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建物の屋根という屋根をジャンプして、ものの数分で私の家にたどり着くと、たまたま買い物にでかけようとする母とかちあった。母は私ではなくジェノス君を見た途端に笑顔になる。おい愛しの娘のことは眼中にないのかよ。

とりあえず挨拶をしあってから、母とおかえりただいまのやりとりをして、たずねる。


「お母さん、買い物?昨日行ってなかったっけ」

「やーねぇ、ちょっとお米買うの忘れちゃってて!今日のお昼分まではあったからいいんだけど、晩御飯にないのは辛いでしょ?」

「ううん、確かに。・・・・・・?あ、もしかしてお米だけ?」

「そうよ?お肉もお野菜も、昨日ちゃんと買ってるから・・・・」

「じゃあお金だけ渡してくれたら買いに行ってくるよ!10kgのやつでしょ?いつものでいい?」


わが母はまさか、この家からスーパーまでの距離を10kgの米を抱えて帰るつもりだったのだろうか?さすがにそんなことさせられないわ。いやいや、まじで。若いわけじゃないんだから、そんな無理しようとしないでほしい

そう思いながらも、なんとか母を言いくるめてお金をもらった。

一応制服から私服に着替えるために、いったん自分の部屋へと戻ってジャージで外へと出る。ジェノス君はわたしをみてから、なんともないようにこう言った。


「俺だけが行けば早いんじゃないか?」

「絶対!やだ!」

「?」

「ジェノス君一人にしてたら、いつどこで化け物に絡まれるかわかったもんじゃないもの」


ついでにこの化け物とは、ファンである人達のことも含めて言っている。純粋にジェノス君に握手を求めるだけならいいのだが、しつこい連中は本当にしつこいのだ。あれは殺虫剤でもまいたらどうにかなるのかなって最近考え始めてる。

特にケバいお姉さん方はしつこい気がする。あくまでも偏見ですお気になさらず。

というか、ファンが集って足止めされるのがジェノス君だけだったらいいんだけど、二人で行動しないといけないときにそんなことされると、私は手持無沙汰じょうたいになり、上手いことジェノス君を置いて動くことができなくなるのであまり好かない。

ジェノス君を人だかりの中に置いて行ってもいいのなら構わず私は無視するし。


「それに、ジェノス君一人だけを買い物に行かせるとか、さすがにないわ。うちの家の買い物なわけだし。本来ならジェノス君は関係ないんだからさ。あ、なんだったらうちの家でくつろいでる?」

「・・・・・いや、着いて行く。お前の腕に10sの米は重たいだろう」

「そこまでやわじゃない」

「お前はそこまで強くない」

「でもさすがに申し訳ないと言いますか!」

「今更遠慮か?気色悪いな」

「んだとゴラァ!?だったら一生米抱えてろバーカボーケ!」


その意外と悪い口ってどうにかならんのですかジェノス君。いや私もか?

そして当然のごとく早くしないといけないからと、私をわきに抱え込むあたりがなんていうかね、もう君らしいよ。お姫様だっことかなんでしてくれないんだろうね?私ってそんなに荷物なのかなぁ・・・・・・荷物、なんだろうなあ・・・・

しんみりとそう考えながら、今更ジェノス君に私重たいでしょとか、重たいから歩くよとか、そういった言葉はもう出てこなかった。そんなのは最初だけで、かれは片手で大型トラックを軽々と持ち上げるほどの怪力なので、そんな気遣いをするだけ無駄だということを知っていた。なので乙女が口にするようなことは言えない。

言ったところでどんな反応が返ってくると思う?


「お前が重いのなら最初からこんなことはしない」


って私にとっては微妙にときめくようなことを言われるので(体験済み)、無駄に恥ずかしい言葉を聞くよりは黙っておいたほうがいい。もうやだこのイケメン。ただやっぱり横抱きのほうが私にとっては苦しくないから、そっちのほうがいいかなあ!