足がおぼつかない。
じっとりとした脂汗が頬を伝う。腹が重い。尋常ではない、内側から殴られているような腹痛。うっすら膨れた腹がその中身の多さを示していた。承太郎が排泄を禁じられてすでに三日が経った。喧嘩の内容は覚えていない。どうせ名前の浮気性がどうのこうのとかだろう。絶対にあいつが悪い。クズそのものである名前は同居人であるおれに手を出しながらよそに女も作りフラフラしているのだ。


「……ぅ"、っぐ、ぅ……」


鈍痛の波が来た。
健康体である承太郎は数日排便を封じられただけでも凄まじい腹痛を催す。この貞操帯さえなければ、と下半身を睨んだ。セックスをした後の尻穴はゆるみきり簡単にプラグを飲み込んだのだ。名前は承太郎が腰が抜けて動けないのに太い、自分では入れることすら思いつかないようなサイズのゴム栓をぶち込んだ。

そうだ。そうだった。
あの日帰宅したら名前が女といて、女を抱いていて、おれとはずっとシてないのに、女と。射精管理されて一週間程の一番辛い時期に名前のセックスを見せつけられた。荒い息とオスの、肉食獣のような名前の顔を見ながらひたすら我慢させられて、ケツがきゅんきゅん疼いて勃起しようとしたちんこがギリギリと握り締められて、ひどかった。何がひどかったって見せつけられて、女を抱いている名前ではなく抱かれてる女に嫉妬していたことだ。オスとして失格だろう。名前に縋りたかった。女を退かせておれが抱かれたかった。なのに名前は目もくれなかったのだ。


「あ、いたの? こいつ送ってってあげて」

「あら、色男じゃあないのよ。名前は?」


全部終わった後、そんなことを言いながら名前達はこっちを向いた。名前がクズなのはいつものことだ。仕方なく女を駅まで連れて行ったらあのアマおれに連絡先まで渡してきやがった。名前に抱かれたその体で、おれに色目を使ったのだ。あんなふしだらな女よりおれの方がいい。おれの方が名前を好いている。そう言って渡された紙片を名前に渡したらこのざまだ。どう考えても非はない。なのにあいつはパンツ型の貞操帯を無理やり着せて、カチャリと鍵をかけたのだ。


ーーーじょー君口うるさいよ。人の女にちょっかい出さないで欲しいんだけど。ちょっと反省ってのしてくれる?だいじょーぶ、便秘の人なんか一週間出さない人もいるらしいじゃん。我慢な


そんなことを言って出て行った名前
いっそ金属を捻じ曲げて外してやろうかと思ったが名前に縁を切られたらと思うとそれもできない。糞が溜まってるせいか食欲も出ず、女に家を渡り歩いてる名前を待つだけの日々。ようやくアパートにたどり着き鍵を出そうとかばんをまさぐる。なんとか見つけてドアノブに挿し回す。…鍵が開いていた。


「…名前、か?」

「おーおかえり、じょー君。元気?」


そんな訳あるか
思わず握った手に力がこもる。いっそこのツラ殴ってやろうか。それが一番いい。女に見向きもされないような顔にして出て行ってやる。そうするべきだろう。ソファーに座り振り向きもしない名前。一歩踏み出す。どうせ名前には避けられないだろう。この優男にはそんな身体能力はない。背後に立つ。腕をふり上げた。


「…じょー君、この間はごめんね」


手が、止まる
名前が謝った。初めて、名前が。呼吸が止まる。承太郎に背中を見せたまま名前は続ける。聞いてはいけない。聞いては、この続きを聞いたら。決意が鈍ってしまう。確信があるのに硬直した体は言うことを聞かない。


「なんか、じょー君が取られた気がしてカッとなっちゃったんだよね。最初から俺のじゃねーけど。お腹、苦しいよね。鍵はここ置いとくから。……家の鍵も返すよ。じゃーね」


ピシリと固まった体
それに気づかず名前は続ける。深く反省しているような暗い声。最初から名前のじゃなきゃなんでこんなことをしたんだ。名前に想いを告げた時、貞操具を着けられた時、名前のものになれた気がしたのに。貞操具は戒める鎖であり首輪であり、他の女どもには与えられていない特権だったのに。それすら簡単に手放すのか。おれは、名前にとってその程度の、そんなものだったのか、名前が立ち上がる。名前が立って、歩いて、出て行ってしまう。今までは必ずここに帰ってきてくれたのに。鍵が返された。もう来ない。


