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01



リンクは困った人は放っておけない人間だった。

だから傷ついている人には手を差し伸べるし、悩んでいる人には解決できずとも気持ちの捌け口にはなってやれるような男であった。なので寄り付く人間は様々なものであったが、この前助けた女が今まで、たぶん生きてきた中で一番厄介なやつだったのだ


女の人と出会ったのは丁度一ヶ月前。


いつものように魔物と戦っていると戦場にぽつりと、佇む人がいた。その人は忙しなくあたりをきょろきょろと見渡すと、膝から崩れ落ちるように座り込んでしまったのだ。きっと魔物に怯えているのだろう

リンクはそれを見て放っておく理由などまずなかったし、このまま見捨てることは出来なかったので助けた。魔物を片っ端から倒してその女をひとまず本拠地にいる兵士に引き渡したのだが、それがことのきっかけとなり、リンクはある事実を理由に、その女と同居生活を強いられることとなる


「実は私――、」


何故女性がたった一人であんなところにいたのか、

どうして女性がここに“存在”しているのか、全然まったくわからないことだからけだった

でも家がないというのだからどこか住める場所においてやらないと可哀想だろう。ましてや男ではなく女だ。それだけでも野宿をさせるさせないの意見は違ってくる

けれども住居なんてそうそう上手いこと見つけられるものでもなく、やむを得ずリンクの家に女をおくことにしたのだ。女はよく働いた。食事に洗濯に掃除、家でやる仕事はほぼ受け持ってくれて、おまけに買い物まで出来るようになって、みるみるうちにリンクとの生活に馴染んでいった

最初は必要最低限のものしかなかった部屋も、綺麗に物がそろえられて整えられている

別にリンクからしてみればそれは嫌ではなかったので、止めもしなかったし口出しすることもなかった。プロクシィはあまり彼女を好んでいるようには見えなかったが、それも時間がいずれ解決するだろうと思った。というか早く彼女の問題を解決せねば。まともに遊ぶ暇さえも奪われている状態だ

厄介なことに文字が読めないとのことだったから本で情報を収集するのも難しい


「あーあ・・・・早くヴィル帰って来ないかな」


憂鬱だ。彼女の問題は彼女が悪いわけでも、周りの人間が悪いわけでもなんでもないので余計に、誰かのせいにして気持ちを軽くすることだって出来ないのだ。人のせいにしたいわけではなかったけれど彼女の問題は少し特殊すぎて、 一人で解決しようとすればそれなりに負担もかかってくる

だからヴィルに相談できたらと思うのに、肝心のヴィルは見習い魔法使い達を連れて遠征に行ったっきり帰って来ない。帰国予定日は来週であるしまだ帰ってきていないのは当たり前なのだが

綺麗に畳まれた服を見て、リンクは少々複雑な気持ちになった

台所のほうでは食器を洗う音がする。カチャカチャ、カチャカチャと音を刻むそれは耳にいい音ではなかったが、彼女が食器を洗ってくれていることには素直に感謝した

これがヴィルだったら。服を畳んでくれるのも食器洗いをしているのもヴィルだったら、リンクは今頃幸せを噛み締めているだろう瞬間なのに、それらをしているのは身元も不明な女だった


「君の帰る場所、早く見つかるといいな」

「そうですね」


女の本心などリンクには見えない


(本当は帰りたくなくなっているのに、女に帰るつもりなんてさらさらないというのに)