01
全然気付かなかったのだ。彼が目の前に現れるまでは。
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私の家には忍がいる。え?なにしのび?って思うかもしれないけれどもマジの忍者でしかも普通の人間じゃない。たぶん昔忍者が実在してたとしても、魔法までは使えなかっただろう。私はそんなこと生まれてこのかた一度もそんな話を聞いたことがない。忍者が、魔法を、つかえたなんて!
しかしうちにいる忍者は、どこからか突如として大きな手裏剣を取り出すし、黒い羽根が少し散ったかと思うと消えている。その黒い羽根もどっから来てるのかほんとにちょっと訳がわからない。
つまりわからないことだらけ。
「風魔さん、ちょっと買い物に付き合ってくれないかしら?お米買うから荷物が重たいのよねぇ」
「・・・・・・・・・・・・」
しかも家に馴染んでる。
もう一度言おう。我が家に意味不明なほど馴染んでいる(真顔)
確か風魔さんが家にいるって気付いたのが二ヶ月ほど前だった。母はその少し前には気づいて、いろいろとあって家に風魔さんを置いてるみたいなんだけど、普通そこは追い出すべきだったんだと思うんだよね私。貴方の娘をやっててこんなに不安を抱いたことはないよ、母上・・・・
しかし家の主は母と父であり、私にモノ申す権利はそこらへんはないので同居開始。たった数カ月といえど、やはり毎日一緒にいるとこうも馴染むものなのだろうか?いや、彼めっちゃ良い人だから家の手伝いするし頼めば大体のことはやってくれるんだけど、いや、しかしなあ
しかも聞けば戦国時代から来たとかなんとか。母親がまさかそんな話を信じるとは思わなかったし、何故父も不信感を抱かなかったのか謎だ。一緒に暮らしてると、確かに今の人ではないのかな?と妙に納得するところもあるけど。文字も達筆すぎてミミズにしか見えない。
これさ、いっそ風魔さんが喋ってくれたら時代の違いとか一目了然だと思うんだけど。たぶん言葉も今と昔とじゃ全然違うでしょ。あの人喋らないけど・・・・・それが困りものだ。
でもまあ意思疎通はなんとか出来てるし、最悪紙に言いたいこと書いてもらってるから、生活に支障はないんだけどね。ミミズ文字マジ勘弁してほしい。
「買い物私も行きたかった〜」
「あんたバイトあるんでしょ?遅くなるじゃない。風魔さん連れてったほうが重たいものも持てるし!ね!風魔さん!」
「はいはい戦力外通知まじありがとうございますぅ。でもあんまり頼りすぎたら、風魔さんが疲れるよ」
「そうね。あ、気が乗らないのなら大丈夫だからね?風魔さん。この子が仕事から帰ってきて、それからお買いもの行けばいいのだし」
母親の言うとおりだ。お米くらい五キロでも十キロでも私が持てる重さだし、無理して同行する必要はない。
二人して無理するなよと言葉をかけると、風魔さんが無言で買い物バッグを手に持つ。OKサインだった。
「やっぱり頼りになるわあ!旦那よりいいわほんとに」
母親がそんなことを真顔で言うから、少々父親も気の毒だなと思った。お母さん、真顔で言わないでほしいなそう言うこと・・・・・
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