ネガティブ系プラス思考



こちらの春奈先生視点




無事に帰ってきた彼らを出迎えたものの空気は淀み誰も一言も話さず私の横を駆け抜けていく。どうしたのみんな、神童君達と一緒じゃないの、聞こうにもそそくさと荷物をまとめ部室を出ていく。数ヶ月前の春の惨事を思い出してしまいそうになるくらい心はピリピリと緊張感が漂っていた。最後に部室を出ようとした彼に声を掛けてみる。

「みんな暗い顔してるけど、どうしたの?」

彼のことだからきっと冷静に状況を判断しての帰還だったに違いない。唯一の頼みのように、嫌な予感がしつつも尋ねると彼が顔を上げた。ゆらりと振り返った瞳に生気はまるで無く私をつまらなそうに眺めてからぼそりと呟く。

「もうサッカーはやりません。目が覚めました」

じゃ、と、一瞥もせずに去ろうとする彼は明らかにおかしい。頭が反応する前に咄嗟にユニフォームの裾を掴んだ瞬間、勢いよく弾き飛ばされてしまった。

「もう俺は貴方と関係ない人間ですから」

淡々とはきはきと。未練なんて元から無かったかのように振る舞う霧野君の冷たい視線に、一瞬たじろいでしまった。敵に何をされたのかはわからないけれどそれでも、こんな霧野君は初めてだ。諦めきって腐敗した過去の目ではなくそもそも根本から根こそぎ奪われているような、憎しみが滲み出たそんな目で私を捉えているのかも定かではなく。

「待って。いつもの霧野君じゃないわ」

何があったの、と再度必死に口調を強め、もうこの背中を一生見れなくなるんじゃないかと心のどこかで思っていたのかもしれない。一度でもこっちを向いてほしい、淡い期待を込めたが私のことなんか見向きもせずドア前に立つ。

「俺自身で決めたことです。何もありません」

これ以上話す必要はないと体現しているように、辛辣な目をしたまま彼が振り向くことは無かった。誰もいなくなった部室がやけに広く感じる。いや元々広いのだがそれでも決定的な何かを失ったような気がして、虚無感に包まれた空間の中音も立てずその場に泣き崩れた。




ネガティブ系プラス思考



知らないうちに君に依存していた私に出会った



fin.



2012.06/02


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