「なんと…!」
『家光さん…それガチですか?』
「ああ、だから頼んだ。名前、バジル。」
そう言われたのはもう何時間前だろうか、とりあえずここは母国、日本だ。
「名前さん、これからどうしましょう?」
『うーん、俺ん家に泊まってから綱吉くんとこ行くか』
「わかりました!」
とは言ったものの、ここ数年自宅へは帰っていない。きっと埃だらけだ。帰ったら掃除だなあ。
なんて呑気に考えていたそのとき、
『…バジル』
「はい」
ただならぬ殺気が神経を撫であげる。それは目の前のビルから。
「!―上…!!」
『!、おい馬鹿…ってマジ…』
時既に遅し――彼はあっという間にビルの中へと入っていってしまった。
いつもならばここは逃げましょうと言うはずだけれど、日本好きの彼のこと。来日できた興奮からたまたま冷静さを失った――とか。
もしそれが本当ならバジルもまだ子供だ。勿論俺も。
"う゛お゛ぉい"
『!?…―ッチ、ねーわ…』
どうやら俺もちんたらしている暇はないらしい。
例のあれを持っているのはバジルなのだ。
俺は刀を握りしめて、彼の入っていったビルへと走っていった―――
「う゛お゛ぉい、よえぇぞ」
『バジル!!』
ドカン!と蹴っ飛ばした扉の先に見えたのは、片手で落ちまいと体重を支えている彼の姿。
「名前―っ、さん…!」
「なんだぁあ゛?てめぇもかぁ」
そして風に靡く銀色。
包帯で固定されている刀。
同じ剣士として忘れるわけがない。実際に戦ったことはないけれど、強いのは一目瞭然だ。ここは逃げるが勝ち。
『悪いなスクアーロ、お前の相手してるヒマはねーわ、俺らにも予定があるし?ってわけで―――さようなら!!!』
「?!」
猛ダッシュでバジルのところまで走って、彼を支えこみそのまま屋上から飛び降りる。俺のバランス感覚と脚力嘗めんなよ。
上から待てコラ的な声が聞こえたが、構う必要はない。
『このまま俺ん家に直行するから、掴まってろ。…ったくあれ持ってんのお前なんだし、落ちついて行動しろよ、マジ調理すんぞチビ』
「す、すみません」
改めて周りを警戒しながら、できるだけ早く家へと向かった。
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