足が震える。
承太郎にはどれほどの間こうしているのかもわからない。限界を超え痛む膀胱。中腰で足を開いたままでいると筋肉が軋み鈍い痛みを叫び出す。そんな姿勢、トイレの姿勢のまま数十分が経過した。
事の始まりは些細な事だった。
承太郎ぐらいの年頃にはよくある事で不規則な生活と過度のストレスで起きる事。つまり便秘だ。ただ状況とタイミングが悪かった。
「さて、リキめ。糞の始末をしてやろう」
「…ッ、無理だ、DIO。しょんべんが、っーー!」
「そんなにつらいか?」
「もう、がまんでき、ね」
ぎゅううと尿道括約筋に力を込める。
きちんと与えられた水分は徐々に蓄積され承太郎をさいなむ。ぺたりと尻を冷たい床につけたままDIOを見上げた。このやり取りは2回目、すでに2回も尿意を訴え退けられている。1度目はどちらも出さずに終わった。しかし次踏ん張ったら漏らしてしまう。そんな確信があった。
「…ぅ、もれる、漏らしちまう、から、しょんべんさせて、くれよ……っく…」
「駄目だ」
「っなんで、」
「さっきも出していなかっただろう。出すなら糞が先だ。さ、わかったら便所に行け。…お前専用の、な」
有無を言わせない態度
もうDIOは何を言っても聴いてくれないだろう。ちょうど夏のはじめのような視線。促されのろのろと立ち上がった。
這ったままでは衣装ケースはまたげない。
唯一DIOと同じ目線に立てるのはこの時だけ。そっと見せつけるように空気椅子と和式便所の中間のような姿勢で立つ。惨めだ。DIOはスラックスと白いワイシャツで承太郎は全裸。用を足すたび舐るような視線がその身体をじっとりと犯した。
「、っぅ……ぁ、でね、DIO、大きい方、は、無理、だ」
「そうか、なら出るまでそのままだな」
嘘だろう
思わず目を向く。キリキリと痛み出した膀胱は限界だ。それでもDIOは顔色一つ変えない。承太郎のことなど何も気にかけていないような表情で瞳だけがギラついている。尿意で泡立った背筋にゾクリと何かよくわからないものが走る。形容しがたい衝動に促され再び腹に力を入れた。
「…ぅ、……ん、ぐ、ぁ……っふ、ん……」
たらり、と汗が伝う。
腸の奥で硬くなった便は一向に出てくる様子はない。むしろ尿を出さないように、DIOの許可なくおもらしをしないようにする事に必死だった。DIOの目の前でヒクつく股間を丸出しで、おしっこを我慢して、そこまで考えて承太郎は熱い吐息を吐き出した。
「…まだ出んのか」
「、っ?!…ぁ、あぁ、これじゃ、むり、だ」
「……仕方ない。浣腸をしてやろう。そこで待っていろ」
「……は?」
呆然とする承太郎を置いてさっさと出て行ってしまった。
後に残ったのはうんともすんとも言わせない腹と限界を叫ぶ膀胱とじくりと熱を纏った腰だけだ。浣腸なんてしたくない。ただですら恥を耐えて排泄しているのに無理やり下痢糞を出してもらうだなんて耐えられない。しかし承太郎にはどうにもできない。許されたのはいつ戻るのかすらわからずじっと主人を待つことだけだ
「…ッツ!、っは………ぅん………んん……」
この部屋には時計がない
いったいどれほど我慢しているのかすら知れないまま無理な姿勢で痛む足を踏ん張る。こらえきれない足の震えはそのまま膀胱に直撃する。ぷるぷると震えるたびに承太郎の目尻に涙が浮かんだ。
加えて無理に我慢を強いている体は早く出せと言わんばかりに膀胱を痙攣させ『波』を送る。
数度の波を超えるたびに次は乗り切れないだろうという確信にも似た予感が迫ってくる。拘束された腕では股を抑えることもできない。自由に排泄する権利すら持たない承太郎は漏れるギリギリの状態でひたすらDIOを待っていた。
ガチャリとノブの回る音が響く。
じっと下腹部を見つめていた顔を上げDIOに叫んだ。
