「ラティオス・・・・・」
悲しそうな声色が耳に浸透する。ななしのほうへと視線を向ければ、静かに頭を抱き寄せられた
「じゃあ、帰らなくて良いから、一度だけ孤島に戻ろう。気分も変わるかも」
仲間もいるしね
そう付け加えたななしは、俺の手を引いて外へと出た。きっと彼女は何もその先を考えてはいないのだろう。ただ単に俺に帰る気になってほしいだけか、仲間の元へ戻らなくていいのかを心配しているのか、どちらにせよいらない考えなのに。その先もしらないで。
大人しく着いていく俺は、やがてユウキのもとへいくとモンスターボールの中へとしまわれた。南の孤島まで連れて行ってくれと頼み込んでいるのが聞こえる
ユウキはたやすく了承していたのを見て、口角があがった。
「手放すんだな?」
「いや、まだわからないんだけど・・・・一応ね、行くだけ行ってみようと思って」
「そう?まぁいいや。行くぜ」
フライゴンに乗って向かうことになったみたいだ。見るからに強そうなフライゴンが出てきたかと思うと、ユウキとななしを乗せて猛スピードで飛び始める。ななしは暗い面持ちだった
飛んでいる間はユウキとななしが他愛のない話をしていて退屈することはなかったが、会話が途切れるたびにやはり寂しそうな、暗い顔をななしはする
「時間はかかりそうか?」
「そうだね・・・ちょっとかかるかも」
「じゃあラティオスのこと、どうするか決まったら、通信で呼んで。迎えに行く」
「ありがとう」
ユウキは孤島にななしを降ろすと来た道を戻っていった。ななしは小さく手を振って、それから見送り終わると俺をボールから出す。酷く泣きそうな顔をしていて、その顔を見た途端胸の中がざわざわとしはじめた
「ラティオス」
俺が彼女を追い込んだ日から、きっと俺は恐怖の対象でしかないんだ。そんなのわかりきっている。首を絞めて殺されかけたんだ、嫌いにもなるし怖くもなるだろう
しかしそれがなんだと思う
仮にななしが俺を嫌っていたとしても、俺はななしが大好きだ。ななしは俺を怖がっているだろう。そんなの関係ない、怯える彼女だって俺は好き。
擬人化してななしの両頬を手で包み込むようにすると、ななしはこの前のように瞳を小さく揺らした
「私、ラティオスとはなれたいの」
「嫌だ」
「ラティオスに執着されるほどいい人じゃないんだよ」
「俺はななしが悪の組織に居ようとポケモンを殺して残虐行為を繰り返していようと、きっと好きになってたんだ。いい人間か悪い人間かで、変わるものじゃない」
「でも、ラティオス・・・・・私は」
「なんでそうやって突き放そうとするんだ?」
するりと俺の手のひらがななしの首を滑るように行き来する。それに彼女は肩を揺らした。