「それじゃあ、っ……じょー君?!」

「…っふ、ぅ…この、クソ野郎、ってめぇ、ここまでっ、…っく、ぅ…しといて、なに言いやがっ、…」


嗚咽が混じって話しづらい。
ゆらゆらと視界がにじむ。喉がしゃくりを上げて言葉が途切れた。鼻の奥が熱い。耐え切れなかった雫が頬を濡らす。ひっくひっくと荒くなる呼吸が苦しい。慌てたように腕を伸ばした名前が近い。ボロボロと子供のように泣く姿にうろたえ、細く節くれだった指が伸びてきた。ビクリと体が震えてしまう。それをなだめるように名前は涙を拭った。


「あーっと…じょー君、それって…?」

「もう、とっくに!…おれは、てめーのだってんだよ…ッ!」


吠えるように叫ぶ
ぐしゃぐしゃに泣きながらでは覇気などかけらもない。伸ばされた腕を掴んで言い放った言葉に名前が目を大きくする。苦しい。ひたすらに苦しかった。わかってくれない名前も、視線を向けてくる女も、こんな男に惚れ抜いている自分も、全部が喉を詰まらせる。ぐずぐずと鼻を鳴らす。顔に血が上って熱い。必死で息を整えていると名前がぎゅうと抱き寄せてきた。名前の腕が伸びて、自分よりひとまわり小柄な肩に引き寄せられる。ぐっと腹が押されて腹痛と吐き気がひどくなる。しかしそれ以上に心臓がうるさかった。


「あー…俺なんもわかってなかったな。ごめんごめん。……なぁ、じょー君。女の子ごっこしようぜ。仲直りしよう」

「…ぁ、それ、は……」


『女の子ごっこ』と聞いて心臓がきゅうっとした
熱い顔がさらに熱をおびる。跳ねる心臓がうるさい。なぐさめるように後頭部を撫でられる。それだけで心の何かが瓦解する音が聞こえた。まるで愛しい女にするような手つき。名前ではありえない行動だ。名前はもっと粗雑に、適当に、手酷く承太郎に触れるのに。これではまるで本当に女になったようだ。


「じょー君って俺のだったんだね。じゃあ俺の好きにしていいってことだろ? 俺かわいい女の子抱きたいなぁ…」

「……ぅ、ぁあ……」


名前が耳元で囁く
今までにない甘ったるい声。無理強いせず委ねられた選択。まともだ。名前にまともに扱われている。承太郎にだけ特別ひどかったのに、まるで他の女どもと同じように性行を求められている。きっとここで首を振れば残念そうに諦めるのだろう。彼女達に名前がするように。強引に求められる事をそれだけ望まれているのだと言い聞かせて、特権のように暗示をかけていたが、優しくされるととろけてしまう。そうだ。ずっと、ずっとこんな風に名前に愛されたかった。名前が自分の胸元で小首を傾げる


「だめ?」


NOとは、言えなかった。












***************










鍵を外し貞操帯を取った後
ぷすりぷすりと吐き気がする臭気を垂れ流す肛門に浣腸液が注がれ中身をぶちまけさせられた。一度注いで、空っぽにしたらもう一度。レバーを引いて便座の中を洗い流し座り直す。出てくる液体が無色になるまで続けた。三日ぶりの排泄は気が飛んでしまいそうなほど気持ちがいい。そのせいで結局外してもらえなかった金属の貞操具に逸物が握りつぶされ痛みが走った。金属製の貞操具、勃起すら許さない悪魔の上から貞操帯をかけられ、まともに洗えていなかったせいで蒸れたにおいがする。下半身から漂う臭気にどうしようもなく羞恥を煽られた。


「…っはは、じょー君くさいよ? 汗とチンカスのにおいがする。もうちょい気を使ったら?」

「、っうるせぇ!!」


誰のせいだと思ってるのか
揶揄する声に真っ赤になる。まだ服の一枚も脱いでいない名前の前で裸体を晒し、挙句汚臭を嗅がれている。顔が熱い。穴があったら入りたい。名前に汚濁をもさらけ出して、みっともない。事実だからこそつらい。思わず手で股間を隠そうと足掻く承太郎に手が差し出された。


