているパソコンを覗き込んだ。レポートの画面はどこへやら。


「ボクが今読んでる本の著者です」


「ふーん」


「緑間くんが貸してくれたんですけど、」


「テツヤ」


「?、はい」


「終わった?」


「いえ、あと700字ほど」


「……微妙な」


「そろそろまとめに入るので直ぐです」


「じゃあ無駄話してないで画面戻せ」


いくらテレビと言えど一人で見るのは飽きてきた。課題があるのは仕方ないけれどかわいいテツヤが近くにいるのに相手にできないのは不満である。ましてやこっちの気も知らないでレポートと関係のないことに時間を使われれば尚更。
まあ趣味の時間は大事だけど、なんとなくカンに障った


「なまえくん、」


「なに」


「怒ってますか?」


「なんで?」


「機嫌、良くなさそうなんで」


「……そう?」


「はい」


パチパチとキーボードの音を響かせて、ちらりと俺を見た彼は難しい顔。モヤモヤが取れないんだろう


「ボクのせいですか?」


「……」


「なまえくん」


「ばーか」


「……、すいません」


あ、今のかわいかった。


「いいよ」


「そう、ですか?」


「俺のこと考えてるんだろ、だからいいよ。じゃあお湯ためてくる」


自分は意外と単純らしい。のっそりソファーから立ち上がって、水色を撫でてから風呂場へ向かった


顔赤かったなあテツヤ





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