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いやいやいや改善のしようがないとかマジで勘弁してよって感じ。

メイナはそう思いながらも城の廊下を歩いていた。ハンカチとお菓子の入った紙袋を持って。その姿を影から見ている人物が一人、手馴れたようにメイナを追いかけていた

綺麗な金髪に青い瞳、顔もスタイルも申し分ない天が唯一二物を与えた男、勇者であるリンク。色んな女性を虜にして色んな人間をひきよせる不思議な人物であり、基本的には何をやらせても何でも出来るタイプの人間だった

そんなリンクはただの凡人であるメイナを、影から見つめていた

面会拒否が言い渡されたあの日からリンクは全てわかっていたのだ。理由も、原因も。だからこそメイナには会いにいかなかった。会うことは出来ない代わりに、リンクはメイナの後姿をいつもながめていたのだ


必要以上に近寄らなければいい


リンクにはその加減が理解できている。勘は働くリンクのことだったから、それくらいは当然だった。ただどうしても彼女を見るたびにうずうずしてたまらない気持ちになってしまう

心底触れたいと思った

前まではそれが出来ていた。抱きつけば軽く殴られるしキスをすれば顔を顰めて服の袖でその場所を拭われていたが、それでもリンクは満たされていたといっても過言ではない。それ以上の関係を求めてはいたが欲張ることはなかった。今はこれでいいと思っていたから

でも今は違うのだ。今は触れることさえ出来ないのだ。目の前にメイナはいるのに、見えるのに、声は聞こえるのに、駄目なのだ

それがもどかしくて仕方がなくて、リンクは唇を噛んだ。どうして我慢しなきゃいけないのと子供のような気持ちにさえなったほどだった。メイナが離れていくのがどうにも気に食わなくて、怖くて、寂しかった

きっと安心していた

メイナは男にも女にも無関心で、だからこそ女友達も男友達もいるような人だ。人はあまり選ばないような女であって、恋をしたいといってもそれは男が欲しいわけではなく、恋をしているときの気分を味わいたいと言っていることはリンクにはわかっていた。メイナには恋愛云々の出来事はまだないだろうと思っていたから、リンクはのんびりとしてしまっていたのである

早くメイナの隣にいれば。

もっと早く背伸びをしてでもメイナの目に映る男になっていれば

こんな結果は迎えなかったのだろうか?

でもリンクにはどっちにしろ同じようにメイナに拒絶されるような気がしてならなかった

壁から覗き込んでメイナを見れば、メイナは兵士だろう男相手に何か話しをしている。なんだろうと思って聞こうとするものの、離れているこの距離では声がぼんやり耳に入るだけで、会話の内容まではわからなかった

メイナが頭を下げながら紙袋を男に渡す

男は笑ってメイナに何か言うと、メイナは顔を真っ赤にして慌てたような様子を見せた。そのまま男はメイナの頭を撫でる。

メイナは嫌がらなかった


「・・・・・・・・・・・・・・・」


俺は、嫌がるのに。あの男はいいのか


「メイナ」


無性に腹が立って壁を殴れば、殴ったその場所にヒビが入りぱらぱらと壁の破片が落ちていく。一気に頭に血が上るのがよくわかった。

俺は触れないのに。俺は近づけないのに。あいつはいいのに俺は駄目。あぁイライラするあの男ぶん殴ってやろうか汚い手で気安くメイナにベタベタしやがって

リンクの頭を埋め尽くすのはもはや嫉妬ばかりのものであった




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