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「りーんく!」

「リンクならさっき出て行ったわヨ?どうしたの?」

「プロクシィ・・・・実はね、あの女、帰せるかもしれないの!急いでラナを連れてきてくれないかしら?」

「本当に!?わかった、すぐに見つけてくるわ!」


しゅんっと風を勢いよく切って飛んでいってしまったプロクシィを唖然と見て、それからハッとしたようにリンクの家に上がりこむ。奥では女が洗濯物を畳んでいた

女はこちらに気がついて「こんにちわ」と微笑む。その姿は美女以外の何者でもなかった。正直その美貌が羨ましいとさえ思うが、今はそうじゃない。血を頂戴せねば。確か魔法で使う血はどれも少量あればよかったはずだ

一滴。一滴ぐらいあれば。確実に魔法は完成する

女の前に座り込んで女を睨む勢いで見ると、女は少々怯んだように「な、なんですか」と呟く。それに私は頭を下げた。いきなり土下座するもんだから何事だと慌てている


「血をくれませんか?」

「・・・・・・・・・・・え?」

「血を、少しでいいのです。頂戴したい」


急にこんなこと言われたって理解するのにも時間が必要だろう。だがしかし、必要なものは必要なのだ。リリオが動いてくれるといっている今がチャンスなのである。これを逃してはいつ女を返品できるかわからない

女はぽかん、と間抜けな顔をしたあと、ぎゅっと眉間を狭める


「それは、どういった意味ですか」

「貴方を元の世界へ帰す。貴方もそれをお望みでしょう?魔法が丁度、完成しそうなんです」


「は?」

「は?」


え?は?

意味がわかんないといった風の女の態度に、私は思わず首をかしげた。女の態度は随分とまぁ生意気なもので、イラッとしたのでもう一度「はあ?」と憎たらしく聞き返してやる。すると女は顔を顰めた

そしてここで、ヴィルは、はじめて、女の本音を知ることとなる


「帰らないから、私」

「・・・・それはどうして」

「だってここにはリンクがいるじゃない?私の王子様なのよ!私本気でリンクと結ばれる運命だと思ってるから」


正直いうとこのときヴィルは唖然とした。だってこの状況で王子様やら運命やら、そういった言葉が出てくるとは思っていなかった

しかも相手はリンクときた。勝手に運命的に結ばれる発言をした女にむかついて、ヴィルは言い返す。異物をとりのぞくことは必要だ。私はそれをしなければいけない


大好きな、リンクのためにも。この世界のためにも。自分のためにも。


「あんたねぇ・・・・・バッカじゃないの?人の夢を馬鹿にするなんて悪趣味、生憎ともちあわせていないけれど、あんたのそれは愚か者の類よ。リンクはあんたなんか見ていないの。わかるでしょう?あんたはこの世界では誰にも必要とされていない。王子様だかなんだか知らないけどここはあんたの世界じゃないわ。異世界の人間がこの世界で夢見れるだなんて思わないで欲しいわね。そんな贅沢が許されるわけないのに、本当・・・・救いようのない女」


女の顔はみるみるうちに真っ赤になり、怒りに歪んだ