*年越しの風景

「「優勝は…………白組です!」」

「うぁぁぁぁん! 白組なんて嫌いだもん!」

テレビから聞こえてきた声に連動し、琉依が悲痛な叫びを上げた。
両手に抱えていたクッションを、床にばふばふと叩きつけながら。
それを横目に見ながら、綺依はため息をつく。
我が弟ながら、頭の足りない人間だ。
今年の紅白の結果なんて、最初から分かっていたようなものだろう。

「僕、ちゃんと紅組に投票したのにぃ!」

そのテレビ、インターネットに繋がってないんだよ。

「あんなにアイドル出てたのに?」

紅組も白組も似たような感じだったと思うが。

琉依の言葉一つずつに心の中でツッコミを入れ、綺依はもう一度ため息をつく。

「今まで半世紀くらい紅白に出続けた歌手が紅白を卒業するって言ったんだよ。
そうしたら、その歌手に花を持たせるために白組を優勝させようとみんな白組に投票する。
その結果がさっきのだ。
分かったら、グズグズ言ってないで寝ろ」

そう言い終わるやいなや、綺依に向かってクッションが飛んできた。
投げたのは、もちろん琉依。

「おにぃのバカ! 意地悪!」
「それは世論に言え」

クッションを投げ返して、綺依は立ち上がる。
あと7分ほどで正月を迎える。
それまでにはベッドに入っていたいものだ。

「琉依、もういいだろ。寝るぞ」

彼の腕を掴んで立たせようとしたのだが、琉依は微かな抵抗を見せた。

「やだ……」
「何で」

眉根を寄せて、綺依が尋ねる。

「だって僕、除夜の鐘全部聞きたいんだもん」

すぐさま答えが返ってきた。
琉依には絶対に無理だ、と突っぱねようとしたが、彼のまっすぐな瞳が口を噤ませる。

「……好きにしろ。俺は寝る」

掴んでいた腕を離して、綺依は後ろを向きかけた。
が、今度は琉依が綺依の腕を掴む。

「えっ、待ってよ!
おにぃも一緒に除夜の鐘聞くの!」
「俺は別に……」
「やだ、聞かなきゃダメ!」

押し問答の繰り返しで、埒が明かない。
時計の針はいつの間にか0時を超えていた。
いい加減眠くもなってくる。
痺れを切らした綺依は、琉依を睨みつけると彼の両頬をつねった。

「黙れ。俺は寝るからな」

そう言い残すと、縋る琉依を振り切ってさっさと二階へ上がっていってしまった。
琉依は目に涙を浮かべながら、両手で頬をさする。

「……おにぃのバカ」

1人きりになった部屋の中で、琉依の独白と共にくぐもった鐘の音が響いた。

-end-

三ヶ日滑り込みセーフ。2014年も明けました。
一体このSSは何なのでしょうか……。
いつも以上に駄作ですね。



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