「っぁ、でぃ、DIO!!もう、許してくれッ!これいじょ、できねっ、ーーっぁう……んん……」
「急に大声を出すからだこのマヌケ。…いいか、今からこのケツに浣腸をくれてやる。十五秒だ。たった十五秒耐えられたら全部漏らしていいぞ」
カツカツと靴音を鳴らし檻の中へ進む。
立った状態でも身長差のある二人はかたや哀願の眼差しで、かたや無機質な瞳で見つめあった。
声を張ったせいで波に呑まれかけた承太郎は眉間にしわを寄せ耐える。DIOはその頬に手を添え搦めとるように囁いた。
「じゅう、ごびょう……」
「そうだ、できるな?」
「…ん、やる」
「尻を出せ。このDIOが手ずから入れてやる」
おずおずとDIOに尻を向けるように動く。
その度にちゃぷりと尿が揺れ体内からも承太郎を責めたてた。ハァハァと息を荒らげそうっと腰を突き出す。あちこちに片付けられないままの糞尿が固まった猫砂。その中に足首まで埋めると上半身を下げる。手をケースの縁に、DIOがやりやすいように整えた姿勢はなんとも無様だ。
すらりとした足の上にぷるんとした臀部がこちらを向いてマネキンのように立っている。
「…、まだ、か?ーーっも、きつ、っひゃぅッ!」
「きばれよ承太郎。しくじったら仕置きだ」
「………ぅ、ぁ…………」
唐突に慎ましやかな後孔に冷たい液体が注がれた。
待ちくたびれていた承太郎が飛び上がりそうになるほどの温度。冷蔵されていたのか慌ててひきしめなければ漏らしてしまっていたかも知れない。
呻き声とともに小刻みに震える尻を大きな手のひらで撫で応援するかのように呟いた。しかし承太郎には聞こえてなどいないだろう。ずっと溜め込んだおしっこに加えてグリセリンによって硬くなった便が降りてきたのだから。
「…ん、っぐ、ーーーっはッ…………ぅうう…」
ぎゅるるるるる、と鳴る腹
急激に増す便意に息が切れる。尿道を圧迫する力は変わらずどちらも我慢できないほどだ。十五秒。たった十五秒だが承太郎にはそれを知る術はない。いったいいつになったら出せるのか、全てはDIOのみぞ知ることだ。
「…ぁ、でぃ、お……ぅ、まだ、か……」
「まだだな」
つっけんどんに返される。
入れるだけ入れてDIOは早々に檻から出て行ってしまった。恥ずかしい姿勢。しかし尿意も便意も限界に近い承太郎はピクリとも動けない。そのまま尿意の波とじわじわと肛門を押す硬い便と戦っていた。ふ、と息を吐くと少しばかり緩んでしまったのか汁が太ももを伝う。その度に体に力を込めるも限界が近い。
「ッ!、ぁ…ぐ、でぃお、でぃ、お……」
「『まだ』だと言っている」
「っも、むり、だッツ!も、もれるっ!!」
やれやれ、とばかりにため息を漏らしソファーから立ち上がった。情け無い声を上げる承太郎の尻に向かって声をかけた。
「おい、『できる』と言ったのは嘘か?このDIOにまた嘘をついたのか?えぇ?」
「ちげ、でも本当に、むり、なんだ」
呼吸すら苦しげに言葉を吐き出す。
そんな無様なオブジェに白く美しい指先が伸びた。黒く艶やかにネイルケアが施された男とは思えぬ指。壁を向き目を瞑った承太郎に気づかれぬまま、そのまま腹の前を横切り、そして
ぎゅうううっっと肉芽をつねり上げた。
「ーーッツ、ぃが、ぅあぁあ"あ"あ"ッツ?!」
ぼとぼと、びちびちびちっ
じょろろろろろろーーーーーーと胸糞の悪くなるような水音が響きあたりに悪臭が立ち込める。慎ましやかな縁をぷつり、ぷつりと押し広げ小刻みに便が降りてくる。かろうじてDIOにはかからなかったもののケースの外に薬でユルくなったクソがたれ、白い壁紙を小便が黄色く染めた。
肝心の承太郎は神経の塊を握りつぶされたせいか白目を向いている。