「洗ってあげるよ。シャワールーム行こうぜ」

「…あ、あぁ」


爽やかな笑み
エスコートするために差し伸べられた右手。淑女を導くような紳士的な態度で腕を引かれる。片手で収まらない股間に手を当てもう片手を引かれ歩く姿は滑稽だろう。そんな惨状など見えていないように柔らかに笑う名前。思わず見惚れると扉を開き浴室に放り込まれた


「…おい、脱がねぇのか」

「ん、脱いだほうがいい? じょー君が恥ずかしいなら俺も脱ぐけど」

「濡れるぞ、そのままだと」


んー、と唸ったあと脱ぎ捨てた名前
久しぶりに見たその裸体はどうも目に眩しく直視するのが気恥ずかしい。そっと目をそらした承太郎の前に名前がしゃがむ。いやに目につく肌色に妙な鼓動が止まらない。まるで生娘か何かのようだ。軽く抱き寄せられぬるい体温に鳥肌がたった


「じょー君、照れてる?…っはは、かぁわい」


ドキドキと心臓がうるさい
頬が熱くて、名前の肌が温かくてどうにも落ち着かない。最後に名前と抱き合ったのはいつだろうか。甘いテノールが鼓膜を震わせる。名前に『かわいい』と言われた。こんなゴツくて女らしさなどかけらもない男なのに、かわいいと言われてしまった。嫌なはずだ。普通であったらかわいいと言われて喜ぶ男はいないしかしどうしても胸の高鳴りが抑えられない。糖蜜を煮詰めたような甘ったるい声で首を両腕に囲まれた。グッと近くなった名前の首筋が艶めかしい。するりと背中を愛撫するように片手がなぞり、もう片手が耳の後ろをくすぐる


「……ぅ、ん…おい、」

「かわいいね。耳まで真っ赤だ。全部さっぱりしたらちゃんと女の子になろうな」


するりと解かれる腕
なくなってしまった体温がさみしい。よくわからない虚無感に襲われ両手の行き場がない。胡乱に目をタイルにさ迷わせ立ち竦む。その体にサーッと水がかかった。にこやかに笑った名前は目の前の巨躯にまんべんなく水を浴びせ掛けると一度止め置き、両手にボディソープを手に取った。


「じょー君、頭の上で腕を組んで座ってくれる?」

「……は?」

「洗ってあげるって言っただろ?ホラ早く」


名前が待っている
手のひらに出されたソープは泡だてられ両手を白く覆った。有無を言わせない顔。こうなったら名前が一歩も引いてくれないことは経験でわかっている。下手に抵抗するとさらに悪化することも、だ。言われた通りの姿勢で名前の足元に座る。蹲踞の姿勢に腕を組んだせいでどこもかしこも丸見えだ。拭い去りようのない羞恥が湧き上がる。その腹に名前の手が触れた。


「…っく、ゥ…スポンジは、」

「たまにはこういうのもいいだろ?」


鼻歌を歌い出しそうな上機嫌
ぬるつく指がツーっと腹筋の筋をなぞりぬるぬると肌を舐めあげる。下腹部に生えた陰毛で泡立たせ遊ばれる。名前が遊んでいる。敏感な脇の下をくすぐるようにくるくると触られ声が殺せない。ローションプレイのような現状。くすぐったいのに、ズキリと痛んだ股間が信じられない。誤魔化したくてそろそろと足を閉じる。ヤンキー座りでもなく妙にしとやかな体勢だが背に腹は変えられない。隠そうと四苦八苦していると名前が口をひらいた


「あっれ、じょー君勃起してる?」


気づかれた
しかも最悪のタイミングで。今名前の手は脇からスライドされ心臓の上。つまり乳首に触れている。名前から見れば奴隷のような姿勢で乳首をいじられ勃起している変態だ。ピシリと硬直した体。それを見下ろす名前はさぞ愉快そうに笑っているのだろう。明らかに喜悦の滲んだ声が降ってくる。きっと淫乱だと詰められて沢山虐められるのだ。嫌だと言ってもやめてくれなくて泣くまで、泣いても追い詰められる。どくりと鳴った腹の奥から意識をそらす。ぬるついた指がぷくりと腫れた乳首を摘んだ。


