掬う愛情 | ナノ
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「そうだ!リンクはもう五歳なのよね。それなら七五三に行ってみたら?丁度神社はお祭りがあってるし、いいかもしれないわよ」


そうか。三歳のときはそういえば行ってなかったか

私は一人納得してから母の言葉に賛成の意を示した。今日は仕事も休みだし丁度いい。家でだらだらしているよりも、リンクにお祭りを体験させたほうがいいだろう。五歳だったら色んな経験が必要な歳だからなぁ

言葉の意味も大概理解して喋ってしたいことを活発にしはじめる歳だし


「リンク、今日はお祭りに行こうか」

「おまつり?おまつりって、金魚さんがいるところ?」

「そうそう。よく覚えてたねぇ」


実はこの前テレビで一回見たのだ。確か誰が一番金魚を掬えるかという勝負で盛り上がっていた番組だったような気がする

着物をレンタルしに行くことを考えながらリンクを見ていると、リンクは首をかしげた。綺麗な金髪がさらさらと揺れる

もう、五歳なのだ、リンクは

私の世界に突如として現れてからもう五年。その月日は数えれば長いものだったが、実際にリンクと時を過ごしていた私からしてみればとても短かったもののように思える。今では我が子だと絶対に言い切れる自身があるほどリンクを育ててきた私にとって、リンクの成長はとても嬉しいものだったし、初めて言葉を喋ったときも、初めて立ったときも、初めて寝転んだ状態から自分でうつ伏せになれるようになったときも、私は今でもずっと鮮明に覚えている

アルバムだってまだ五歳だというのにもう一冊埋まってしまった。あの分厚いアルバムが写真だらけになっていくたびに頬が緩むのは仕方がないと思うんだ

また新しいアルバムを購入しなければ。

いつか自分のいるべき場所へ戻ってしまうのだろうリンクを、少しでも覚えていられるように

・・・・・・そりゃあ、我がままを言ってしまえばリンクには戻ってほしくはないのだけれど。子供が突如として消えるのと同じなのだから、当たり前だ。けれどリンクは勇者となる人物だから

そうとはわかってはいても、自分の子供だと思ってしまえばそれまでだった

愛おしくて仕方がない子になってしまうのだ。

たとえ自分のお腹で人の形をつくったわけではなくとも、私が産んだわけではなくとも、血なんか繋がっていなくたって私はリンクの母親であり家族である。せめてリンクが私のことを覚えたまま元の世界に帰って欲しい。貴方にはちゃんと育ててくれた人間がいるのだということを思い出してほしい

だって、子供で、親がいないなんて思ってしまうのは悲しいことだもの。コキリの子供たちはそれが当たり前なのかもしれないけれど、リンクは違うもの。母親の暖かさというものを私は知っているから、リンクにもそれを分け与えてあげたいと強く思っている

未練がましい女だって言えばいい。お前の子供じゃないんだぞって言われたって私は反抗する。それくらいリンクは私の愛しい子で、そんな子供に私のことを忘れてほしくなんてなかった


「七五三っていうお祭りなんだ。リンクの成長を祝うために行かなきゃね」

「しちごさん・・・・?」

「そのうちわかるよ」


恐らくリンクがストーリーで旅に出るそのとき、リンクは戻されるのだろう。確信できる証拠なんて何一つないのにリンクが戻るとわかっているのは、どうしてだろうか。それが運命だって勘付いているのだろうか

どうしようもなく寂しくなったけれど、彼が旅に出てちゃんとガノンドロフを倒せるように強い子に育てるのが私の役目だと思った


「リンクは今以上に強くなって、いろんな人に笑顔をあげるのよ」

「あげる?」

「そうなの」


あぁ、少しでもいいから、貴方の勇士が見られたらなんて。今から感傷的になったって意味なんかないのに

泣きそうになった私の頬に暖かい小さな手のひらが当てられた


(どうしておかあさん、)

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