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助けてとも痛いとも叫ばない彼女に腹が立つ。無理矢理ヤられてるのに、何も言わずただ自分を見つめる彼女が気持ち悪い。
「ばかだな」
その目を見るとそんなことを言われてる気がするから。
[chapter:きっかけ。]
立海裏掲示板。最近生徒達の間で噂になっている掲示板だ。公式ではなく、非公式。生徒や先生のプライベートが書かれたそれは学校という檻に入れられた子供達のストレス発散の場所だった。被害にあった生徒は泣き崩れ、蚊帳の外な生徒は笑いのネタにしていた。
見ていられないと思考を立ちきるように兼崎は竹刀を振った。
いまでは彼女が主将を勤める剣道部までもがその話題で一杯だ。正直あまりネットが好きではない兼崎は話の話題の半分もついていけない。生徒会長と言うことでブログをしているがあまり面白くないし、自分達を見る輩が何処に要るのだと彼女は思う。
その噂の立海裏掲示板のせいで部員たちが全く練習をしようとしなくなった。彼女がどれだけ怒号を飛ばそうが噂話を楽しむ彼女達は関係ないと言うように無視をし、定時になれば勝手に帰るのだ。
何なんだこれは。
これでは全国に行けるかどうかわからない
名門立海も地に堕ちたか。
ふと友人の言葉が過り小さく舌打ちをした。
堕ちた。確かにここは堕ち始めた。いつからだかこの学校がこんなに陰湿になったのは。私たちが一年の頃はこんなのではなかった。ぎりと竹刀を構えて振り上げるとキャー嘘ーと甲高い声が聴こえた。
「真田さんってそんなことしてんの?」
「そんな感じの顔だもんね〜」
「やっばーアソコガボガボなんじゃない?」
振り返ると校則違反の髪をした女子生徒達が自分の友人の名を呼んでいた。話しかけるのは癪だが友人の名が呼ばれたのが気になり側による。
「なんの話?」
振り向いた女子生徒達からの黄色い悲鳴に、兼崎は耳を塞いだ。
滝口は目を見開いた。なにそれなにこれ気持ち悪い。友人の、立海の制服を乱され、下着をずらされ白い液体を身体中に付け、全てを失った顔をした写真に、吐き気がした。
「真田さんって援交してたのかな?」
「乱交パーティーだって。真田さんヤリマン?」
んなわけないでしょう!と滝口は叫ぶ。クラスメートはご面倒謝り、でもねぇと声を揃えた。滝口は顔をしかめているとどないしたん?と声が聴こえた。
「どうしたん巴ちゃん」
「いや、その」
「真田さん乱交してんだって」
「は?」
声をかけた少女、小笠原は首をかしげて鈴のようにコロコロと笑った。
「げんちゃんがそんなこと出来る訳ないやん。げんちゃんがそういうのに疎いの知ってるやろ?」
「でもさぁ写真があるんだよねー」
女子生徒の一人が小笠原に写真を見せる。小笠原は一瞬目を見開いて、コラやろ。と言い切った。
「えー嘘だ〜」
「ほら、首の辺り変やろこんな風に普通は曲がらへんって」
コラだと言い切る小鹿に彼女達はそうかもと頷いた。真田がこんなことするはずないと思ったのか信じらんないと笑いながら教室から出ていった。
「本当に、コラなの?」
「・・・しらんやん。けどそういっとかなげんちゃんの立場悪なるやろ。」
小笠原の機転の早さに、滝口は開いた口が塞がらなかった。
自分の体の中に何かがあるのは気持ちが悪いと真田は実感する。ガクガクと何度も揺さぶられ吐き気を催した。
「真田さんの中、気持ちいいよ?」
「真田さん上手だね?本当に初めて?」
かけられる言葉が気持ち悪くて何にも頷けない。助けてほしいのに、誰も助けてくれない。柳も、柳生も、仁王も丸井も桑原も切原も。幸村も助けてくれない。誰も私を助けない。ぽっかりと穴が開いた気がした。自覚していた筈なのに。皆に嫌われてると分かっていたのに。開いた穴からドロドロと色んな物が吹き出してくる。絶望。絶望。絶望。絶望。誰も私を信じない助けない。
「・・・・」
気持ちの悪い熱を感じながら出ない声でここにいる筈がない、彼を呼んだ。