俺は幼い頃から箱の中だった。
生まれた時から病弱だった。
それが多々良瀬翔々の人生だった。


あまり動くことも出来ず、いつもベッドの上だった。
部屋にはベランダに続く大きなガラス張りのドアがある。陽の光が当たり輝く庭が好きだった。
庭にはいつも綺麗な花が咲いてさぁ。いつも母親が手入れをしてくれているその庭を、たまにベランダに出て眺めるんだ。

それでも俺の病弱さは和らぎはしなかった。
病院に連れていかれ、入院生活が始まったんだ。

彩のない白い部屋で、あの庭だって見えない。その代わりに天使を見たんだ。今思えばあれは死神だったかもしれないなぁ。
いっつも馬鹿みたいに笑っては面白い話を聞かせてくれたその子は"母親の庭"の次に知った"世界"だった。

「まあそれが鹿沼ちゃんなんだけどさぁ。」

「あれは天使とか死神っていうより地獄の権化だろ。」

テーブルを四人で囲い、昔話を(半ば強引に)喋らされた翔々はそう言いながら嶺に目線を送る。
一方の沼刃はそっぽを向きながら嶺を地獄の権化と比喩した。

「失礼ナ!ナースは白衣の天使なんだかラ!」

「そーだぞ!どうみても天使だろ!」

残り2名は地獄の権化という表現を否定。どこが可愛いここが可愛いと説明まで始めてしまった。

「っていうか翔々お前、嶺のこと好きだったの?」

「は?」

「過去形じゃなくて現在進行形だよ主。」

「は!?」

「なんで沼刃そんなに驚いてんだよ。どう考えてもあの話の流れはそうだっただろ。」

「意味わかんねぇ!あぁもう……一抜けだバカ!!部屋に戻る!!」

現在進行形で進む翔々の恋。その相手、当の本人はなんのことだか相変わらずのお花畑脳であった。
容量オーバーでパンクしてしまった沼刃は顔を真っ赤にして逃げるように部屋をあとにした。

(ライバル……ってやつじゃん!)
そんなことを一人思う沼刃なのであった。
back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -