取引(ジェイ)


真っ昼間、依頼を請け負った俺はひたすら歩いていた。ジリジリと照り付ける太陽に体中の水分を奪われてしまいそうだ。何故辿り着けない。素直にそう思った。だって、依頼主の言葉通りならもう遠の昔に到着しているはず。それなのに、何故。いや、単に迷っただけなんだろうけれど。それは認めたくはなかった。俺が道を間違えるなんてありえない。しかし、その御蔭なのか、珍しいものに出くわす


「よう、ジェイ」


「ああ…貴方ですか。。」


珍しいもの。それは言わずもがな彼のことである。珍しく膝をついて、肌白い額から脂汗を幾つも浮き出させていて、皮肉たっぷりの小競り合いさえも出来ぬほど、苦しいらしい。いい気味である。


「怪我ねえ、、治癒術なら心得てますけど?」


対して俺は至って普通なのだから、それ相応の言葉を投げかける。「結構です」と直ぐに断られてしまったけれど。理由を問えば「貴方に貸しを作りたくありません。」と、随分嫌われたものだ


「ああそう、、まあ精々頑張って」


頼まれないのなら助ける必要もない。俺としてはコイツを助けてやりその礼として道案内でもさせようと企んだのだが、致し方ない。俺はポケットに入れてあった地図を引っ張りだす。早く依頼を終わらせないと。喉が渇いた。


「………ナマエさん」


「うるさいな。俺は今仕事中だ」


「その場所、ここから真逆ですよ」


はらり、地図に向けていた視線を彼に移した。そこにさっきまでの苦しげな顔はない。きっと太陽が地図を透かしたのだろう。やっかいな事実を知られてしまった


「……助けて、って言えよ」


「助けてくださーい」



とても綺麗な棒読みだった。

 

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