僕は兄様を尊敬している。それは僕が幼い頃から良くしてくれていたと言うのもあるけれど、なにより兄様はブラック家の長男として、とても出来た人だった。頭も、言葉も、動作も、すべてが大人とくらべても遜色のない、むしろ兄様の方がより高貴だと思ってしまうなほどに、完璧だった。…否、ほどに、ではなく実際にそうなんだろう。僕だけではなく、誰もが兄様を褒め称える。お前は素晴らしいと、お前は生まれもっての素質があると、お前は純血の鑑だと。父と母はそんな兄様が誇らしいと言う。二人は兄様を愛した。──普通の子どもならば、普通の弟ならば。そんな兄様が僕は嫌いだと、言うのかもしれない。兄様ばかりなぜ愛されるのかと、言うのかもしれない。自分のことも愛してくれと、言うのかもしれない。僕はそんな者達とは違う。兄様を羨むこともない。厭うこともない。なぜなら、僕は兄様を尊敬しているのだから。なによりの自慢である兄様に、そんな邪な感情を向けることがどうしてできようか。くらべられることは仕方がない。兄弟である以上、それからは逃れることができないもの。父と母にくらべられようと、僕は嫌だと思うことはないだろう。二人から今以上の愛を求めることもないだろう。




ただ、僕は。あなたから。


「──お帰りなさい、兄様」


兄様から。兄様だけから。


「ああ。ただいま、レギュラス」


認めてもらえれば、満足なんだ。




(兄様が僕にだけ見せるその 表情カオ がなによりの宝物だった。)


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