掬う愛情 | ナノ
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▼ 03

ベビー用品を広げて正座する。さて、まずこの子はどこの子だろう


「さっそく詰んだし」


名前もわからなければどこの国の子かもわからない。だって金髪だし・・・明らかに日本人ではないだろう

しかも何といっても私の家に入ってきたこと自体がよくわかっていない。この子の親が入るには玄関はまず無理、勝手口も鍵は常に閉めている。よって無理。窓はさきほど確認したが、ちゃんと全部鍵は閉まっていた。そもそもリビングに篭るつもりでいた私がリビングの異変に気づかないはずがないのだ。ドアが開けば音がするし、人の気配がすれば水がすかさず見えなくとも吠えるだろう。

ますますわからない。どうやってこの子は現れたんだ・・・・どうでもいいけど、いや全然どうでもよくはないんだけど、ていうか重要なんだけど3DSもさっきから見つからないし


「(まさか・・・・)」


まぁちょっと落ち着こう自分。まずは最初から思い出せ。


私3DSでゼル伝をしようとして電源をつけた→しかし何故か画面真っ黒で止まる→私Bボタン連打+タッチしまくりの電源ボタン長時間長押し→強烈なフェイントフラッシュ


待て。むしろ思い出したことで余計に頭がこんがらがった。

どうしてDSがフラッシュしたんだ。なんで3DSが消えてる?私は手放しはしたが自分の傍からは動かしていない。フラッシュの後に赤ちゃんが部屋にいることに気づいたわけだけれど、それにしたってフラッシュの合間に部屋に赤ちゃんを置くことなんて難しいしそこまで長い時間、目を閉じていたわけではなかった

嫌な予感が頭をよぎる。


「待て待て、そうだな・・・・まずはゼル伝のリンクの特徴を思い出そう。なんだっけ?現実の私たちと違う場所・・・・そうだ、違うところを探そう」


まずは勇者ということ。

・・・・・・・・・これはあまりにも現実味が薄いので、バツ。じゃあ、緑のコキリの服・・・・は、この赤ちゃんはそもそも裸だったので比べようがない。だったら髪の色と目の色。確か金髪に蒼目だったはずだ。これは後々確認。

それから――


「耳」


私は64の時オカをしていて、城下町にいたそこらのモブキャラが「ハイリア人の耳がどうして大きいか知ってるか?神様の声を聞くためなんだぜ」的なことを言っていたことを今でも覚えている。あの時は思わずまじかよ、と突っ込んだ覚えがあった。神様の声聞けるなら神様が何考えてんのかくらいわかんだろ、リンクちょっと神様と意思疎通図ってみろよとぶつぶつ言っていたのも覚えている

・・・・・・・・・・耳、か

私は息を呑んだ。

そういえば、この子をまじまじと見たとは言っても、そんな耳の形まで気になんてしていなかった。気にしてられなかったと理由をつけたほうが正しいのだが、自分が落ち着きはじめている今、確認する以外の選択肢はないだろう

ぎゅっと一度目を閉じて、それから赤ちゃんの耳を見るべくパッと瞼を上げた


「・・・・・・・!」

「・・・・・・・・・・・ふ、」


ふぇぇええん!!

突然響いた泣き声に、私は頭を揺さぶられた

負けじと耳を確認すれば、なんというか予想通りというか、その・・・・・普通の形をしては、いない

とんがったような大きな耳。見たことがある。この耳の形は、昔、よく見ていた


私が、よく見ていた


「うそ、でしょ」


ありえないなんていわせないとでも言うように、蒼い瞳がこちらを向いている。私は涙を流しながら必死に声をあげている赤ちゃんに、どうもこうも思う暇もなく、つられて泣きそうになってしまった


どうしてこんなところに、なんでわたしのまえに、なかないでよおねがいだから

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