花は君に根をはる | ナノ
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どうしようか。私もそこまで料理してたわけじゃないし、お母さんに少し教えてもらったものが数品あるくらいでそれ以外はさっぱりだ。お菓子もクッキーとケーキしか作れないし。あ、いや兄弟がアップルパイを作っていたところは見ていたから、勘でなんとかそれは作れるかも。ううん、でもオーブンとか電子レンジとかそんなものこの世界にはないしなぁ

うんうん悩みながら鍋をかき混ぜて、明日は何をつくればいいんだろうと考える。どんだけ簡単でも味がよければいいと思うんだよね。サンドイッチなんてどうだろう。我ながら提案しておいてなんだけど本当手抜きだな。

でもリンクはどれも全部美味しいって言ってくれるし、この世界の食材と調理器具や環境を考えれば私が作れるものなんてたかがしれている

リンクと旅を始めて早一ヶ月が過ぎようとしていた。私は今日もおたまを手に鍋の様子を見つめている

すごいよね。前の世界じゃおたま持つのなんてたぶん二日に一回あればいいようなもんだよ。お母さんになるとこんな感じなのかなぁ。一人暮らしだと私は自炊しなさそうだし、きっとそんな感じなんだろうなー

メシマズとか言って、お母さんに悪いことしてたな私・・・・・(ただメシマズは冗談であって本気ではなかったけれど)

お母さんの料理って見た目凄く茶色なんだけど、味は美味しかったよ・・・でもどっちかっていうとお菓子作りのほうがお母さんは得意だったかな


「リンクのお母さんはどんな人?」

「うーん、たぶん優しい人だったんじゃないかなぁ」

「えっ、覚えてない?」

「僕が物心ついたときにはいなかったしね。でも戦争があってる中、僕を守ってくれてたってことはきっと、少なくとも子供想いな母親だったと思うよ」

「は?戦争?」

「今じゃ考えられないだろうけどね」

「そっか・・・・・・」


戦争か・・・・そういえば魔物のこと以外平和すぎて忘れてたけど、人間同士の争いがないとは限らないんだよなぁ。日本じゃあるまいし。

私は一度もそんな体験したことがないからよくわからないが、少しだけなら想像ぐらいはできる。どっちかっていうと西洋だから100年戦争的な感じかな


「戦争といえばさぁ。リンクは鉄砲とかは使わないの?あったら便利だと思うけど・・・・・・命中率とかが悪いわけではないしさ」

「僕はいらないよ。弓矢があるし」

「やっぱり弓矢のほうがいいか」

「鉄砲は音がうるさくて魔物相手じゃ使えないからさ。ただの戦とかになら使えるだろうけど」


確かに。それはいえてるかもしれない

魔物だって体力のあるやつは一発じゃ死なないから、使い慣れてて音の静かな弓矢のほうがいいのは頷ける。リンクが鉄砲っていうのもなんだかイメージがつきにくいし・・・・そもそも鉄砲を使うとしたら弾が結構必要になるんじゃないかな

矢筒みたいなのがあればいいけど、ないだろうしなー


「ううん。やっぱり私の世界とは違うところたくさんあるねぇ。なんだか新鮮でいいや。あーでもこの世界にいたら、前の世界の空気なんて吸えたもんじゃないかも」

「そう?空気がそんなに違う?」

「大分違うね。ここのほうが澄んでて気持ちが落ち着く」


パンを千切ってリンクに渡す。リンクはパンを受け取るとすぐさま口に放り込んだ。お腹空いていたのだろうか

おもちにも少し与えて、私も一口手でむしってパンを食べた。パンだってこの世界のほうが心なしか美味しい気がするなぁ。やっぱり家電製品をつかったパンとは違うんだろうか。生活を考えるなら、私はこの世界でのほうが生きやすいのかもしれない

おもちがハトの歌を歌っているのに耳を傾けて、お椀にスープを注ぐ。それをまたリンクに渡すと、リンクはこれまた素早く受け取ってスープを飲んでいた。やはりお腹が空いていたのだろう


「きっとリンクが私の世界に来たら、においも空気も汚くて死ぬんじゃない?」

「ぶふぁっ!」

「うわ大丈夫!?タオル!タオルはどこだ!」

「いや・・・・・ごほっ、死ぬって・・・・」

「マジだって。本当だよ?死ぬまではなくとも生き辛いことこの上ないと思うよ」


タオルをリンクに渡して、咽た衝動でお椀からスープが零れたのを見ていた私はお椀にスープを注ぎ足す

空気で死ぬ発言が衝撃的だったのかリンクはまだ咽ている。変なところにスープが入っちゃったんだろうなぁ


「どんなところで生きてたのムメイ・・・・」

「アスファルト地獄の世界」


私が住んでたところは山のふもとだし徒歩1km圏内にコンビニがないくらい田舎だったけど、それでも空気というものはこの世界に比べたらまるで生ゴミのようだった。排気ガスとかやばいからね私の世界

ついでにハイラル城ぐらいに高い建物もたくさん建ってる場所があったよ、といえば、リンクはまたあまりの衝撃に咽ていた。今度は噴出さなかった。