ガクガクと腰を揺らしながら我慢していた汚物をひりだしたあとべちゃりと音を立てそこに座り込んだ。うまく息が吸えないのかヒュッ、ヒュッと笛のような吐息で両手で股間を抑える。汚臭が気にならないのか自らの排泄物に座り込みうずくまっている。
「はァ……まだ十秒もたってないのだぞ?幼稚園を出てないガキでもできるだろうに、オムツでも付けるか?ン?」
「ーーぅう"う"……ぃでぇ、ぅりちんぽ、ったぃっ…」
「返事ぐらいしたらどうだ、承太郎。それともそんなに自分のクソが気に入ったか」
ボロボロと涙を零しながら首をふる
あまりの痛みにロクに言葉も紡げないのか舌足らずな言い方で痛い痛いと泣きじゃくっている。ずるずると鼻をすする音が聞こえてきた。芋虫のようにうごめく少女に呆れたような声の罵倒が刺さる。
「全く…多少はマシになったかと思ったのだがなァ……なんだこのザマは?我慢できんどころか壁も床まで汚して、よほど仕置きが欲しかったと見える」
「…ぃがっ、でぃおが、くりちんぽ、さま、ギュってしたから、」
「人のせいにするんじゃあない。できると言ったくせに堪えられなかったのはお前だろう」
DIOは白い背中を丸めたままじっとしている承太郎を抱き上げた。
雄々しい巨躯はたやすく女の体を持ち上げる。一挙一動に悪臭が鼻腔を刺しそのワイシャツを汚物が汚した。痛みに震えなすがままの承太郎は縋るように両腕の中からDIOを見上げる。その声は恐怖にか細く震えていた。
「………な、にするん、だ」
「仕置き、だと言っている。せいぜい震えていろ」
移動した先は浴室だった。
定期的に運ばれDIOに洗ってもらう場所。普段なら温もりと慈愛に満ちた空間も人の心が違うだけでここまで冷え込むのか。今の承太郎には恐ろしいほど無機質で冷たい空間だった。DIOは濡れて温度のないタイルにべちゃりと承太郎を投げ捨てる。
「なぜ、とは言わせんぞ。このDIOに逆らった分、部屋を汚した分、嘘をついた分、しっかり反省しろ」
「だって、DIO、があんなことしなきゃあ…」
「妨害しないと言った覚えはない。わたしが原因だとしてもどれもお前が漏らした事に変わりあるまい?…尻を出せ。躾は尻をぶつものと決まっている」
淡々と責め立てるDIOに承太郎は泣きそうだった。
せっかくDIOのために耐えていたのに台無しにされて、しかもそのせいで罰を受けろだなんて横暴だ。ひどい。しかしこうなったDIOは何を言っても聞いてくれないことも、逆らうともっとひどい事になることも知っていた。
この数週間で丹念に教え込まれた教訓、『許されるためには罰を受ける』『それを乗り越えれば優しくして貰える』それらはしっかり体に染み付いている。だから承太郎はいまだジンジンと痛むクリを抑えそっと後ろを向いた。
「しめて30回、しっかり数えろ。止まったり言い間違えたらはじめからだ」
「…ぅん、できたら、許してくれる、んだよな?」
「できたら、な」
ヒュッと風切り音が鳴る
大きくふりかぶられた腕は綺麗な放物線を描き振り下ろされる。パァンッ、と乾いた音が浴室に反響した。
「ぃ"ッツ、かいっ」
「にかっ、ぅあ"ぁあっ!…ぃ」
「ーーーッ!!さんが、ひ」
何度も何度も繰り返し打ち付ける。
無言で尻を叩くDIOの顔など見える訳もなくじわじわと広がる熱と鋭い痛み、一切の躊躇の無い平手にまなじりが熱くなってくる。たくましい腕から放たれる衝撃は17、8の小娘には強すぎる。
「っふ、じゅ、にか、ーーっひ」
手を休める事なく淡々と行われる処罰
まるで太鼓でも叩いているかのごとく単調で、何一つ感情が伝わってこない痛み。ハッカ油の時のように正気を失うことすら許されず無機質な衝撃が臀部を打つ。尻を向けているため顔を見ることもできなければ声を聞かせてくれもしない。そこにいるのに機械か何かに嬲られているような気さえしてくる。
