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06



リンクの家に堂々と入り込むヴィルを見た女は、あまりいい気がしていなかった

すっかりリンクと二人、この家で同居してその感覚に慣れていたというのにとんだお邪魔虫が来たもんだと女は思うのだ。別に愛し合うような間柄でもなかったけれど、それでも女からしてみればリンクというのは命を助けてくれた、想いをよせる男なのである。当然二人きりの家に他の女などいれてほしくなかった

ヴィルはプロクシィと楽しそうに話をしたりじゃれあったりしているようで、楽しそうな声がリンクの部屋から聞こえてくる。それに無性にイライラした。さっさと帰れとも思った。だって、あんな女はリンクに相応しくない

何か思うでもなくそう思うのは、嫉妬だろう。ぐるぐるぐるぐる嫌な気持ちが胸をうずまいて、ぐらぐら苛立ちやら嫌悪感で頭が揺れる。すっかりリンクの大切な人の一人になれたと思っていた。けれども大切な人間にも順位というものがあって、私はきっとあの女よりも下なのだろう

癪だ。それにもっとむかついた。一緒に暮らしているのは自分だというのに。

なんだか急に感情が昂ぶったからか気分が悪くなって、机に突っ伏す。ため息なんて出る暇もないほど気持ち悪い。あの女がこの家にいるというだけでも嫌気がさした

早く帰れと一度呟くと、丁度リンクが帰宅したようだ。玄関の扉が開く音がする


「あ、リン・・・・・」

「リンク!遅いわよ!」

「そうよそうよー!遅かったじゃないリンク!」

「はは、ごめんごめん。ただいま」

「おかえりー」

「おかえりなさい」


唖然とした。

いや、別に今更、とも思うけれど

三人の仲の良さを改めて見せ付けられた気がした

だって、リンクは、私よりも先にあの女にただいまを言った。私よりも先にあの女のもとへと向かった。私より、違う、私なんかにはしてくれないのに、あの女にはただいまの抱擁までした

私が入る隙など少しもないのだと、言われていたのだ

それを察してその光景を目にやきつけた途端、吐き気にみまわれて思考も一気に停止した。とにかく胸が苦しかった


「(ずるい、)」


ずるいずるいずるい!

まるで子供のように泣きじゃくってそう叫びたかったが、そんなこと今の女には出来なかった。ただひたすらにずるいと思った。ずるくて、悔しくて、ふとピカピカに磨いていた机を見たら、嫉妬に歪んだ顔をした醜い自分がいた。なんて顔してるの私

机に突っ伏したままでいると、リンクがこちらに来るのが分かった。心臓がドキリと一瞬だけ大きく跳ねたけれども、私なんかに用はないのか、ただいまと言おうとしたリンクは私がすっかり寝ているとでも思ったのだろう。そのまま何をするでもなく私の目の前を通り過ぎていった

きっとあの女だったら。あの女が私と同じ状況だったら、寝ているか確認してからタオルケットでもかけてあげるのだろう。リンクは優しい男なので、大切な人間にだったら余計にそういったことをするだろうとおもった

人知れず、涙が出る

やっぱりリンクは私のことなんか眼中にもないのか、そのまま私を放ってあの女と出かけていった