人に好かれるのは気分がいい。頼み込めばなんでも言うことを聞いてくれるし、困ったことがあっても誰かが絶対に助けてくれる。ただしそれは異性に限るけれど。
私はなぜか、小さいころから男の子に好かれることが多かった。多かったというか、もはやそれが当たり前であるかのように、周りの男の子は私に好意を寄せてくれるのだ。物心ついたときからそうだった。だから女の子に妬まれることも多かったし、虐められることもあった。
だがそういうときは決まって男の子が助けてくれるし、遊び相手も、その男の子たちがやってくれるから、私は別に嫌だとは思わなかった。ほかの女なんてどうでもいい。どれだけ女の子が喚こうが涙を流そうが、私のほうがかわいいのは事実だったから。私だけが愛されているのは現実で、事実で、真実だったから。
醜く嫉妬する様はむしろ笑いが出るだけだ。なぜそれを他の女の子はわからないのだろう?
性格が悪いことは重々承知しているつもりだ。けれども勝手に男が来るのだから私に非はないでしょう?
そういって心の中で見下していた。自分が一番可愛くて、愛される。当たり前だった。だって、物心ついたときにはそうだったから。小さいころから友達であったシルヴィの好きな男の子もたちまち私の虜になった。あの時のシルヴィのショックな顔は今思い出しても傑作だ。
まあ、面白くないことに、彼女は何度目かで慣れたのか、そんなに大きなリアクションをすることもなくなったが。
しかし彼女の隣は気が楽だ。彼女は私がどれだけ男の子を虜にしようが、私がどれだけ好きに男の子を扱おうが、なんだろうが、口出しを全くといっていいほどしない。あくまでも友人であろうとしてくれる。そこは彼女の気が利く点であって、いいところであった。
少し前までは。
少し前までは、彼女のことは割と好意的に見ていたのだが。
「ジェノスさんとは、仲が良いんだね?」
「え?うん。小さいころから知ってるからね。親同士が仲よかったから」
「いいなあ。わたしもジェノスさんとお話してみたいな・・・・」
「病院でちょっと話したじゃん。あんな感じだよずっと。愛想なんてないからね」
今まで彼女の近くにいた男は私のことを好きになった。自然な流れでそうなってきた。だというのに、あのS級ヒーローであるジェノスさんは違ったのだ。
おそらくサイボーグだからというのもあるし、生身ではないから、私のこの体質が効かないというのはあるだろう。にしても私のほうが顔はいいのだし、男なら少しくらい目をこちらに向けてもいいと思う。どんなイケメンでも私のことを好きになってくれたのに、あのサイボーグはならなかったのだ。
なんだか腹が立ってしょうがない。
思い通りにいかないとこんなにもイライラするのかと思うくらい、イラッとした。病室での時もそうだが、あのサイボーグはシルヴィしか眼中にない。ずっと目で追っているしシルヴィ以外の人間とは必要最低限の会話しかしないのだ。私とシルヴィが一緒に居ても、あのサイボーグはシルヴィにだけ視線を合わせて会話するし、シルヴィにだけボディタッチをする。
初めてだった。こんなにないがしろにされるとは。しかもシルヴィに負けるなんて!
本当にイライラして、疑問ばかりが頭を埋め尽くす。どうして?なぜ私ではないの?サイボーグだからなの?でも心はあるじゃない!
「今度、ちゃんとジェノスさんのこと、紹介してね」
「いいよ!一緒にごはんにでも行こう。ジェノス君誘ってみるね〜」
どこに行く?何食べたい?と尋ねてくるシルヴィに「なんでもいいよ」と答えると、余計に悩み始めた。
なぜそんなに余裕そうなのかしら?今までさんざん、好きな男を私に取られているというのに。
「ジェノス君にきいてもいいんだけど、あの人本当になんでもいいとしか言わないからさあ。参考にならなんだよね」
「そうなの?」
「うん。ふたりで食べに行くときは私が好きなところに行くし、ジェノス君の師匠さんと三人でご飯に行くと大体その師匠の言う通りになる」
優先順位では一番上ではないのか、シルヴィは。
けれども、やはりイライラする