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いつの間にかリンクが9歳を迎えていた。ちなみにバク転では飽き足らず受身や格闘技やバク宙まで完璧にこなしている。これは凄いとしか言いようがない
どんどん成長していくリンクに、もうすぐ別れの日が来るのかなぁとは思うものの悲しんでいる暇はない。水を撫でながら何か工作に励んでいるリンクに、大方作られるであろうものを予測する
「鳥の巣?」
「うん。このへんいっぱい鳥が飛んでるから、庭にも来てくれるといいなぁって」
それだと庭の掃除が大変そうだが、まぁいいか。鳥が庭にいるのも悪くはないだろう
しかしそう簡単に来るものでもないような気がする。気長に待てば来るのだろうか
不思議に思いながらもリンクを見れば、リンクはこちらに視線を向けた。そして唐突に質問を繰り返しはじめる
「どうして鳥はすぐに逃げちゃうの?」
「え、えー・・・・昔から人間が、鳥を捕まえたりしてたからじゃないかなぁ」
そんな質問をされても無知な私にはわからないものなのだが。急にどうしたんだとリンクの頭を撫でてあげれば、リンクは目を細めてしばらく黙り込んでしまった。しかし質問はまた再開する
「捕まえたら駄目?」
「駄目ってことはないと思うよ。ただ、捕まえちゃったら、いいことはあっても悪いこともあるってことなんじゃないかな」
「じゃあ逃がしたままでいいの?」
「時には必要なことかもしれないね。・・・・・・・本当、どうしたの、リンク」
「・・・・・・・・・・・・・・・・だったら、」
澄んだ青い瞳が私を捉えた
「羽を一枚だけもらうっていうのは、大丈夫かな」
それはとても純粋な疑問だった。羽を一枚、だけ。リンクは呟きながら私の腕を見る。どういう意図があるのか読み取れない私は、それでもリンクの考えはほんの少しだけわかった気がした
リンクの“羽を一枚だけもらう”は私から見て“羽を一枚だけむしり取る”という行為のことをいっているんだろう。別に恐ろしくなんかない。子供には案外ありがちなことだ。花を摘むって言ったって子供は千切るという行為をするし、それと同じことだろうと思う
私はリンクの白い頬を撫でる
「鳥がくれるっていうのならいいと思うよ。でもねリンク。鳥はリンクと言葉が通じないのはわかるでしょ?羽は落ちたものならくれるだろうけれど、ちゃんとまだ鳥さんが持ってるものはくれないよ」
「落ちたらいい?」
「落ちたらね」
「じゃあお母さんのものも落としたらくれる?」
「・・・・・・・・・・え?」
「もうずっと最近、怖い夢ばっかり見るんだ」
リンクは震えていた。目に涙を溜めて小さい唇を動かしながら、怖い夢というものがどんなものなのかを語る
どうやら私がこの家からいなくなる夢を見ているらしい
「お母さんが、家具以外全部もって出て行っちゃう夢見て」
「そうなの?」
「僕だけ置き去りにして消えてしまうんだ」
私がそれを聞いてどう思ったかなんて、きっと予想をすればわかるとは思うのだけれど
「お母さんはあんたにあげるものも見せるものも残すものもないって、怒るんだ」
「勝手に生きて勝手に死ねって、何回も言われて」
「あげるものも残すものもないって言われたとき、どうしても悲しくて寂しくて、僕、息できなくて」
「苦しかったのに。息できなくて苦しくて、床に僕が倒れたってお母さんはこっちを向いてはくれなかった」
どうでもいいって思ってる。僕は違うの。お母さんと僕は違うの?
「どうしてそういうこと言うのって聞いたら、」
お前は私の子じゃないんだよって、笑いながら言うんだ
私は絶句して、見開いた目から涙が頬を伝い落ちるのも構わずに、小さなリンクの頭を見下ろした
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