「ななし!!」
「ぁ、あっ・・・・・」
「何やってるんだお前は!?まさか死のうとしてたんじゃないだろうな!」
ドンッ!と勢い良く背中から何かにぶつかる。多少肺に振動が来て呼吸がしづらくはなかったが、地面にぶつかったわけではないことはすぐにわかった。
さわり心地のいい毛並み、最近ではずいぶんと嗅ぎなれたにおいがする
私を背中で受け止めた瞬間、ぐんっとラティオスはあまりの勢いに揺らいだが、それでも私を落とすことはしなかった
「・・・・・帰るぞ」
家までとは言わずとも、森から少しでも離れてしまえば、少し恐怖はなくなっていた。家に帰り着き、ラティオスに降ろしてもらって玄関で座り込む。震えていた手足も、ラティオスの背中に乗っている間になおってしまったみたいだ
脱力したように力を抜いている私を見て、ラティオスは私を引きずりながらリビングへとむかう。何があったんだ、どうしたんだと聞いてくるラティオスに、私はしみじみと「あぁ、ラティオスが居てよかったなぁ」と安心した
安心した代わりに返事をしていなかったせいで、ラティオスには泣きそうな顔をされたが。それに驚いた私は急いで口を開いた
「ど、どうしたの!?泣きそうな顔しないでよ〜」
「誰のせいだ誰の!」
「心配してくれたの?」
「当たり前だろ・・・・!急にお前が落ちてるのが見えたんだ、誰だって焦るし、心配もする!」
もし俺があと少しでも遅かったら、俺が気づかなかったら、どうなっていたことか。
心配してくれるのは嬉しい。しかし私は、こんな顔を見たいわけじゃない、んだけどなぁ
「おまえっ、突然いなくなるし・・・!」
「ごめんね。いやあ、迷子になっちゃって。気づいたらボスゴドラが近くにいてさ、追いかけられてたの」
「え、あいつ山に住んでるんじゃないのか」
「いや私が見たやつは例外みたい」
なんだそれ、と最後の涙を流すラティオス
ううん、泣かないでほしいなぁ。まさかここまで心配してくれるなんて思ってなかったから、ちょっとびっくり。
「崖まで追い詰められて、それで足が滑っちゃったんだ。ほんとうに、ごめんねラティオス」
「ほんっとうに死ぬかと思うくらい!焦ったんだからな!」
「わかってるよー」
「わかってない!!」
ラティオスの涙を拭って抱きしめれば、ラティオスはまた泣いた。
(君がいなくなるとね、僕はさ、)