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私が倒した怪人は割と大きかったので、本当はC級ヒーローではなくてB級かA級が倒すべきやつだったらしいのだけれど、C級の私が倒したことによって大々的にニュースで報道されていた。

私の顔はおかめの面をつけているものがテレビでは使用されていたので、顔バレはしていない。画面右上に『またもやおかめヒーロー!何故B級に昇格しないのか!?』という題がでっかく出ているのを見て、少し苦笑した。別に私はランクを上げたくて大きな怪人を倒しているわけではない。

お金がほしいからヒーローをしているだけであって。B級に上がってしまえば緊急招集がかかることもしばしばあるらしいので、それが嫌だからならないのだ。よく聞かれる、なぜ仮面をしているのかというのは、学生生活に支障がないように仮面はしているわけだし、今回も報道陣は私の顔を確かめようとムービーやらなんやらで何度も確認したらしいのだけれど、運よくカメラに顔は映っていなかったようだった。

あぶねぇ顔バレなくてよかった。

バレたらバレたでいろいろと面倒くさそうだし、お前なんかがヒーローとかマジない、みたいなことを言われた日にはたぶんプッチーンと来てそいつを滅多打ちにしてしまうだろうから、そもそもが私がヒーローだということをかくしてしまえばいいのだ。それに、公にできるほど強いわけでもないのだから。


「いやだから、あの時はジェノスさんがたまたますぐ来てくださったから倒せたのであって・・・・テレビで報道されてるやつは私が敵を仕留めたところまでは映ってないですよ?・・・・はい、確証はないでしょう。私が倒しただなんて、そんなこと」


本部からの連絡に対応しながら、ジェノス君に任された買い出しに出かける。渡されたメモを見つめながら政府の人間の言葉に相槌をうち、思考していると、そういえば、と思い出す。

私の家のほうもタマゴがなかったな。買っていくか。

何度か適当に返事して電話を切ると、目の前からなんだか見たことのある人物がこちらへと近づいてきた。おじいさんだ。誰だったかなぁ・・・・・


「おぉ、お前さん、ヒーローのおかめじゃろう」

「は?」


あまりに突然だったので、ぽかん、と口を開いたまま固まった。メモを落としそうになって慌てて手に力をいれる。

誰だこいつ。どこかで見たんだよな、と頭をフル回転させて思い出そうと必死になった。


「あ、あ〜・・・・えっと、シルバー・・・・ダック・・・・」

「シルバーファングじゃ」

「おぉ、あ、シルバーファングさん」


うわあああめっちゃ失礼な間違いしちゃった!!なんだよ銀色鴨て!

妙に焦ってやっちまったー!と冷や汗を流していると、シルバーファングさんはとても優しい方で、それを許してくれた。よかった。ここでボロボロにやられても何にも文句言えないくらい失礼なことしたから・・・・

S級と言われてビクビクしていれば、シルバーファングさんは笑う。


「まぁそう怯えんでもいいじゃろ」

「すいません、S級だってきくと、つい」

「うん?おぬし、あのジェノス君とは仲が良かったじゃろう」

「あいつは友達なのでS級とか関係ないんです」


そうかそうか、とうなずく爺さん。あの、もう買い物すませて帰っていいですか。あんまり遅くなるとやつが来るかもしれないし・・・・

とは思っても口には出せず、結局長々と立ち話をするハメになった。この爺さんよくしゃべるぞおい


「して、お主はなぜB級にはあがらんのだ?十分その素質はあるじゃろに」

「え?いえ、そんなことないです。私なんてまだまだですし、C級くらいでちょうどいいかなって・・・・2位で固定させてもらってます。支持率で言えば無免ライダーさんのほうが上ですし、これくらいで丁度いいんです」

「そうかのう」

「っていうかよくおかめヒーローが私だって、気づきましたね?」

「ふむ。なんとなく似ておると思っただけじゃ。否定せんかったということはそういうことじゃろ」

「そうなんですか」


こいつ侮れんな。

気づいたら時計の針が帰宅時間予定の数字を指していたので、慌ててシルバーファングさんと別れて買い物を済ませようとする。しかしこのじじい中々離れない。くっ・・・・!絶対くるじゃんもおおおお!


「おい、シルヴィ」

「ほらあ!ジェノス君じゃん!来ちゃったじゃん!」

「?」

「おぉ、久しぶりじゃなジェノス君」

「あぁ」


だってもうすでに一時間経ってるんだもん、おかしいって思わないわけがないよね!

二人が少しのやり取りをしている間に近くにあったタマゴコーナーで、一番安いものを手に取る。ついでに隣に白ネギがあったので、そこでもあまりしなびれていないネギと大きめで重たいキャベツを物色した。

まじまじとキャベツを両手に持って比較していれば、隣からカゴを少し引っ張られたので、大人しくカゴを手放す。ううん、右手のキャベツのほうが少し、重たいかなぁ。


「そういや私も買い物したいんだけど、いい?」

「あぁ、構わない」

「ありがとー。あれ、シルバーファングさんは?」

「急用ができたらしい」

「そっか」


とりあえずひきわり納豆か普通の納豆、どれにしよう。