掬う愛情 | ナノ
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今日、初めて私のバク転バク宙が成功した。

リンクと喜び合って笑った

今日、初めてリンクと遠くまでドライブにでかけた。

車酔いしてしまったリンクは気持ち悪いだろうに、それでも「楽しい」といってくれた

今日、博物館に二人で行ってみた。

恐竜の化石や古代の生き物の復元されたCGをみていたリンクははしゃいでいた

今日、金魚が     していた。

リンクと仕方がないねって慰めあった。

今日 リ ンクの コップが 割れてしまった。

私は急いでリンクと買いに行った


そして、今日

今日 今日 今日は


「待ってよお母さん・・・・!!」

「リンク」

「怖い!怖いよ!お母さん助けて!!」


リンクが、居なくなってしまう日

リンクの誕生日。リンクが私の目の前に現れた日。子育てが始まった日。私の大切な、大切な日

リンクがこちらに向かって手を伸ばしても、リンクの手は私の手をすり抜けてしまう。どんどん光となって消えていってしまうリンクに私は成す術もなかった

必死になって、とてつもなく怖くて逃げ出そうとしているリンクは、私の手がつかめないとわかると途端に絶望をその顔に映す。あぁリンク。そんな顔するもんじゃないよ。するもんじゃないのに


「ばか!お母さんひどい!僕っ、僕信じてたのに!!」

「ごめんね、」

「おかあさんなんて死んでしまえばいいのに!!お母さんなんて泣いちゃえばいいのにっ、のに、・・・・・っぼく、ぼくは、ぼくはこうなっちゃうのに!お母さんは!助けてくれないんだ!!」

「リンク」

「ばか!死ね!うそつき!お母さんなんておかあさんじゃない・・・・!」

「リンク!」

「っ!?」


唇を噛み締めて涙を堪えていたのに、リンクのせいでそんな努力も無駄になってしまった

いくら死ねって言われたって傷つかなかった。いくら馬鹿って言われたって私は構わなかった。うそつきなのは本当だった

リンクが助けを求めているのに、私はどうしようもなかった


「馬鹿なのはリンクよこのアホ!忘れないでって言ったこともう忘れちゃったの?あんたのこと大切にしてること、どんなことがあっても覚えておいてねって、前に言ったじゃない!あぁリンクって本当に、お母さんの気持ちなんかわかってくれないのね!」

「・・・・・・だ、って」


わからなくて当然だし、それでもいいと思う


「ぼく、怖くて、怖くてしょうがないんだ・・・・」


お母さんと離れるのが怖いだなんて、子供らしくて最後の愛おしさと涙があふれ出てきた

リンク。貴方にあげたそのネックレスのことを忘れないで。私が一緒についていけない代わりにでも持っていてあげてよ。私だってリンクと一緒にいたいのに、そもそも最初から、私たちはこうなることが必然だった

怖いのは一緒。これから私は家で誰を相手に喋ればいいの。私はこれからいってらっしゃいもお帰りもいってもらえないのよ。アルバムを埋めてくれる人もいなくなって、虫網みだって家じゃリンク以外使わないでしょ?

ほら、やっぱり、置いていくのはリンクのほうじゃない


「リンク、ごめんね」

「お母さんなんて知らない!」

「10歳の誕生日、おめでとうリンク」

「なんで今それを言うの!?10才になったってもうお母さんはおめでとうも言ってくれなくなるじゃないか!」

「だから今言うのよリンク」


おめでとう、リンク。またいつかリンクに出会ったときは、とっても大きくなっちゃってるのかな

私が無理矢理笑って見せれば、リンクは顔をくしゃりと歪めて泣き叫んだ。嫌だって、置いていかないでって、暗いよって

こんな別れの仕方、あんまりだって思うかもしれないけれど、ばいばいなんて言う余裕は私たちにはなかった


「愛してるわ、リンク」


真っ白な額にキスを落とすと、リンクはそのまま姿を完全に消してしまった。最後に聞いた言葉でさえ、子供の悲痛な縋る泣き声だなんて。


(ねぇ こわくて くるしい たすけて )


おかあさん

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