輪廻転生って本当にあったんだとか、前世が数百年先の未来ってどういうことなのだとか、色々疑問に思いながら周囲に流されつつ世情を知りつつ生きていたらいつの間にか寺小姓とやらになっていた。いやまあ、俺の容姿をやたら恐れてたからそれが原因なんだろうけど。この綺麗な銀髪は、そう簡単に受け入れられるものじゃないらしい。時代が時代だから仕方ないなと薄情ではあるが今世の家族のことは忘れてしまうことにして、坊さんの手伝いやら寺の掃除やらを他の小姓とともにせっせとこなしたり、そういったお誘いを躱したりと中々に忙しい日々を過ごしていたある日。

「茶を貰えるか」

何の前触れもなく寺を訪ねて来たどことなく疲れた様子の男に、偶然居合わせた俺は了承の意を返して、足早どころか競歩の勢いで井戸へと向かった。途中すれ違った小姓仲間がぎょっとしていたけど知るもんか。今は構っている暇なんてないんだ。

井戸へ着いた俺は、人気がないのを良いことにその場にしゃがみ込んだ。ゆっくり息を吐いて、男と出会ってから頭の中でぐるぐると渦巻いているものを整理する。

まずは俺自身の名前と職業は何だ。佐吉で寺小姓だ。あの男は誰だ。名前は知らないが刀持ってたし雰囲気的にお武家様だろう。お武家様は何と言っていた。鷹狩りで疲れたから茶をくれと言っていた。

「寺小姓の佐吉と鷹狩りの帰りで茶を求めたお武家様……」

自問で出た答えを並び替えつつ口に出すと、浮かんでくるとある偉人の逸話。偉人と言ってもそれは前世での話で、俺の予想が正しければ彼はその逸話をこれからやるところだろう。

つまり、何が言いたいのかって言うと、だ。俺って石田三成じゃね?さっきのお武家様って豊臣秀吉じゃね?いやそれにしてはなんか全体的にごつかったような……つか、BASARAの秀吉じゃね?え、もしかしてこの世界ってBASARA?BASARAなの?なら俺は家康ゥ!が口癖の三成なの?いや確かに銀髪だし髪とかなんか尖ってるように見えなくもないけど……え、まじで?まじなの?ええー……。

この世に生まれて十年と少し。予想だにしなかった事実に衝撃を受けながら、とりあえず豊臣秀吉(仮)なあのお武家様には大きめの茶碗にぬるい茶をいれてやることを決めた。



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