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02



突然だがリンクはヴィルが好きだ。それはもう恋する乙女の如く頭の中はヴィルのことばかりで埋め尽くされ、寝ても覚めてもヴィルが瞼の裏に浮かんでは消えるような生活を今、している

だから今回の遠征は心配でもあり、寂しくもあるものだった

ヴィルはラナに認められるほどの素質をもった魔法使いで、元々魔力というものを持った人間がそういないこの世界では珍しい人間に分類された。ヴィルに限らずハイラルには兵士に比べればごく僅かな人数ではあったが、魔法使いはいたので力をもったいぶって使わないよりは有効活用しようと、ヴィルが言い出したのである。王女に戦力になることを誓い、魔法が使える人間を少しでもいいから集めて、魔法部隊を作り上げた

見習いから正規魔法使いを全部合わせても15人いるかいないかぐらいだ

それでもヴィルたちはあっと言う間に国民にも王女たちにも認められ、今なお大事な戦力や仲間として扱われている


リンクとヴィルが出会ったのは丁度戦があったときだ

配置された場所がたまたま同じで、リンクの部隊にヴィル一人がバックで補助係としてつくような形であった。後方から前方の敵を魔法で蹴散らし、敵が消えて道が開けたところをリンクたちが突っ込む。ラナのように魔女として生きてきたわけではないヴィルにとって一度の魔法も体力の消費が激しかったがそれでも構わなかったのだ。戦えればそれで満足といった風だった

生かせる力をいかして敵が滅ぶのならばそれでいい。味方が少しでも魔法で生き残るのであれば、先陣をきって戦うのは魔法使いではなく兵士なのだから身が滅ぶまで魔法を使うつもりだ

魔法部隊の最終目的はあくまでも「味方を助ける」のみであって、“味方を助ける”ということはすなわち“自分を身代わりにして消滅する兵士の命を蘇らせる”ことで、ヴィルは魔法使いには“自分たちは助かろうと思うな”と教え込んでいるのである

そりゃあ死ぬよりは死なないほうが何倍だっていいのだが。そういう問題でもない。戦力が削れたらそれを元に戻すために回復させる。それが魔法使いであるヴィルたちの姿だ


「(だから余計に・・・・・)」


心配だ。誰かのために死ぬことを嫌うとしても、きっとその時がくれば躊躇はしない。遠征で死んで死亡通知だけ帰ってきたらどうしよう。前に一回魔法使いの人間がそうだったらしいから、ありえないわけではなかった

なんでも魔物に襲われた村にいた兵士たちを全員回復させてたら、ぽっくり逝ってしまったんだとか

それくらい魔法を使うには、体力も気力も必要なのである

すっかり自分の手料理以外を食べることに慣れてしまったリンクはスープを掬いながら、ぼんやりとヴィルのことを思い出した。手紙書こうか。返事をしてくれるとは限らないが。


「どうしたんですか?リンク」

「いや、別に何もない」

「本当に、大丈夫ですか・・・・?先ほどからぼーっとしていらしたので」


そんなに分かりやすかったか。リンクは女の視線から逃れるようにスープを一口飲み込んだ

彼女のことはどう説明するべきか。相談しても大丈夫なもんだろうか

リンクがまたもや悶々としていると、プロクシィがふわふわと飛んで頭にとどまる


「もう、心配しすぎヨ。ヴィルだってそんなやわじゃないんだから!」

「でも魔法って怖いんだ」

「だからって心配ばっかりしてたら、リンクの身がもたないの。もう今日は早く寝ましょう?」


スープを飲みながらまた何か言おうとしたら、プロクシィが鼻の先に軽くぶつかってくる。もう何も言うなといっているのだろう

リンクはまだ何かいいたげな視線をプロクシィにむけたが、結局は諦めて食事を終えた。女に「美味しかった」と伝えて感謝の言葉を述べる


「美味しかったですか?よかった」


それだけいって微笑む女のなんと美しいことか。それでもリンクの頭の中はやっぱりこれがヴィルだったら、と複雑な気持ちになるだけだった