「…ぅ、んっ」

「乳首気持ちいね。じょー君はいっぱい気持ちよくなれていい子だ。もっと欲しい?」


聞きながらくにくにといじられる
泡で滑る指はしっかりと捕まえる事が出来ずにもどかしい快感をじわじわと送り込む。くるくるとマッサージするように乳頭をこねられて腰が揺れてしまう。おかしい。いつもの名前なら馬鹿にしたように男失格だとか言いながら痛いほど引っ張るのに。取れてしまうんじゃあないかってくらい乳首だけ遊ばれたこともある。甘やかされて蕩けてしまいそうだ。こんな風にされたら骨も残らないに違いない。ねだることも、拒むこともできずにいると焦れたように名前が言った


「…じょー君、俺そろそろ我慢できないんだけど。ベッド行かない? そこで嫌ってくらい気持ちよくしたげる。どうよ?」

「…あぁ、名前。」


口にせずにすんだ
一瞬悪い方に流されかけた理性が戻ってくる。なんとか取り戻せた自分に安堵しながら腕を下ろした。きちんと洗われたのは上半身だけで下はシャワーで流しただけだ。綺麗になったとは言いがたいが腹は洗ってあるからセーフだろう










**********








「お、おい、マジで言ってるのか…そいつは…」

「引くなよ。女の子ごっこって言ったろ?!」


目の前に広げられたスカート
ピンクの花が白地に咲き膝丈まであるものだ。誰が来ていたのか腰回りが太く承太郎でも着れそう、というか着るために名前が持ち出してきたものだ。承太郎の身長では太ももあたりのミニになりそうだが十分着れてしまうだろう。一緒に渡されたハートのニップレスに恥が煽られる。こんなものを着ろというのか。信じがたい。こいつは正気か?よりにもよってこんな大男に女装させようというだなんて!


「じょー君、女の子ごっこをなんだと思った訳…とにかくこれ着るまで絶対抱かないし着たら女の子っぽくしろよ」


呆れたようにため息をつき出て行ってしまう
部屋に残されたのは承太郎と愛らしい服だけ。名前はこういうとき意固地で、我儘だ。本当にコレを着ない限り承太郎には指一本も触れる気はないだろう。ピンクのハートのニップレスと白のスカート。足元に投げ捨てられた二着を見る。絶対に似合わない。筋肉もあるしこの身長だ。着れる方がおかしいだろうし男らしい自分が着ても視界の暴力にしかならない。でも、でも名前は着ろと言う。女の子らしく抱かれろ、と。そぅっと落ちていた服を拾い上げた。










***************







「……これで、いいのか」

「お、かわいいよ。じょー君…じゃなくてじょー子ちゃん。すっごい似合ってる。こっち来てよ」


最悪だった。
ふわふわのスカートからは筋肉がついた太い足が覗き、たくましい胸板にピンクのハートが踊る。下腹部まで生えた陰毛も濃いすね毛も、脇毛もちらりと見えなんとも醜悪だ。裸にタオルだけでリビングのソファーに座っていた名前には目が付いていないのか目の前の化け物を褒め、自分の前に立つように促した。ソファーの前、机と名前の間に立ち向き合った。


「じょー子ちゃん、おっぱい丸見えでエッチだね。ニップレスの上からもぷっくり乳首が浮いてる。…ふふ、かわいいなぁ」

「…誰がじょう子だ、…ン…」


するりと横っ腹を撫でられる
頬に口づけし体ごとしなだれかかってくる。気分を高めるように太ももを撫でられ体がビクリと震えた。クスクスと笑う声が聞こえる。後ろから腕がスカートの下に潜ってきてこれからへの期待に体が硬直した。普段ならこんなことは無いのに。これではまるで処女のようだ。


「じょー子ちゃん、いい?」


なぜわざわざ聞くのか
もっと名前は強引で、酷くて、こんなに恥ずかしい思いはしないのに。頷くまで名前は何もしてくれないのだろう。いつもの名前は男のくせに、ひとまわりも小柄な男に『抱いてくれ』と懇願させたりなどしない。ここでようやく承太郎は手酷く抱く名前に自らの矜持が守られていたことを知った。しかもこれは仲直りのための行為だ。名前をつなぎとめたいなら拒否はできない。


