恋愛算数



例えば僕の想いが8として君の想いが3とすると、君の想いが5つ増えたら線を二つ書いて等式になるでしょう?つまりそういうこと。イコールにならなければ自分に告白する権利は無いと思うんだ。
だから彼女の望むことは言われる前に先回りして全部やってのけたし優しい仮面だってずっと外さなかった。毎朝おはようのメールも、毎晩おやすみの電話も怠らなかった。定期的に会わないと駄目だとどこかの雑誌に書いてあったから、三日に一回は忙しくてもキャンセルしてどこへでも駆けつけた。

君の気持ちは何桁なのかわからないけれど、僕はそれより何倍も多いと思うんだ。昨日までは8だけど今日は16で、明日は32になってたら、そんな関係になれたらいいなあなんて。ねえ、春奈ちゃんもそう思うでしょ?そうして僕がいつものように君に手を伸ばす。するとどうだろう、やんわりと手を解かれそのまま走り去ってしまった。

僕の想いから君のを引いたら少し差が出るとは見当がついていた。でも、あれ、おかしい。思っていたより差が大きい。だらりと行き場のなくした手をおざなりによくよく考えてみれば簡単なことだった。彼女の想いは増えるどころか減っていたんだ。
僕の想いはプラス、君はマイナス。二つを掛けたらマイナスになってしまう。そんなの、嫌だ。散々手を尽くしてきたはずなのに恐らく、その答えは全部間違いで二桁あった彼女の気持ちはいつの間にか一桁になっていて境界線を越えて下り、僕の気持ちは反比例するように増していったんだ。

どんなに笑顔で取り繕ってみても結果は変わらない。僕に対する彼女の態度だけが日に日に変わっていく。怯えるように目に光のない表情じゃなくて、溌剌とした可愛い笑顔が見たかっただけなのに。どこでミスをしたのかさえわからない僕の脳は液体のように溶け、ぽろぽろと目尻からも水滴が零れ落ちる。涙と一緒に膨大な気持ちも全部流れればいいのにと小さく願った。




恋愛算数



いっそゼロをかけてこの想いを消してしまえたらいいのに

fin.




2012.08/21


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