切ない。さびしくて、つらい。
痛いだけではない涙が込み上げてくる。鼻の奥がツンとして嗚咽で数がはっきりと言えない。ヒックヒックとえずく喉を抑え必死に吐き出した。
「、じゅ、よっ、ふ、ぅう…、ひっく」
けほりと息を吐きずるっと鼻をすする。
ようやく承太郎の様子に気がついたのか手が止まった。伸びをするネコのような姿勢の背中にDIOは声をかけた。
「……どうした」
「っも、つれぇ、…しり、ったい、しっ…ヒック……さびしっ、でぃお…でぃ、お……」
ぐずる承太郎の背中を熱を持った手のひらが撫ぜる。
力強く叩き続けた手は腫れ上がり冷えた承太郎を温めた。やさしく何度か撫で父性すら感じる柔らかな声で言い聞かせる。
「承太郎、何故こんなことになっているかわかるか?」
「、おれっが…わるいこ、だから………」
「そうだ。悪い子のお前にはしっかり罰をくれてやらねばなるまい。しかしそれも嫌なのか?本当に、どうしても嫌か?」
「…っやだ」
「ならこいつは何だ」
「っひゃう!?」
なだめるように囁きつつ伏せたままの頭を撫でる。
いやいやと赤子のように首をふる承太郎の臀部、こちらを向いている女陰に指先を滑り込ませる。熱を持った秘部を冷やす長い指に間の抜けた声が出た。くちゅりとかき混ぜると抜き取り承太郎の顔先まで持ってくる。
指先は透明な糸を引いていた。
「…ぁ、ぇ?ち、ちがっ、こんなの、」
「『こんなの』?ケツを叩かれて感じる淫乱じゃあない、と?」
愕然とする。
痛くてつらいだけだったのに、そのはずなのに体は確かに欲情していて、自分の体にすら裏切られた気がした。呆然と愛液で濡れた指を見つめる承太郎に穏やかな声がふる。
「お前は尻を腫らして感じている変態だろう?…でなければわたしの指が汚れるはず無いじゃあないか。わかったら続けるぞ」
「っやだ、嫌だッ!こんなのおれじゃあねぇ、違う、ちがうんだ、」
我に返った承太郎は自分に言い聞かせるように叫ぶ。
ふるふると首をふり体を起こそうと暴れる。その華奢な体をDIOは片手で抑え、耳元でささやいた。
「何がだ?思い出してみろよ…初日からションベンも糞も垂れ流して、メシの度に喘いで、ココもこんなに腫らして……マトモな女の体じゃあない。そんなお前が痛みに啼いておかしいことがあるか」
「っぁう、…く、ぃち、ぽ、さわ、なっ」
のしかかり声で耳を犯しながら小指ほどに育ったクリストスをつまむ。
先ほどと違い優しく、すりすりと甘やかすようになでさすった。指が動く度にビクビクと体が跳ね腰が揺れる。
「前を見ろ」
「…ぁ、ぁあ……」
顔を上げた正面、鏡の中にはとろけた表情の女がいた。
目尻は快感に下がり喘いでいた口は熱い吐息を漏らす。頬は赤く染まり何とも淫靡な顔。これで感じていないなどと言っても説得力は皆無だろう。
「承太郎、お前は痛いのも、恥ずかしいのもきもちいいのだろう?」
「…いたいのも、はずか、しいのも……」
「でなきゃあこんな屈辱を味わって濡れる訳無いなァ?」
「……ぅ、ぁ、ぁあ………」
艶やかなテノールは承太郎の思考を絡めとりDIOの言葉を染み込ませる。
違えようも無い感じた証拠にとろけた自分の顔、何より承太郎を支配し続けた恋人の声がそれを真実だと訴えかける。
「なァ、承太郎。今どうなっていて、それをどう思うのか言ってみろよ。……ちゃあんと言えたらあと5回でいいぞ」
「ぁ、ぅ…」
承太郎はぱくぱくと口をあけてとじて、何度も言い澱む。
真っ赤な顔をさらに耳まで赤く染め小さく息を吐いた。そして、うわずった声で小さく呟きだした。
「……ぃ、いま、ぉれ、は、」
「聞こえんな、もっとぶたれたいか?」
