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「ダークリンク」


名前を呼ばれても振り返ることなど全くしない黒尽くめの男に、ゼルダはもう一度名前を呼んだ。数人の兵士を引き連れてハイリア湖へと訪れたハイラルの王女は弓矢を片手に歩み寄る


「ダークリンク」

「気安く呼ぶな」

「そんな態度をとってもいいとお思いですか?怖いもの知らずと馬鹿は違うといいますが」

「てめぇ・・・・・・・何しに来た」


ダークはイライラしていた。リンクに巻き込まれたこともそうだが第一はこのハイラルの王女であるゼルダにある。他人の領域にズカズカと入り込んでくるその心意気が全く持って気に食わないしうざったらしいからだ

いつ見ても凛としたその姿には怒りしか沸いてこない。実際には見たことはないが。

ダークは、リンクと記憶を共有することが出来る。

あまりそれはしないが、こいつのことは数回顔を見たことがあった。最後に見たのはリンクが過去に戻されたときのゼルダだった気がする


「ムメイ、という女性を知りませんか?」

「知らねぇ」

「嘘はいけません」

「俺がお前に嘘吐いてどうすんだ。なんの利益も得もねぇだろうが。わかったらさっさと帰れよ」

「いいえ、知っているはずです。前にムメイという女性がハイリア湖へ足を踏み入れたとの情報がありました。リンクのことです。大切な片割れである貴方に女性を会わせていることでしょう」

「残念だが俺はあいつの片割れじゃないしただの影だ。ムメイだかなんだか知らねぇが女なんて最近はめっきり見てねぇぞ」


あくまでもシラを切るつもりだった。ダークはハイリア湖から出来れば出て行きたくなどなかったし、逃げ出したくもなかったからだ。自分の居場所は生まれたときからここであったから、意地でも動きたくはない

しかし状況が危うくなればそれも我慢せねばなるまいと、ダークは胡坐をかいたまま足に肘を乗せてゼルダを見上げた


「庇い立てする必要はありません。あの女性は必ずこの私が、無事にもとの世界へ帰すと約束致しましょう」

「さっぱりだな。お前何を言ってる。もとの世界?帰す?なんだそれは。知らねぇ女をどう庇い立てしろっつーんだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


ゼルダは酷く冷めた顔をしている。ダークはあくびを一つ零しては寝てしまいたいのを我慢した。大体今何時だと思ってんだこいつらは。夜中だぞ。12時過ぎてんだよ。こちとら寝る時間だぞ

一人そんなことを考えていると、俺も大分大人しくなったもんだと思う。リンクと初めて会ったときは命令されたとおり殺そうとしたし、そのあともリンクが会いにくる度に襲い掛かっていたような気がする。今じゃあそれも考えられないが。

記憶を共有していれば少なからずもあいつの感情や感じたことがこちらに流れてくることがあるのだ。今更あんなボロボロになってるやつと戦いてぇなんてこれっぽっちも思わねぇしもう戦う気力も残ってすらいない。魔物としてどうなんだと言われればそこまでだが、ぶっちゃけダークはゾーラ族やゴロン族なんかよりも人間に近い気がしてならなかった。

ゼルダはそんな俺をよく思ってはいないだろう。

愛してるんだかなんだか知らんが大好きな男のコピーがいるのだ。俺は邪魔な存在だろう。今ここで素直にムメイのことを言ったって攻撃されるのは目に見えている。だったら言わないほうがいいだろう。

あいつに情けをかけてしまうぐらいには、俺にも良心やそういったものが芽生えていたということだ


「私を誤魔化しますか」

「俺は嘘は言ってねぇ」

「あくまでもそれを貫き通すのですね・・・・」


変なところで鋭く勘がいい女だ。忌々しい。さっさとどっかの王子のもとへ嫁ぐなりなんなりしてリンクを綺麗さっぱり忘れてしまえばいいのにと思う。そうすれば俺もムメイも巻き込まれたりなんかしないのだ。しつこい女は嫌われるとどこかで聞いたことがあった

こいつが正にそうだな。人間もよく言ったものだ


「仕方がありません・・・あまりこういったことはしたくないのですが」

「あぁ。お前こそ嘘吐きだな。本当なら高笑いでもしてぇ気分だろ。俺を殺すのがそんなに楽しみだったのか」


笑いが隠しきれてねぇぞ。そう言ったと同時にゼルダの光の矢がダークの肩を貫いた



(避けられたはずなのに避けなかったところがゼルダの癪に障って、湖に勢いよく落ちてしまった彼を睨みつけた)