「…あぁ」

「ん、ほぐすね」


ピリリとローションの小袋が破ける音
優しく指が肛門を撫でる。ぬるりとした液体をなすりつけるようにトロトロと指の腹が入り口を押し込む。グニグニと圧迫され、ようやく節くれだった名前の指が入って来た。


「……ぅ、」

「痛くは無いよな?」


痛くは、ない
しかしどうにも落ちつかない。
大切にされるのがこんなに居心地が悪いだなんて。優しく、承太郎のことだけを気遣った愛撫。収縮する括約筋をなだめ、しつこいほどゆっくりと体をあばかれる。真剣そのものの名前の顔が照れくさくて仕方ない。


「、もう大丈夫だ」

「だーめ。中が傷ついたら大変でしょ」


すげなく断られる
焦れったくて逃げてしまいたいほどなのにやめてくれない。名前はいつもこんな風に女を抱いていたのか。苦しいような悔しいような感情に胸が重くなる。前立腺を避けて奥までほどかれ、名前の器にされる。泣きたい気もするしこの幸福に浸っていたい気もする。どうにもならなくて名前を見ているとこちゅりと前立腺を弾かれた。


「…んんっ!」

「いれていい?…もう俺も限界」


見れば白いタオルに浮き上がっている
真剣な眼差しに胸の鼓動が抑えられない。乙女のようにきゅんとときめいてしまう。机に尻をつきそっと足を開いた。このスカートの短さでは簡単にはいってしまうだろう。タオルを脱ぎ捨てふるりと震えた肉棒が突きつけられ怯えのようなものが走る。いつも見慣れているモノなのにヒッと声が漏れてしまう。なんなんだ。服につられているのか名前の対応か。ハジメテを捧げる少女のようだ。ついまじまじと凶器を見てしまう。これが今から腹を抉るのだと思うとゾクゾクした。


「……ぁ、名前…」

「じょー子ちゃん、ダメ?」

「だ、だめ、じゃあねぇ…」


ぴとりと後孔に先端がキスをする
きゅうっと締まり、ゆっくりと口を開く。先走りを擦り付けるようにくちくちと遊ばれ焦れったい。甘えるように名前を見上げてしまう。体を繋げる時に名前の顔を見たのはいつぶりだろう。バックや背面座位ばかりでこんな、こんな飢えた雄の顔など忘れていた。ギラギラと欲の滲む瞳が立ち上がった乳首を、金属に押さえつけられる勃起を、情欲に蕩けた情け無い顔を見ている。全て見られている。男にはないはずの器官がずぐりと疼いた。


「…ん、ぅ、おォッ、!」

「……っふ、これで、全部ッ」


ずるずるずるっと内壁が擦られる
隆起した血管が肉輪を広げ奉仕しようと絡みつく腸壁を弾く。漏れた低い声が恥ずかしい。こんなに丁重に女にされているのに生々しい嬌声が雄々しく辛い。どうしたらいいのか置き場のない腕が口元を覆う。男の喘ぎ声など聞いて楽しいものではない。名前は今女を抱いているのだ。こんな声を聞かせたくない。必死で耐えてるというのに容赦のない鬼頭がぐちっっと承太郎の泣き所をえぐった。


「ーーーん"ん"ん"っつ!!…ゥ、や、なまえッ!」

「声、聞きたいなッ!…ほらッね?!」


ごちゅっぐちゅっと散々割り開かれた肉弁の奥を突かれる。ぷっくりと腫れた乳首をニップレスの上から引っ掻かれ焦れったい快楽に腰が揺れてしまう。すると男根がローションと名前の先走りでぬめり、充血し熟れた肉をこすりあげる。破裂しそうな快感にひっくり返った低い声が出てしまう。しかしそれ以上の問題があった。


「…ンッ!ぅ、ぐ、名前っ!たのむッ!!」

「ん、いっぱい気持ちよくしてあげる」

「ッヒぐっっ!ちがッ、ぃ、ったいッツ!」


甘えたにされた涙腺が緩む
正常位で見る名前の顔は艶っぽくて興奮した。乳首も、期待していた後孔も存分に虐げられ蕩けてしまいそうだ。けれど快感に浸りきれない。すぐ目の前に甘い蜜があるのに飲ませてもらえない。泣き叫びたくなるほどの飢餓に苛まれ、口から離した手で名前の首にすがりつく。声ならいくらでも聞かせるから助けてほしい。解放してもらえるならなんでもよかった。


