花は君に根をはる | ナノ
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 07



カカリコ村ではリンクがサリアの歌を吹いていた。たまにピュイッとおもちも歌うように鳴いて夜までの時間を過ごす。

おもちは勝利のファンファーレとはとの歌を歌うことが出来るけれど、この世界に来てからは一度も聴いていないような気がした。今度強請ってみようか。気分によっては歌ってくれるかもしれない

テンポのいいリズムを体を揺らしながら刻む。リンクのオカリナはプロ並の上手さだ。私はオカリナの曲なんて実際に聴いたこともないしオカリナを見たこともなかったけれど、でもこれだけは言える。だって私が吹いてもしょぼい音しか出ないくせに、リンクが吹くと綺麗でちゃんと響くような音になるんだ。解せぬ。

しかもこのオカリナがまた凄い

あらしのうたとやらを吹けば雨がバケツをひっくり返したように降り出して雷まで鳴るし、逆に太陽の歌を吹けば空はあっという間に晴れる。エポナの歌というのを吹けばエポナが来るのだ。他にもカカシや瞬間移動できる歌なんかがあったけれど、それはまた今度聴かせてくれるらしい。さすがにカカシが目の前に生えてきたときは心臓が飛び出るかと思った。

リンクが只者ではないということはそれだけでわかったけれど、でも今の私には面倒を見てくれている人間以上でも以下でもない。そもそもこの世界のことをよく知らないのに「この人は凄いのよ」とかその世界基準で凄い人を間近で見たって、実感が沸かないのは当たり前だ。オカリナは凄いけど。リンクは別に、そこまでないと思う。

強いて言うならイケメンなので、少し、いや結構傍にいて辛いものがあるけれども。

あとは力が強い(確信)


「そういえばナビィちゃんて、どんな顔してるの?」

「え?顔・・・・・・・?・・・・・発光してるけど」

「発光!?」


顔面光ってんの!?

一瞬で首から上が光っている女の子を想像してびびる。いや、光ってるって。光ってたら顔見れないんじゃ

そこまで考えている私を放置してリンクは言葉を続ける


「いや、でもあれは顔っていうか体かな。うん。光る球体みたいな体してるんだ。それで羽が生えてる」


球体みたいな体・・・・・?ま、丸いってことか。それはあの、ふくよか的な意味?それともマジで球体みたいな?しかも羽が生えてるとな

ボールから手足が生えたような人間に羽が生えてるのを想像できる私も私だけど、リンクの仲間も仲間だ。つーかバランス的に歩けるのか怪しい。羽があるってことはその体で飛ぶ・・・・のか?そもそも何で光ってんの。何が、ていうか何の体内分子が発光してるの?うまく思考を纏めて割りとまともでマシなものを出すとしてもホタルぐらいしか浮かばないのが私の頭である(結局虫だし)

体光ってたら歩いてるだけで目立つんじゃ。何それ怖い。隣を光る丸いボール人間が歩いてるとか慣れても嫌だ


「なんか凄い想像してるみたいだからストップかけるけど、僕が言ってるのは人間じゃなくて妖精のことだよ」

「よ、妖精?な・・・・・・・・・・なーんだ!そうならそうと早く言ってよねもう。変な想像しちゃったじゃん!あ、ちなみに想像したやつ紙に描いてみようか?」

「いや気持ち悪そうだから遠慮する」

「ひでぇ」


言ったのはリンクなのに。でも妖精さんか。そうか。そういわれると光る球体に羽っていうのは想像がつきやすい。色は青だという。


「でもリンク、妖精が相棒だなんて随分とファンシーな相棒いるんだね」


私は割りと大丈夫だよそういうの。さすがに「妖精さんとお茶会するのうふふ」とか言われた日にはちょっと、というか結構頭の中のほうを疑うけれど。


「そうでもないよ。コキリ族の子供はみんな一人に一匹妖精がパートナーとしてついてたからね」

「そうなんだねぇ」


でもリンクはコキリ族じゃないんだよね、なんて、そこまで言うのはさすがにどこか突っ込んじゃいけないところまで行くのかと思って、やめた。人の踏み込まれたくないところっていうのは分かりづらいから怖い

私の世界には妖精なんて目に見えるのはいないけどなぁって言ったら、リンクは「寂しい世界だね」って笑うでもなくそういった。そうかもしれないと、今の私なら思うのだ。まだ数日しかこの世界にはいないけれど、きっと私は大切なおもちがいなければもっと寂しい思いをしていたと思うし、それを同じようなことなんだろう


「旅を一緒にしてるから、旅の話だって思い出話にするならナビィとしか出来ないだろ?僕はそれが嫌だから世界を歩き回ってるんだよ」

「妖精さん話せるのか・・・・・ハイスペックだな・・・・・リンクは案外寂しがりなんだね」


そうかな。そうかも。

だって妖精一匹のために世界中を歩き回るって、相当じゃない。私にはわからない関係がリンクたちにはあるのかもしれないけれど、それは今の私ではわからないことだし、これから先もずっとそうなのかもしれないことだから、深くは考えないことにした