04
口を大きく開いた植物が、茎ごと千切れて追いかけてきた。
「ひぎっ・・・・・!?」
思わず変な悲鳴が出るくらいには、その光景は異様なものだった。
そもそも魔物という存在の話を聞いてはいたが、この一週間私は一度だってその姿を目にしたことがなかったのだ。そりゃあ驚きもするし吐きそうにもなるし、何より普通に、人間らしく多大な恐怖が私を襲った
足が竦むなんてことはない。即座にリターンしてダッシュでリンクの元へと戻る
むしろ逃げ足は今なら世界一の陸上選手にだって負けないスピードだった
「リンクぅぅうう!!」
「!」
ところでどうしてリンクから私が離れていたのかといえば、私は食材探しをしていた。何が食べれるかなんて全然わからないから、とりあえずリンクに食べられるんじゃねこれ?と思ったものを持ってこいといわれていたのだ。言ってもいいだろうか。私、前の世界で水色やら赤色のきのこなんて見たことがなかった。あれは食べられそうな部類になるのだろうか
一応持ってきたけどどうなんだろう
おもちが真っ先にエポナの背中まで逃げたことに「薄情者め!」と吐き捨てて私も剣を取り出したリンクを盾に、動く植物を睨みつけた
「せいっ」
真っ二つに斬られてしまった魔物は、プシュウと音を立てて消えてしまう。リンクが剣と盾を持っていたからまさかとは思ったが、ここまであっけなく魔物を倒してしまうとは思わなかった。思わず拍手をすれば、リンクは驚いたように私を見る。え、何
「あ、手の音がうるさかった?ごめんよリンク」
「えっ、あ、いや・・・・・そうじゃないんだけど」
「?」
「・・・・・・・・・・・なんでもない・・・・・・って、何それ」
「きのこ」
「明らかに毒あるじゃないか」
「いやでも、この世界では食べられるのかなって!ほらほら、実は薬とかによく使うきのこだったりするじゃんこういうの!」
「ないから今すぐ捨てよう。触ったら手が爛れるってこともあるかもしれないんだよ?」
光の速さできのこを地面にたたきつけた。
「うーん・・・・・・あ、この植物。これは食べられるから、ムメイはこれとこれを探してきてくれる?」
「任せろといいたいところ」
「怖いの?」
「あったりまえじゃん!?むしろこれで怖くないっていうほうがおかしいじゃん!?」
初めてあんなきんもち悪い魔物とやらに追いかけられて、一人で森を歩くのがトラウマにならないわけがないよ。いやさほど、泣き叫ぶほどトラウマになってるわけではないのだけれど、出来れば今は避けたい。30分くらい待ってほしい。気持ちの準備するから
「でも心配しないでね。ちゃんと探してはくるから。ちょっと休憩させて」
「別にいいけど、無理しなくていいんだよ?」
「いや、無理しないとリンクの食料がないじゃない。私はまだしも、リンクは男なんだしさ。食べる量だって私より多いはずだから」
「そうなの?男のほうが多いんだ」
「あれ?普通そうでしょ?」
「僕は間近で女の子の食べる量を見てきたわけじゃないから、わからないなぁ」
「そっかぁ。でもそんなもんだよ。体のつくりとか、そういうのが関係しててね、特に男の子の成長期なんかはたくさん食べる時期だからね」
「だから僕も、食料を多く減らしてはナビィに怒られてたのか」
「そうなんじゃない?ナビィちゃんは旅の仲間だった人?」
「うん。そうだよ」
「だったら怒るかもね。旅は食料がこんなに大切なものなんだし」
でも成長することは大切だから、食べなきゃ駄目だったんだよ、リンク。
リンクは何故か眉間を寄せて、目を伏せた
しかし私が盛大に木の根につまづいて顔面ダイブしたことによって、リンクは呆れながらも私を起き上がらせては手当てをする羽目になる
いやいや、なんでこんなところに根なんか浮き出てんの?馬鹿なの?こんなところに根はってたら人が躓くじゃない!・・・・・・・・あ、でもよくよく考えたらこんなところに人なんてあんまり来ないか・・・・・・・