町外れにある森の奥
深い深ーい霧の中には館があり
そこには世にも恐ろしいゾンビたちが住んでいると言います。
その館には決して近づいてはいけません。
うっかり足を踏み入れれば───

「とか言われてるみたいだぞ、ここ」

「まあ間違っちゃねぇけどな」

町外れの森の奥深い霧に包まれたこの館には四人の男女が住んでいる。

「というかなんでこんな不便なとこに住んでんのぉ?人間恐怖症?」

笑いながらそう言ったのは緑色の髪に白黒反転した目、不健康極まりない青白い肌の男、多々良瀬翔々。継ぎ接ぎだらけの体に枷をつけたゾンビである。

「人間恐怖症なのにゾンビは平気なのか?我らが主様はよ」

ジトーっとした目でそう言ったのはこれまたゾンビの伊住院沼刃。深い紫色の髪に真っ白な肌でパッと見は普通の人間だが、首元には大きな大きな縫い目をもつ男である。

「ご主人様は森ガ好きなンだよねー」

ふわふわとそんなことを言ったのはこの館の紅一点、3人目のゾンビ鹿沼嶺である。赤い髪に紫色の瞳、右目にはハートが浮かんでいる。顔には真一文字で縫い目がありバニーガールのような格好をした女の子である。

「人間恐怖症でもないし森が好きなわけでもなーい!!」

大声でそう言い放ったのはちょんちょんと跳ねた二つのアホ毛が特徴の男、空柴江。この館の主でありこの物語の主人公。ツギハギのないれっきとした生きた人間である。

「じゃあなんでこんな所に住んでんのぉ?」

「森の奥にひっそりと建つ館に従者を従えて住む……なんかかっこいいじゃん!そういうの!!雰囲気だよばか!」

「はぁ…やれやれこれは重症だ」

「重症患者ですカ!?私が診察すルー!!」


町外れの森の奥。ゾンビの館は今日も騒がしい。
back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -