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「ただいまー!ラティオスー」


夕方。人間の子供たちが自分達の家に帰り着く時間帯に、ななしの声が玄関から聞こえた。帰ってきたのだ。

待ち遠しかった。それなのにななしの声を聞いた途端、ぞわぞわと全身の毛が逆立つのを感じた


「ラティオス?」


今日の話はどういうことだと問い詰めてやりたい衝動を押し殺して、その場をあとにしようとする。が、なんの反応もしない俺をななしが放っておくわけもなく、すぐに首をかしげながら近づいてきた。

やめろ、


「どうしたの、具合悪い?」

「・・・・・・べつに」

「嘘でしょ!何かあったとか?ねぇ、ラティオ・・・・」


「うるさいッ!!」


イライラとしてそう叫んでしまった。そしたらななしは驚いたように目を見開いて、それから悲しそうな顔をする。

やめろ、俺はそんな顔をさせたかったわけじゃない!

もやもや、イライラ、ムカムカ。もはや怒りを通り越して涙さえ出てきそうだ


「どうせ知ってたんだ!!こうやって別れる日が来ることぐらい!ななしが俺のことをそんなに大切には思っちゃいないってことも!」

「ラティオス?まって、なんの話!?」

「今日ユウキとやらと話してただろ!?」

「は・・・・・・あ、れ、あれを聞いてたの・・・・?」

「っ俺・・・・!」


好きなのに。こんなにもななしが。離れたくないのに


「・・・・ラティオス、あんたにこの街は住みづらいよ」

「そんなの我慢すればいい!」

「それに私に一生縛られ続けることになるし・・・・それは私が怖くて出来ないの」

「なんで!俺はそれでも構わないんだよ・・・・!」


ねぇ、ねぇねぇねぇ

手放したくなくなるぐらい好きになってくれればよかったのに


「うぐっ!?」

「手放すなんて、そんなこと言うなよ。俺はお前とずっと離れたくない。だから離れないし、逃がさない」


サイコキネシスで首を重点的に締め上げる。涙目になっているななしは酸素を求めて口を開き、頷いた。何度も何度も首がとれるんじゃないかってくらい

だから解放したら、すぐさま媚びるように俺を抱きしめてくる


「げほっ、う゛っ・・・・ごほっ」

「ごめん、ごめんななし」

「だ、だい、じょうぶだよ、ラティオス・・・・」


うそつき。怖いくせに。

俺を見つめてくる真っ黒な瞳が、いつにもなく不安げに揺れていた