ジャバヲッキー・ジャバヲッカ



幼い頃に別々の人生を歩んできた彼等にとって大人という障害程面倒で煩わしいものは無い。幸福論も二元論も大人が論じたものはすべて信じないし疑うこともしない。そんなだから、俺達が現実主義者なんて言われてしまった日には笑いしか込み上げてこない。と鬼道はつくづく思う。

彼が三年に上がったころから頻繁に届くようになったエアメールの山を、春奈が恨めしそうに眺める。一枚を手に取り、兄の了解も得ず中身を広げる。必ずしも英語で書かれた手紙ではないので彼女にとっては意味不明な言語ばかりが脳内に流れ込んでいく。ひとしきり弄んだあとまたしても勝手に手紙を丸め、ごみ箱へ放る。

「ねえ」

指をさすだけで音には出さないものの、これは何なの、と寝転がっていたソファから机の方へ問う。意味を察知したのか勉強の手を休め眼鏡を外した鬼道が無表情で呟く。

「高校進学は海外がどうだ、って」
「お兄ちゃんはどうするの。行くの?」

答えは一つしか返ってこないのを見越して悪戯っぽく春奈が笑う。どうやら兄から直接その言葉を聞きたいらしい。

「まさか。春奈の居ない所へなんか行く訳ないじゃないか」

依存症じみた会話が彼らにとってテンプレートなのだ。酸いも甘いも自分たちが肯定するならそれがルールに準ずることになる。計算通りの答えが返ってきたことに満足したのか、クッションを抱きしめ隣に座ってきた兄の背中へと体重を押しやる。

「一緒にいる時間が短くたって、世間の大人達がどう言おうが正論を並べようが私達には関係ない。二人一緒に居れれば風景が違うだけでどこにいたって変わらないでしょう。私の事はお兄ちゃんが一番よく理解してるしお兄ちゃんの事は私が一番理解してるつもり。その他なんていらない」

兄弟愛にしては重すぎるときっと世間では言われるだろうけどだからといって隠すつもりも恥じる要素も彼等には皆無だ。理由は色々あれど、こうでもしないとお互いの感情が爆発しかねない。だからわざと口に出すのだ。言わなくても互いを分かり合える関係だけじゃ、二人には少々退屈すぎた。




ジャバヲッキー・ジャバヲッカ



結局この世はナンセンス


fin.





2012.07/26


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