※プレイ中クリア前





僕の役目は、決して彼らを邪魔せずに、ただただ見守り、そして時が来るのをただ待つことだ。僕の意見は極力出してはいけな。彼らの決定を静かに受け入れ、物語の道筋を、あるがままに歩ませる。
例えば、僕が彼らとの切っ掛けにしたあの魔物。あんなものがいればそれこそ僕の出番だ。彼らの邪魔をするのだから、それはイクォール僕の邪魔でもある。
僕は異世界の住人で、彼らに関わることは本当ならしてはいけないのだと理解している。それが僕の行動と、思考に、時おり警報のようになり響いては、目を覚ます。

(どうか、彼らから遠く在れますように)

僕はつまり、存在してはいけないのだ。存在するはずのない僕は、彼らとの仲が深まる度に、逃げ出してしまいたくなる。そうして、不意に気づくのだ。
この世界で必要のない僕は、ひょっとしてこのまま彼らから離れた瞬間に、忘れ去られてしまうのではないか、と。
………いや、何も言うまい。例えそうなったとしても、僕にそれを責める権利はない。けれど願わくは、と思ってしまう。必然のようにあの日僕と出会った彼ならば、また、必然のように僕をずっと覚えていてくれはしないか、と。

一人思い立って仲間の輪を抜け、町行く人と混ざりあって同化してみる。眩しい程に優しい光がきっと、あの輪にはある。一緒にいれば、僕もその一員なのだと勘違いしてしまいそうな、優しい、優しいそれ。
離れれば、より一層眩しくて、僕は目を細めて彼らを見る。ああ、やはり、彼らは僕に気づかない。遠くなる輪の中で、お上りさんのようにきょろきょろとするルカ君が、僕を探しているのかと期待させる。そんな、まさか。イリアやスパーダに、リカルドやアンジュに、エルマーナやコーダに。気を配われながら歩く彼が、僕を探しているなら、見つけてくれるなら。
僕はあまりの馬鹿馬鹿しさに肩を揺らして笑うしかない。悪ふざけのような一人離れた僕、道化だと笑いながら顔を上げれば、射抜くように見つめる翡翠の瞳とかち合った。
ルカ君の唇がふわりと綻んで、僕の名前を当たり前のように紡いだ。



「コンウェイ」



うん。

雑踏の音に紛れて、僕にはとても聞きづらい音、いや、声だったけれど、どうしてだろうか、殊更優しい音色だと思った。
咄嗟に、表情を繕えなくて、僕の顔はきっと惨めたらしく歪んだに違いない。それでも何とか苦笑に変えて、頷いて見せた。これは、意地とかじゃなくて、僕なりの誠意だ。
エルマーナと繋いでいた手を離して、僕を手招くように手を振る。立ち止まるルカ君を今度はしっかりと掴み直したエルマーナが引いて、保護者のように心配を滲ませた目で見た。そうだ、彼の片手は、少なくとも彼のその輪を守るためにある。しっかり、繋いでおかなくては駄目なんだ。僕なんかのために離しては、いけない。いけないんだ。
人々の間を縫ってルカ君まで辿り着けば、彼は酷く安心した顔でもう一度僕を呼んだ。

「コンウェイ」
(うん、聞こえているよ)
「急にいなくなるから、どうしたのかと思った」
「ああ、ごめんね。ちょっと気になるものがあったから」
「そう?もう、いいの?」
「うん、もういいんだ」

もう、いいんだ。
もう、君が見つけてくれたから、それで良いんだ。
君の片手が仲間のためにある。そうと僕は知っている。けれど、きっとこの瞬間は、僕にも同じように君の片手を差し出してもらえた。例えば本当はそれが手ではなかったのかもしれない。君の翡翠色をした、美しい瞳だったのかもしれない。それとも、限りなく優しい声音だったのかもしれない。
それでも、もう、どうだっていい。

「コンウェイ?」
「手、繋いでもいいかい?」
「え、え?ぼ、僕なら大丈夫だよ?」
「うん、ちょっと人に酔っちゃったみたいでさ。よければ、少しだけ頼めないかな」
「そうなの?じゃあ、少しゆっくり歩くよ」

気忙しげに言うと、エルマーナを先にやってゆっくりと歩く。
僕を見上げる瞳も、心配を告げる声音も、この片手から伝わる温もりも。この瞬間は僕のものだ。
僕を、この世界で確固足るものにする、唯一のものだ。
少しだけ力を入れて握る手に、また、ルカ君が僕の名を呼んだ。


「 コンウェイ 」

僕は存在を許されたような気がした。






よそ見ばかりと思ったら
 
私を見つけてにっこり笑う




by207β

コンタウさんはcpにしにくいなぁ。落とし処が難しい。





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