「姫様!」
俺は自分のことのように嬉しくて、呼び出されたこともあるがすぐさま姫様のもとへと走った。緩む口元がおさえきれない。なんたって今日は姫様が初めて、城下町へと外出されるのだ。許可がおりたらしい
姫様のご様子を伺おうと部屋にたずねれば、姫様は顔を綻ばせた。やはり外出が嬉しいのだろう
「ジオ!」
「今日は外出ですね!何をされるんですか?」
「まずは色んなお店を見てまわりたいと思ってます」
子供特有のキラキラとした笑みを浮かべた姫様は、俺の手を握る。首をかしげた俺に姫様はまたも俺が困るようなことを言い出した
「一緒に行きませんか?」
いや、行きたい。超行きたい。休憩がてら姫様に美味しいケーキ屋も教えてやりたいし遊び場だってまわりたい。城から出たい。
しかし俺には城の警備やら鍛錬やらがあってそれは無理な話なので、姫様には申し訳ないが無理だといった。仕事があると。そしたら姫様は何かを思いついたとでも言うかのように、顔を明るくする
嫌な予感がした
「では、私がお父様に許可をもらってきましょう。それなら問題はないでしょう?」
「まぁ確かに問題はないんですけど・・・・・・許可がおりる可能性少ないですよきっと」
そもそもどうして兵士と姫様が一緒に出かけるような仲になってるんだと、周りは奇怪に思うだろう。でもお守りしてたら自然とそうなるのだから仕方がないといえば仕方がないのだ。たまたま姫様が俺を気に入ってくださっただけで、それ以上でもそれ以下でもない。
ただ、やはり自分でも姫様に近づきすぎだとは思う。なので断ろうかと悶々と考え込んでいたところで、インパさんがいらっしゃった。俺を見て姫様を見ると、ふむ、と顎に手を当てて、考える仕草をしはじめる
まずい。やはり姫様から離れるべきか
だがそう身構えている俺に、インパさんは手を元に戻して俺を見た
「ゼルダ様が一人の人間に懐かれることは非常に珍しいこと。とてもいいことだ」
「は、はぁ・・・・・・」
「どうせまた姫からお呼びがかかったんだろう」
まさに的中。俺はうっ、と言葉を詰まらせた。インパさんは笑う
「一緒に行ってきたらどうだ?姫の護衛として行けば問題はないだろう。ただし、私も一緒には行くが。お前だけではゼルダ姫が心配だ」
歓喜あまって顔が崩壊した。それぐらいに顔が緩むのがわかった。
姫様も姫様で喜んでおられるし、二人でハイタッチしてクスクスと声をもらした
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