「、っどこが? まんこははほぐしたでしょ…?」

「そこじゃね、ッ! ぅ、ゃ、勃起!勃起させてくれ…っつ!! も、ちんこいてぇからっ! ふ、ぐ、ぅう"っ…」


涙でぐしゃぐしゃだ
ずずっと鼻をすすり恩赦を求める。ずっと解放してもらえなかった性器は金属の檻の中でギチギチに膨れ上がり見るだけで痛そうだ。勃ちあがろうとするものを無理やり折っているのだから激痛は当たり前だ。スカートの美しいシルエットを崩さないまま痛みに萎えることなくしとど濡れる鈴口は泣いているようだった。女が甘えるように名前の首筋に顔を寄せ抱き寄せる。軽いキスを名前の頬や口元に振らせ媚を売った。貞操具の鍵は名前が持っている。承太郎は雄としての象徴を握られなす術もなく屈服していた。ぐずぐずと泣く体の下の彼女に名前は答える


「…何言ってるの? 女の子にはちんこなんてないし勃起する必要はないでしょ」

「ぇ……ゃ、ぁああ"ッ! っひゅ、ぅ、いっだ、なまえ、ぼっきゆるしてくれッ!ぅ、ぁあっつ!!勃起、ぼっきしてぇッ!」

「だーめ! 他のことならなんでもしてあげる」


途端に暴れ出した体を押さえる
まったく、何を言っているのだか。女の子ごっこと言った時点で逃げるべきだったのに、まんまと引っかかったじょー君には呆れてため息も出ない。うわ言のように勃起勃起とうるさいじょー君の最奥をこつん、と押すと悲鳴に変わった。ここまで人間とは赤くなるのかと言いほど肌を染め涙を流す姿は可哀想で可愛らしい。目をカッと見開いて快感を逃そうといも虫のようにうごめく体を抱きしめ拘束した。この体格差なら簡単に振りほどけるだろうに胸板を合わせただけで硬直するだなんてそこらの女よりウブだ。これで乳首イキまで楽勝なのだからいやらしい。よくかわいいと称される顔をじょー君の蕩けた顔に近づけるとさらに頬が赤くなる。乙女か。そろそろりんごより赤くなってしまいそうだ。身長差で届かないのでたくましい胸元に頬を擦り付ける。甘やかしながら甘えるのに弱いのだ


「ね、じょー子ちゃんはどうしたい?」

「…ぁ、ぅう…勃起してぇ…」

「だからダメだって!痛いなら抜こうか…?」


この残念そうな顔!
気づいてはいないだろうが目の前のご馳走を取り上げられた犬ころのような哀れな顔にゾクゾクする。こんなに嗜虐心煽られるのに俺に会うまでよく処女でいられたものだ。ケツで気持ちよくなっちゃってちんこが痛いのにいざ刺激を取り上げられると泣きそうになるじょー君。立派なドエムだと思う。気遣ってますよーって顔でぬろろろっと腰を引くと一層強く首を引っ張られた。


「だ、だめだっ!……ぉ、奥、突いてくれ…」

「ん、奥だね。でも平気なの?」


白々しい
最初からこのつもりだっただろう。愛くるしい子犬のような顔で激烈な責めをしてくる名前に怒りと、それ以上の肉欲が湧く。思い出すのはS字結腸の奥まで犯され意識がひっくり返るほど気持ちよくなった時のこと。名前はメスイキと言っていたか、腹の奥でトぶとタラタラと精液が漏れつつもちんこは萎えていた。とうとう壊れちまったのかとすら思えた快感。思い出しただけで陽根に金属が食い込んだ。そ、っと手を握られ指と指が絡まり合う。恋人繋ぎだ。きゅんっと跳ねた心臓が恥ずかしい。それすら見透かしたように名前が笑った


「…いくね」

「んォ"ッ!!…ふ、っひ!、ぁ、ぁああ"っ!」


ずどむ、と突き立てられた。
その勢いのまま前立腺をえぐりはくはくと開きつつあった結腸弁を抜ける。ねっとりと雄に奉仕する肉筒はヒダの一枚一枚を絡みつかせ熱に擦り寄る。ぐっしょりと蜜を湛えた秘部は気持ちよくするから酷いことしないで、というようにぎゅうぎゅう名前に抱きつき媚びを売る。締め付ければそのぶんだけつらくなるというのに犯され切った肉体は積極的に肉にしがみつこうとする。入れただけで一瞬とんだ承太郎を気遣ってか腰が止まる。暴れることも、口をふさぐこともできず両手を強く握られる。背中が反って机から浮いた。目をぎゅうと瞑ると胸元の快感に見開かされる


「っひぐ!…ゃ、ぅうぅう…むね、やめろぉっ…」

「胸じゃなくておっぱいって言いな。じょー子ちゃん女の子でしょ? もっとお淑やかにしなきゃね」


ぬるりと舌が這う
ニップレスの端を噛みにーっっと引き剥がされ飛び出た乳首をしゃぶられる。かしりと甘噛みすると雌穴もきゅんっと締まり連動しているようだ。下から舐め上げ、押しつぶされた乳頭が反発するようにぷるりと震える。誰もが見ただけで勃起しそうなほど淫猥な光景。思わずじっと見つめてしまう。紅色に色づいた突起がピンと屹立し舐めて、噛んで、とねだっているようだ。吸われ充血し過敏になった肉芽をがむりと噛まれる。


「ンンっ!!ぅ、お、おっぱいやめてくれ…ッ」

「んーひやら」

「、なんッツ!!ッヒ、ゥんんっ!」


恥を忍んで言ったのに
ギリギリと食い込んだ性器はもはや痛みを通り越して快感でしかない。かしかしと前歯で挟まれ快感から逃げることもできず足が跳ね上がる。縋るあてが欲しくて両足が名前の背中に絡みつく。まるで引き寄せているような姿勢になってしまう。中出し固め、俗にだいしゅきホールドとでもいうのか。反射的に動いた足のせいでさらに深く貫かれてしまい喉奥からかひゅっっと息が漏れた。ぐずぐずに骨の髄までとろかされる。ダメにされる。ちょっとだけいじわるで、でも暴れたり頭を打ったりしないように気を使われているセックス。名前はこんな風に女を抱く。気持ちよくて、生ぬるくて、……物足りない。


「……ァ、ぅ、ぅう…」

「じょー子ちゃん、どうしたの?」

「…、と…もっと、このまま奥、トントンってしてくれ……名前の、で…ぬかないで、とんとんってしてくれ…ッ!も、イキてぇっ!!勃起、できなくていいからッ!めすいきしたい、いつもみてぇにッ!!」


一度口に出したら止まらなかった
ぎゅうぎゅうと名前の屹立をくいしばり全霊で奉仕しだす肉体。認めあふれた肉欲はとどまるところを知らず悲鳴のような絶叫が漏れた。スカートの中の性器からダラダラと白濁混じりの先走りが溢れる。半狂乱に快楽を求める様は正気には見えない。甘く、優しくされすぎて脳みそがとけたのか駄々っ子のようにイヤイヤと首を振り必死で腰を揺らす。もう限界だろうに自由にならない体では達するだけの刺激を得れずトロトロと濁った粘液を流すだけだ。そんな承太郎に意地悪に笑うと名前は言った


「いいけど…じょー子は女の子です。かわいいところ見てくださいって言って?……あの子に」

「…は、ぁ?…ーーーーッツ!?」


ぐい、と顎で刺された先
扉の前で茶髪の美しい女が立っていた。見られていた。一瞬で羞恥が溢れ理性が蘇る。慌てて暴れ抜こうとするもガッチリ握られた両手が話してくれない。


「っひ、や、見るなァッツ!!くそ、名前、手を、」

「じょー子ちゃん、ほら言って?俺も動きたい…気持ちよくなりたい…ね?お願いだからさ」


承太郎の言葉など聞こえていないように囁く
耳に生暖かい吐息が吹きかかりゾクリとした。この声に弱い。縋るような甘ったるい、聞いているだけで切なくなるような声。いつもこれに負けてしまうのだ。必死に顔を赤くし暴れるもきゅんきゅんしだした中は止められない。こちゅっっっと名前の先端が最奥を、一番して欲しいところを軽く突いた。


「ッッツ!…ぁ、ぁあ…」

「物欲しげな顔…ね、じょー子ちゃん。おねがい」


砂漠で与えられた一滴の水
ほんの少しだけの飴は欲を煽るだけで決して満たしてなどくれない。むしろこれなら一切与えられない方がはるかにマシだ。津波のように承太郎を飲み込んだ情欲はとっぷりと理性も何もかもを押し流してしまった。緑の目に涙をたたえて、はくはくと唇を動かした後、とうとう声帯が震えてしまった。


「…じょ、じょうこ、は……」

「じょー子ちゃんは?」


続きを促される。
ゆるゆるとご褒美のように与えられる快感に従ってしまう。犯し尽くされた肉体は精神より遥かに素直だった。ぷちゅ、くちゅと結合部から鳴る水音が恥ずかしい。カァっと血を登らせながら一番閉じてしまった唇を開いた。


「か、かわいいおんなのこ、です…おれを、み、見て…ッ〜〜〜〜〜も、やだぁっ…ん"ォ"ッ!!」

「ん、よくできたね。かわいい、かわいいじょー子ちゃん。ご褒美に奥、こちゅこちゅしてあげるッ」


ぐちゅっっっとねじ込まれる
間抜けな声が押し出され一層羞恥に震えた。見ている。名前でも、なんでもない赤の他人が、女が、メスにされる姿を見ている。視線を意識するだけでクラクラめまいがした。ぐぐぐっっと押し込まれ喉がひっくり返る。大きくストロークされること無く、ひたすらトントンと性感を高められる。じわじわと蜜が染み出すようにゆっくり、ゆっくりと高みに持ち上げられる。ドロドロとした快感が腹の底に溜まって、そして、


「ーーーーーーーーッツ!!! ひ、ォ、ぁああアアっっ!っひ、や、いってるッ!いっで、いってる"からァッツ!!」

「そーだね。もっとイッていいよッ、く、ぅ、」


噴き出した快感は全身を駆け巡りとどまる
抜けない絶頂。イッているのにまたイく。重なり合い強烈に共振する快感電流に震え、終わらない淫獄に泣く事しかできない。だらりと垂れるよだれもそのままに名前の首にかじりつく。ぐちりと最奥を鬼頭が押し上げさらにもう一段上の快感に流される。果てのない絶頂。足がつかない場所まで放り投げられ、もはや承太郎は外聞も矜持もなく泣きじゃくるしかなかった。










*************








「まだ居たのかよ、クソビッチ。あのディオだかディエゴだかいう金髪に追い出されたの?百面相してないで出てって欲しいんだけど」

「うっさいのよ。弟の部屋に来たらホモセックス見せられたお姉様の気持ちを考えなさい。あ、そうだホテル代出してくれる?アンタの所泊まろうと思ったけど嬌声で起こされそう」


ぐったりと失神した承太郎の上で交わされる会話
途中から見ていた美女と名前は目元がよく似ている。色々な液体で体を汚した名前は顎で財布を指すと承太郎の頬を撫でた。


「…ずいぶん気に入ってるのね。その子が本命?ってか他の子は当て馬なわけ」

「そ、ちゃんと割り切ってる子しか手だしてねーよ。じょー君さぁ、俺が外泊してくるとすっっごいそそる顔するんだよね。最高」


ニンマリと笑った名前
承太郎が起きていたら照れた後殴りかかって来そうなことを言う。そんな弟に呆れ顔でため息を吐き、苗字家の長女は言った。


「ほどほどにしときなさいよ。…にしても残念。アンタのじゃなきゃ手、出してたわ」

「やんねーよ。金髪兄弟には飽きたの?」

「んー、微妙?悪くはないんだけど二股かけてるのバレたらぎゃあぎゃあうるさくって…あーイイ男いないかしら…」

「なんでもいいけどじょー君起きる前に出てけよ。たっぷり甘やかさねーと、な…?」


捕食者の笑み
繋がったままの下半身からぐちっと音がする。些細な振動ではあったが悩ましげな吐息を吐いた承太郎が起きるのは遠くないだろう。ゆるゆると腰を動かし始めた愛弟を一瞥すると皮の財布からホテル代を抜き取り彼女は立ち去った。きっとこの後も『じょー君』とやらは泣かされるに違いない。それでも名前からは離れない。名前が決して逃してなどやらないだろう。アレはそう言う男だ。2人揃って苗字家に挨拶に来る日が楽しみだ。

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