(地獄堂/ガラコ)
――ぱしゃん。
涼やかな水音を立てて、水がアスファルトの熱を奪う。
じりじりと肌を焼く様な日差しに、思わず根を上げそうになる。
それでも音だけは涼しげで、何となくアンバランスな感じが、ますます夏を煽っている気がした。
「良い天気」
そういって尺を持った少女が空を見上げれば、金色の目をした黒猫がついっと目を細めて欠伸した。
それにくすくす笑うと、バケツと尺を片付けて影に入る。
少女が黒猫の隣に座れば、ひやりとした空気が熱を冷ました。
この店の雰囲気もあるだろうが、やはり、
「猫が涼しい所を知っていると言うのは、どれも一緒なんだねぇ」
そう言って、ガラコの喉を撫でれば、少しうっとおしそうに、それでも大人しく、ぐるぐると鳴いた。
――ちりん。
どこからか風が吹いて、軒先の風鈴が耳を冷やした。
夏のアンバランス
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