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本当に必死だった。とにかく逃げなければと思っていたのだ。捕まったら何されるかわかったもんじゃないのに、そう易々と諦めることなど出来ないまま逃げていた

体中は麻痺して思うように動かない。毒も食らっている。逃げ場もない状態だ

数人の男たちが走り追いかけてくる中、森の奥深くで一人の少女を見つけた。


それが今の俺のマスターである、ななしだったんだ。







その時は逃げ場がなかったのは確かだったのだが、初対面からみてもななしには俺に対して敵意などなかったし、むしろ俺が追われているのだということにすぐさま気がついてくれた。これはチャンスだといわんばかりに助けを求めようとするが、しかし彼女からはポケモンの気配がまったくと言っていいほどしない

つまり手持ちがいない状態だった

そんな女にすがり付くのもどうかと思ったけれど、俺が自分で何かを判断するよりも先にななしは戸惑いながらボールを投げてきたのである。びっくした。マジであの時は「えっ?」といった感じだった。だってななしはあの時俺を捕まえようとしていたのだ。後ろから追いかけてくる男たちと、まったく同じ行動を、俺にしたのだから。驚くのも当然だ

すっかり暴れることを忘れて捕まってしまった俺は、ボールから出されることもないまま唖然とする。まさかこんな女まで俺を捕まえたがっていたのか?確かに俺は伝説だが、無害そうなこんなやつにまで・・・・

ボールの中から外の様子を見ていると、景色は結構早く流れていく。男たちも見える。最初こそ絶望したものの、しばらくすれば気づくことがあった


「ティラミスだっけ・・・・・?こんな場所で何やってるんだよおまえ!」


ちっげぇよラティオスだよ。それ人間の食い物だろ。お前こそなに言ってるんだよ

俺に対して怒りつけたななしは、必死そうな顔をしていたのを今でも覚えている。とにかく息はきれていたし冷や汗もかいていた。けれどもそれは、結局、俺をあいつらから守るためなんだと少しずつ理解した

本当に必死に走っていれば男たちから逃れることができ、ななしはすぐさま誰もいないことを確認すると俺をボールから出す。そして恨めしそうにこちらを見た。


「なんだ」

「なんだじゃないよ!?あんたがこっちに逃げてくるもんだから本当に、びっくりしたじゃないか!おかげで逃げる羽目になったし・・・!!」

「別に俺は助けてとは頼んでないはずなんだが」

「そんなボロボロな体して、よく言うよ・・・・・・」


はぁー!疲れた!と木を背凭れにして座り込んだななしの頭上を浮遊する。確かに体はボロボロだが、何も知らないポケモンである(しかも名前をガッツリ間違えるほど知らないポケモンである)俺を助けるまでしなくともよかったんじゃないか。そう尋ねたら、ななしは軽い調子で口を開く


「助けてって言ってたよ。無意識?」

「は?」

「まーあんだけ追いかけられてちゃ怖いもんだよね。私にはそんな気持ちわからないけどね!あ、捕まえたりしてごめんよなんだっけ、ティミス」

「あんまりだ!」

「え、名前なんだっけ?」

「ラティオス!ラティオスだ!覚えろ!」

「えーあっははは、いや覚えなくても別に無縁のポケモンだと思ってたし・・・・はぁ、でもそうか。あんた伝説か。そりゃ狙われるわな」


妙に感心したように言うもんだから、こいつ本当に俺の事知らなかったのかと逆に驚いた。