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勇者の 殴る 攻撃!




なまえといるとき、いつも、というかほぼ毎日視線を感じ始めた

なまえは全くといっていいほど気がついていないようだが、狼になっていた時期もあったせいか気配やそういったものに前以上に敏感になっている俺は、このじっとりとした視線が確かなものだという確信がどこかにある。まぁ勘だけど。

でも視線を感じるほうへと視線をむければ、どうやらそこには人がいるようで必ずといっていいほど物影に隠れている。俺はわかった。これたぶんストーカーだと。

ここでなまえに言ってもよかったのだが、それではなまえは不安がるか冗談だといって聞き流すかのどちらかなので、前者の反応をなまえが見せてしまえばあまりにも可哀想になって自分の手が男のもので赤く染まることは目に見えている

・・・・・・・・・・どうしよう。

リンクは隣でにこにこと笑っているなまえを見て、しばらく悩んだ後になまえをストーカーする決意をした。もちろん目的はなまえではなく、なまえを狙っているだろう人間である

正直なまえに変な虫がついたというだけでも不愉快極まりないのだが、ここはぐっと我慢しよう。なまえには俺がいるんだぞと思い知らせてやればいいのだ。いつもなまえの隣に俺がいることを知っていながらストーカーをしているのだから、それだけ度胸もあるということだろう

勇者なめんなよ

さっそくお昼に用事があるといって別れたなまえを、ある程度の距離まで見送る。やっぱりなまえを狙っているのか、なまえと離れてしまえば視線はあっという間に感じなくなってしまった

ストーカーの事実を再確認してしまってイラッときたのは言うまでもない。気配を手繰り寄せてなまえが歩いていった方向へと足を進め始めた

こうして歩いていれば、ストーカーがよく見える。

角から顔を覗かせてなまえを舐めまわす様に眺めている男を、これまた監視するリンク。時折リンクが睨みつけるように男を見据えれば、男は何か寒気がしたのかくるりとこちらに振り向いた

男となまえを視界にいれて歩いていれば、あっという間に裏路地のほうへと入っていく。そういえばここはなまえの家への近道だったか。城下町は迷路のごとく入り組んでいるから夜なんかは危険だ。特にこういう裏路地とかな。

なまえがふと、立ち止まる。

どうやらどっちに曲がるのかで迷っているみたいだ。おいそっちは右だぞ。左に曲がったら家とは真逆に行ってしまうから!

言いたいけどいえない。くそう、これもそれも全部あのストーカーのせいだ!

立ち止まっているなまえにチャンスとばかりに物陰から出てくるストーカーは、気安く汚ねぇ手でなまえの肩に触れて、気安くなまえに声をかけた。血管が切れるかと思った。


「こんにちわ・・・なまえさん」

「?・・・・・あ、こんにちわ」


一瞬の違和感に首をかしげたなまえだったが、なまえはそれから気にせず挨拶をし返す。リンクはまずどうして知らない人間が自分の名前を知っているのかを疑えよと思ったけれど、鈍いなまえのことだ。言ったってわからないだろう

徐々に二人との距離をつめていくリンクになど気づかず、ストーカーはベタベタとなまえに触れる。なまえは元々スキンシップが苦手だからか、思いっきり顔を顰めた


「あの、何か、用ですか?」

「あぁ、道を教えてほしいんだ」

「道?えっ、と・・・・・どちらに?」

「噴水がある場所まで頼むよ」


男は怪しげなハンカチを取り出す。リンクにはわかる。あれでなまえの口と鼻を塞いで薬を嗅がせて気絶させるつもりなのだと。悪質な人攫いにはよくあるパターンだ

しかしなまえはそんなこと気にも留めない

笑顔で人が困っているのなら、と自分も家の方向がわからないくせに歩き出そうとする。なまえが背を向けた途端、ストーカーは顔を気持ち悪く歪ませてにやりと笑った

見てるこっちまで鳥肌が立ちそうなほど気持ち悪い男がなまえに向かって手を伸ばした、まさにそのとき


「もらったぁ!!」

「うがっ!?」

「・・・・・!リン、」


リンクは勢い良くスライディングして男を蟹挟みすると、そのまま地面に倒して後頭部にハイリアの盾を殴りつけた。ハイリアの盾は鉄製である


「ク・・・・」


白目をむきながら気絶してしまった男の人とリンクを見て、なまえは固まるほかなかった。





(本当は殺したいぐらいの勢いだったけど、我慢我慢。まぁあっても記憶喪失ぐらいだろうから大丈夫だろ)