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本命のチョコなんて作ったことがなかった。いや、作ろうとはしていたのだが、やはり渡すときのことを考えると怖いし、今の三人の関係性が大きくずれたり壊れたりするともなれば私はこのままでもいいと思っていた。

第一彼にはゼルダがいるのだし、渡したところで、の話にはなると思うのだけれど。

しかしバレンタインデーに何もしないというのはアレなので、毎年同じように友チョコを作って二人に渡している。小さめの義理チョコはたくさん作ってその他の人達に渡したりもしている。二人だけは特別だ。彼らとは小さいころから仲良くしているし、友達だと胸を張って言えるような存在だから。

リンクのことはとうに諦めているからチョコを渡すときもなんてことはない。恋心とは私にとっては長持ちしないものであった。もちろん未だに気にかかったりはするものの、もう彼を見てときめくことも少なくなったし、スキンシップにドキドキすることもなくなった。まるで恋心を自覚する前のように、友人として接することが可能になってしまっている。いいことなのかなあ。微妙だ。

悶々と考えながらも、シンプルな色紙で包装したチョコを手に外へ出る。今二人はどこにいるのだろうか?デートの途中だったなら申し訳ないから、もう少し日が暮れはじめてからでもいいかもしれない。

渡すタイミングを悩んで二人を探そうか迷っていたところ、キコア先輩が居たので義理チョコをついでに渡しておいた。そうだ!先にバド達を探そうかな?あの三人、地味に毎年楽しみにしてくれてるんだよね〜(まあゼルダ達宛とはチョコの出来に格差があるけれども。)

あの三人組の反応を想像してにやにやしていれば、ふと足音が後ろのほうから聞こえてくる。くるっと振り向いてみれば先ほど探そうとしていたゼルダとリンクがこちらに歩み寄ってきていた。二人の表情をみればなんともだらしないもので、楽しみですと言わんばかりの顔だ。

苦笑しながらも挨拶をし、二人にそれぞれのチョコを渡す。


「これね。今年も頑張ってつくったから、お礼を楽しみにしてるよ」

「任せて!とびっきりのお菓子を作るわ!」

「ホワイトデーは楽しみにしててよ」


うんうん。今年もなかなかいい返事がかえってきた!

チョコを作ったかいがあったというものだ。ここまで嬉しそうにされるとこちらまで嬉しくなってしまう。いつも思う事ではあるが、二人は感情豊かで顔に出してくれるから分かり易くていい。もちろんいい意味で。

三人して幸せオーラを放ちながら、三月が楽しみだなぁと一人心の中で呟いた。しかしながら今年はそれで終わらないようだった。

近くをバドが通り、私がバドに義理チョコを渡してから問題は起こったのだ。


「いつも思うんだけどよぉ、おめぇ、ゼルダとリンクにはちゃんと作ってんだよな?」

「え?まぁうん。二人とも大切な友達だしね。バドも大切じゃないってわけじゃないけど、二人は特別だから」

「それは理解してるつもりだぜ?そんでふと思ったんだけどよ、ななし、本命はつくらねぇのか?」

「え?」

「特別な人間にはちゃんと個別に作ってるみてぇだから、好きなやつのチョコもちゃんと個別にしてると思って・・・・・」

「なんですって」


ドスの効いた声がすぐ隣から聞こえてびびった。


「ななし、好きな人がいるの?どうして言ってくれなかったの!!遅れたら私たちにとって大変なことになるのに!」

「今すぐでも間に合うよ!僕たちにそいつの名前を教えて!!」

「「始末するから」」

「ハモった!?」


なんで?どうして始末するの!?いやそもそも好きな人いないんだけど!

慌てて落ち着くように言うが二人はさらにヒートアップ。肝心の爆弾を投下したであろうバドはすでに姿が見当たらない。あいつ・・・・!


「特別なのは私たちだけでしょう!?どうして!他のやつなんかにチョコを渡すのよ!!」

「いや義理しか渡してないって!」

「なんで隠すの?他の男を匿ってるつもり?」

「だから!好きな人なんていないっつってんだよ!」


確かに好きな男が居たら個別にチョコを作っていたかもしれないけれど、いないのだから作る必要もない。というか二人はどうしてこんな恐ろしい形相で疑ってくるんだ?なんだか浮気を疑われている気分になって少々頭が混乱しはじめる。ツッコミどころがありすぎてヤバイ


「許さない・・・・・ななしのチョコをもらうのは私たちだけでいいのに・・・・!!」

「ななしへのお返し、首輪にしよう。僕が可愛いのを見繕ってくるね!」

「まあ素敵!なら私は鎖ね。とびっきり頑丈なものを探してくるわ!」

「待てやめろ」

「装飾が施してある足枷もいいかもしれないわ。ちょっとリンク、そういうのもついでに探してみて」

「わかった!」

「いや勘弁してください」

「地上へ連れて帰りましょう。ななしだって私たちと一緒のほうが嬉しいに決まってるわ!」

「私の意見が何一つ通らないうえに勝手に話が決められていくんだけど」


ちょっとどころか思考回路やばいよ二人とも。最後にリンクが「逃げられないように足を潰したほうが早いんじゃないかな?」とか言ってたけどそんなのキコエナカッタナー





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