「ッ、いまっ、おれはっケ、ケツを突き出して、DIOに叩いてもらってっ、き……きもちよくなってるッツ、……ゆか、でおっぱいがつぶれね、よう、に分けて、て、乳首、がはみ出たかっこ、でっ、〜〜〜〜はずか、しっ、…ぅ、ぁあ……」
大声が浴室に反響してより大きな音量となって響く。
とうとう決壊した涙腺からボロボロと雫がこぼれおちそのまま泣きじゃくりだした。まるで子供のように唸り、自分の惨めさに、それを快感と受け取った淫乱さに泣きわめく。ぐじゃぐじゃの顔を満足気にDIOは眺め褒めやした。それでいいのだ、淫らで惨めで、それでもいいのだと言い聞かせるように、無様な承太郎を受け入れるように笑いかけ頬を撫でた
「あァ、よく言えたなァ…お前は素直な子だ。承太郎、あと5回だ、……いけるな?」
「っひっく…ぅん…っふぅ……」
かすかにうなづいた承太郎を認めると再び背後に回る。
そして腕を振り上げた。
「ッツぎぃっ、ひっかいっ!」
「ーーにっか、い"ッ」
「ざん、が、っぁア"、ッツーー、」
「よ、ッツ!がぃっ」
あと一回、そこまでくるとDIOは承太郎を抱き起こしその腕で強く抱き締めた。タイルで冷えた肌にDIOの体温が沁み入る。どこかスパイシーで甘い香水のかおり。DIOの存在が承太郎の傷んだ心になだれ込む。
「さァ、最後だ。がんばれるな?」
「あぁ…DIO……」
DIOが手を離すと承太郎はくたりと倒れ伏し腰を上げた。
真っ赤に腫れ上がりリンゴのような尻を渾身の力で叩き上げた。
「ーーーーッツ、ひぎゅっ、ぁあ"っ」
痛みに濁った絶叫を上げ、荒い息を吐く。
痛々しい尻たぶをそっと撫でDIOは言った。
「数え損ねたな?」
「…ぁ、っでも、もう無理だ……」
か細い声で限界を訴える。
腫れた尻は内出血をともない、しばらくすればアザになるだろう。承太郎は半泣きで弱音を吐く。DIOは深く、深くため息をついた
「…やれやれ、わたしも大層甘いものだ。フン、次は無いからな」
「っありがとう…………ぇ、ぁ、ぁああっ?!」
穏やかに笑ってみせたDIOに安堵したのか溢れんばかりの笑みを承太郎は浮かべた。気が緩んだのかしょろろろ…と少量ながら愛液ですらない液体が流れる。すっかり動転したように慌てて止めようとするも一度で出した尿はなかなか終わらない。
「っあ、すまねぇ…DIO、許して、おしっこ、とまらな、」
「………さっき言い聞かせたばかりだろうに」
心底呆れたと言うように呟く。
真っ青になっておもらしを食い止めようとする承太郎をよそに水たまりはどんどん大きくなっていく。またお仕置きだろうか、いやさっきの今だ。許してもらえないかもしれない。これで失望されたら、見切られたら、そんな考えが脳裏をよぎる
「かまわん、許してやろう」
そんな言葉と共に抱き寄せられた。
「お前は仕方のないヤツだなァ、え?すぐに漏らすわ忘れるわ、付き合い切れるのはこのDIOぐらいのものだろう」
受け入れられた、赦された。
そう感じた瞬間途方も無い歓喜と安堵が押し寄せる。
はらはらと涙を零しながら大きな背中に縋り付きホッとため息を吐いた。もう大丈夫だ。こんな風でもDIOはゆるしてくれる。DIOならば平気だ。そんなことを思ってしまった。
『ゆるす』とはそれだけで上下関係を生むことだ
誰かか集団か社会か法か、違いはあれど他方の好意によって存在を許容されるということである。つまり、初夏、あの時にゆるしてくれと願った時点で二人の関係は歪み数日で強固なものに変化した
心の奥底、承太郎自身も気づかないところに刷り込まれ、支配者への感謝と尊愛は高まってゆく。『この夏が終わるまで』その一言に賭け屈従している身ではあるがその変化は引き返せないところまで来ていた。
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